ロメルのココロ その2
私は昼食を終えた後、もう一つの約束があった。
お隣の中学校の水籠沙入くんと。
お互いの友だち同士がケンカになってしまったので、落ち着かせるため相談することになっていた。
二葉ちゃんの大好きなお兄さんとマナカさんの交際を巡ってマナカさんの弟さんと二葉ちゃんが言い争いになった。
でも、二葉ちゃんは直接弟さんに会わなければ特に問題はないの。目の前にいない相手にわざわざ二葉ちゃんからケンカをふっかけることはないわ。
二葉ちゃんは面倒くさいことなどしないもの。
むしろ二葉ちゃんの標的は二葉ちゃんのお兄さん。
二葉ちゃんの巻き起こす災難にさらされているのはお兄さんなの。
私はそっちの方が心配だわ。
だから本当はもう、水籠くんと会う必要もないのだけれど、もう約束してしまったし、ついでに向こうで二葉ちゃんの悪く思われたであろうイメージを回復させてあげたくて、変更することなく会うことにした。
私、二葉ちゃんとお兄さんの素晴らしさを水籠くんとマナカさんの弟さんに解って欲しい。
二人のことがわかったら、きっとあの人たちも二葉ちゃんとお兄さんを好きになってくれるはず!
私、二葉ちゃんの、あの素敵で優しいお兄さんの一深さんにはこのままハッピーでいて欲しい‥‥‥‥‥‥そのためにはマナカさんがいなければ。
私はその事を思うと、なぜか心がきゅん、としてしまうのだけれど‥‥‥‥‥
文化祭で出会った水籠くん、おしゃれな男の子だったな。
きっと学校でモテていそう。同じ中2って言ってたけど、私のクラスの男の子たちよりも意識高い系な感じだったな。カイルもそうだけど。
ちょっと気さくに声とかかけにくい雰囲気。
同級生より先を行ってる感じ?
待ち合わせ、普段通りの姿で行ったら私、子どもっぽくて嗤われてしまうかしら?
私は洗面台の鏡を見た。
二つに真面目に結んだ髪をほどいてみた。
私の髪は癖毛だし、緩く結んでいたから結んだ跡はほとんどついてはいなかった。
私はスプレーで髪を湿らせてブローして整えた。
サイドを黒いヘアピンでばってんに留めた。
うん、これでちょっとはお姉さんぽくなったかな。
色付きリップを塗ってみよう‥‥‥‥‥うん?あまりかわらないかも。
まあ、でもいいや。こんなもんでいいかな。
そういえば、男の子と二人きりで待ち合わせして会うなんて私、初めてだわ。
今までカイル以外で、男の子と二人きりで出かけたことはない。
カイルとだったら気を使うこともないし、お互いに好き勝手なことも言っちゃったりできるから今回とは訳が違う。
うっ、ちょっと緊張してきた‥‥‥‥‥どきどき。
でも、デートって訳でもないし。うん、大丈夫。
がんばって二葉ちゃんとお兄さんの良さを伝えてこよう!
さて、ちょっと早いけどそろそろ行こうかな。
私は玄関でコートを羽織ってからカイルに声をかけた。
「カイル、私出かけるね。夕方前には帰るから。」
リビングから出てきたカイルは私を見て少し驚いた顔。
私やっぱり変だったかな?急に髪をほどいてみたりして。
「ねぇ、私、おかしいかな?このカッコ。」
「‥‥‥‥‥別に。遅くなるなよ!」
カイルはそう言うとくるりと背を向けてリビングに戻ってしまった。
私が誰と会うか言わなかったから不機嫌になってるんだ。
言えるわけない。
二葉ちゃんとお兄さんの名誉回復のために文化祭で声をかけれれた男子と二人きりで会うなんて知ったら止められるに決まっているもの。
「行ってきます。」
私は大きな声でカイルに言ったけど返事はない。
私は自分で玄関の鍵をかけて家を出た。
外は晴れていてこの時間はだいぶ寒さも緩んできたみたい。
私は駅前公園に向かって歩きながら二葉ちゃんのお兄さんのヒトミさんに数学を教えてもらった時の事を思い返していた。
そしていつの間にかあり得ない想像をしていた。
もし、私がヒトミさんの彼女になったら、二葉ちゃんはどうするかしら?
お兄さんを取られたと思って、その時は今度は私を攻撃してくるのかな?
そうだよね‥‥‥‥もし私がお兄さんを好きになったとしたら二葉ちゃんに嫌われてしまうの。
お兄さんだって同じ部活にあんなにかわいい彼女がいるんだもの。中学生の子どもっぽい女の子なんて‥‥‥相手にするわけない‥‥‥‥
私ったら、変な妄想しちゃってる‥‥‥‥‥ばかみたい‥‥‥だね。
でも‥‥‥‥‥‥
このヒトミさんを想うふわふわした気持ちは‥‥‥‥‥‥これは恋?




