待ち合わせ〈ロメル編〉
約束の駅前公園の噴水の前まで来た。
ちょっと早く着きすぎちゃったな。まだいるわけないよね?
私は辺りを見回した。すると、
「探してんの、俺だろ?」
声がして振り返るとそこには‥‥‥‥‥
水籠くんだわ!こんなに早めに来てくれていたの?
よかった。私も早めに来て。待たせてしまう所だったわ。
私が挨拶すると、
「俺の顔、覚えてたんだ?」
ってニコッと笑った。
水籠くんは随分かっこいいのね。文化祭の時もそうだったけど、まるでロックグループのメンバーみたい。
何気無い仕草もクラスの男子たちとは違っていて、どきっとしてしまう。
私とは違う世界の人みたい。
「はい。だって‥‥‥水籠くん目立ってるから。」
私は言った。
水籠くんはちょっと近づき難い見かけと違って、気さくな人で、自分のことは沙入と呼ぶように言ったので、私も自分のことはロメルと呼んでもらうことにした。
私と沙入くんは公園のベンチに座って話すことになった。
私、ちょっと緊張してる。でもここに来た目的を果たさなければならないの。
それは二葉ちゃんとお兄さんの誤解を解くこと。
マナカさんの弟さんとこの沙入くんはケンカになってしまった二葉ちゃんのことを良く思っていないだろうから、私が本当のすばらしい姿を教えてあげなくては!
私は意を決して沙入くんに二葉ちゃんとお兄さんの良さを伝えた。話し始めたら私、感情が溢れてしまってついぺらぺらと‥‥‥‥‥‥
ふっと気がつけば、沙入くんはあきれた顔で私を見ていた‥‥‥‥‥
どうしよう!私ったら‥‥‥‥‥‥‥おかしな子だと思ったよね?
一方的にしゃべたから怒らせてしまったかも‥‥‥‥‥‥
私はどうしていいのかわからなくなって黙りこんだ。
沙入くんと私の間に沈黙が続く。
私、恐くて沙入くんの方、見られない‥‥‥‥‥
その沈黙を破ったのは偶然通りかかった同じクラスの雪村くん。
犬の散歩中だったらしい。
偶然私を見かけて話しかけてきたの。
雪村くんが私に聞いてきた。
「蛇ノ目さん。この人がそう?」
何?この質問?沙入くんがそうって?
うっ、そういえば雪村くんは私のスマホを覗き見して今日の私と沙入くんの約束のこと知っていたんだっけ!
ついでに、私は沙入くんのこと隣の中学の彼氏だと嘘をついていたんだっけ!
ど、どうしよう!
雪村くんはきっとわざとここに来て私と沙入くんの事を確かめにきたんだ!
雪村くんのこの目付き‥‥‥‥私のこと疑ってる。やばしっ。
「違うの?隣の中学のなんとかってやつなんだろ?」
きゃー!嘘がばれる!彼氏がいるなんて見栄をはったことがばれたらどうなるの?
怒りを向けられる?嘲笑の対象になる?それともまた私に狙いを定めてくる?
どれもこれも嫌っ!
「そっ、そうよ!わ、私たちデート中なのよ。さあ、行きましょう。沙入くん。」
私は思わず言ってしまった!
ど、どうしよう!こんなこと言ってしまって!沙入くんに否定されたらもう私の人生詰んでしまうのに。
私は、窮地に立たされた。
嘘をつき見栄をはったことを本当に後悔した。まさかここに雪村くんが来るなんて思ってもみなかったの!
雪村くんから見て私はキョドっているに違いない。
いっそのことここから走って逃げてしまおうか?
そんなこと、頭にちらりとよぎった時、沙入くんが言った。
「ああ、行こうぜ!ロメル。」
沙入くんはスッと立ち上がりちょっと肘をつき出すと目を一瞬すがめて合図してきた。
これって、彼氏の振りをしてくれるってこと?掴まっていいの?
沙入くんは私の目を見ながらわずかに顎をあげて掴まるように促してきた。
沙入くんって空気読む達人。
私は沙入くんの腕にすがった。
まさしく救いの神様‥‥‥‥
私が助かったのと、沙入くんに申し訳ないのと、ほぼ初対面の男の子にくっついている恥ずかしさで私は目の奥が熱くなって来た。
「じゃあな!雪村くーん!」
沙入くんがせせら笑いながら手を振った。
沙入くんはこの状況を半分面白がり半分は呆れているみたい。
私が沙入くんと歩きながら後ろをちらりとみると雪村くんは犬とともに立ち尽くして私たちを見送っていた。
「あの‥‥ごめんなさい‥‥‥」
私は沙入くんの顔を見ることが出来ず、うつむき加減のままで謝った。
「気にすんな。」
沙入くんは私の耳元に顔を寄せて言った。
沙入くんが、私と同じ中2だなんて。
オトナ過ぎる。
こんなのカッコ良すぎない?




