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全然近くて全然遠い!  作者: メイズ
第1章
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フェイク彼氏〈沙入編〉

「さて、と。どういう訳?」


 今、ロメルと俺はテーブルの角を挟んだ隣合わせに座っている。




 俺たちはとりあえずその辺のカラオケ店に入った。

 ロメルが他の人に話を聞かれるのを嫌ったから。



 ロメルはハンカチを手に目を潤ませておずおずしている。


「あの‥‥‥ごめんなさい。迷惑をかけてしまって。のど、乾いてない?何か飲む?」


「‥‥‥‥‥‥‥‥俺が聞いてんのは違うだろ?」


 俺はわざと不機嫌に言ってみた。


「怒っているのね?本当にごめんなさい。あの‥‥‥さっきの雪村くんが私のスマホを後ろから覗き見してたの。今日の沙入(サイリ)くんとの約束のこと。それで‥‥‥‥私、雪村くんにはここの所迷惑しているというか、その‥‥‥それで、私に彼氏がいるってことにしとけば私に寄って来なくなるかもって思って‥‥‥‥つい出任せを言ってしまったの。まさか今日雪村くんに会うなんて思いもしなくて‥‥‥‥‥」


 ロメルはうつ向きかげんで語ってから俺の機嫌をチラリと窺った。


「ふうん。じゃあ、彼氏がいないロメルは雪村避けに俺の名前を利用したってことなんだ?」


 俺は恩を売るために迷惑そうな口振りで言った。


「あ‥‥‥‥‥本当にごめんなさい。沙入(サイリ)くんに迷惑をかけるつもりはなかったの。私、こんな嘘を言ってしまって‥‥‥‥まさかこんなことになるなんて。きっとこんな事わかったら沙入(サイリ)くんの彼女も怒ってしまうよね‥‥‥‥‥‥‥」


 ロメルは見るからに恐縮している。



 ‥‥‥‥いいじゃん。ロメルには彼氏がいないことが判明した。


 彼氏がいようがいまいが構いはしない。だが、攻めるならいない方がやり易いに決まってる。



 この子は‥‥‥‥‥


 約束を守る、OK。純情で素直、OK。思いやりがある、OK。


 性格エレメント、第三段階までオールクリア。

 ルックス、断然オッケー。



 さーて。行くか。



「ふーん、仕方ねーな。じゃあさ、そのまま周りにはそーゆー事にしといていいぜ。困ってんだろ?俺、彼女とかいねーし。」


「えっ?」


 ロメルが驚いて俺を見た。


「本当に?いいの?怒ってない?」


 急に優しげに口調を変えた俺に戸惑っている。


「いいって言ってんじゃん。じゃ、そういうことだから、今から俺のこと呼び捨てにしてみろ。その方がそれっぽいし。ほら、言ってみろよ。」


「えっと‥‥‥‥沙入(サイリ)‥‥‥‥?」


 ロメルは恥ずかしそうに小さな声でボソッと言った。


「ったくよー!ちゃんと言えよ!俺は彼氏だぜ?ロメル。」


 ふふん、このまま既成事実にしてしまえばいい。

 なんかちょろかったな?


「‥‥‥‥ありがとう、沙入(サイリ)。」


 ロメルは深く考えることもなく、俺に感謝しているようだ。

 キラキラした目で俺を崇めている。


 もしかして俺、後光(ごこう)射しちゃってる?


「じゃ、早速来週デートしようぜ。ラインも送るから既読スルーすんなよ?」


「えっ?そこまでリアルにしなくても‥‥‥‥‥沙入(サイリ)くんだって迷惑でしょう?」


「サイリだろ?」


「‥‥‥‥でも‥‥‥‥」


 ちっ、イエスって言えっつーの。俺はここで退きはしないぜ。


「あー、雪村にさっきのは嘘だってばれてもいいんだ?」


「そっ、それは困るの。同じクラスの雪村くんに想われても私には迷惑でしかないの。」


 ロメルはすがるように俺を上目遣いで見た。


「じゃ、決まりだな。」


 って俺がまとめたとこでいきなり乱入者が飛び込んで来た。



「ロメルっ!」


 

 何なんだ?いきなり。この男。こいつめっちゃ顔が怒ってんだけど。


 この狭っちいカラオケルームの扉をいきなり開けた男は目深にニットキャップをかぶっていたが、どこからどう見てもハーフイケメンだ。


「カっ、カイル!」


 ロメルはそいつを見てすごく驚いて、直後一瞬俺と目が合ったがすぐそらして再びそいつを見た。


「ロメル、こいつ誰だよ?」


 まさか彼氏?のわけねーよな。いたら雪村に俺が彼氏だって嘘つく必要もなかった。


「あのっ、ごめんなさい!沙入(サイリ)。これは私の双子の兄なの。」


 マジ?双子って、全然違うじゃん。お前ら。


「ロメルっ!男と二人きりでこんな所に入るなんて!何考えてんだ!帰るぞっ!」


 その、双子の兄とやらが声を荒げ、俺に憎々しげな視線を突き刺してからロメルの腕を掴んだ。


「カイル、どうしてこんな所に‥‥‥‥‥?」


 ロメルは腕を引っ張られ、立ち上がらされた。


「お前、ちゃんと料金払っとけよ!」


 そう言うと怒りのオーラをメラメラ発しながらロメルを連れて出て行った。




 一人取り残された俺。


「これ、そんな怒られる要素あんの?」


 何もそんな怒らなくてもいいだろ?まさか、あのあんちゃん、俺がここでロメルにふとどきな真似でもしちゃったりするとでも思ってたのかよ?


 ロメルってもしかして、お嬢様なのか?


 はぁ~‥‥‥‥‥


 俺はため息をついてから立ち上がった。


 こんなとこに(あん)ちゃんのお迎えとはな。これは想定外。


 流れで予定外に来たここに乗り込んで来るなんて?何でこの部屋にいるってピンポイントでわかったんだよ?


 あいつ‥‥‥‥‥もしかして最初から俺らのことずっと見てたのか?


 キモッ!





 夜11時過ぎにロメルから謝罪のメッセージが送られて来た。


『今日は本当にごめんなさい!来週カラオケ代必ずお返しします。』


『別にいいから。』


『そうはいきません。待ち合わせの場所と時間はおまかせします。』


『了。決めたら言う。』



 ふふん。結局来週は俺とロメルの初デートじゃん?


 あ、でも、まさか‥‥‥‥あの兄ちゃんの監視付きじゃねーだろうな?



 それは笑えねーって。





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