マイペースで二葉
「ねえ、二葉ちゃん。お兄さんは今朝どうしたの?臭いは収まったの?」
次の日の木曜日、朝イチでロメルちゃんが私に聞いてきた。
「消える訳ないよ。大量ニンニクの臭いが一晩で。でさ、朝何杯も牛乳飲んだり、お父さんに勧められて臭いが消えるタブレットみたいなの飲んでたけどどうだろうねー?」
今朝、食卓にてお父さんが一句詠んだ。
何故臭い 夕食みんな 同じもの
お兄ちゃんが返した。
知らねーよ 俺が聞きたい なんでだよ
お母さんも一句。
そういえば 二葉が何か してたかも
私も詠んでみた。
ニンニクに 託す私の フォーチュンを
「やっぱ、二葉のいたずらだなっ!」
バレた。
もう、お兄ちゃんは臭くてお父さんにもお母さんにも避けられてて、私も近くには寄りたくなくってマジ臭の草の大草原!あははっ。
ニンニクパワーやばし!
「もう、二葉ちゃんたら大好きなお兄さんに酷くない?」
ロメルちゃん、なぜかちょっと怒りぎみ?
「いいのいいの!お兄ちゃんが振られるまでがんばるもん!他にも考えてるんだけど、聞いて、ロメルちゃん。」
「‥‥‥何?」
「お兄ちゃんの学校用のリュックの中にお兄ちゃんが引き出しにこっそり秘蔵してるアイドルの水着写真集を入れとくとか、お兄ちゃんのくびの後ろに『二葉らぶ』っ油性てマジックで書いておくとか、どうかな?」
「‥‥‥‥それってもはや、ただのお兄さんへの嫌がらせでは‥‥‥‥?」
ロメルちゃんがすっごく引いている。
「うーん、そうかな‥‥‥‥?」
「二葉ちゃん、優しいお兄さんにそんなことしちゃだめよ。」
常識人ロメルちゃんは眉をしかめた。
「だってさー。あ、いいこと思いついた!今度の土曜日空いてる?」
今、めっちゃいいこと思いついた!
「えっと、その日は午後に用があるの。」
「じゃあ、午前中。約束してたコミック全巻、貸すから取りに来て!ついでに一緒に宿題しようよ。9時とか10時くらいならどう?ねっ!私ん家までの道覚えてるよねっ?」
「う、うん。いいけど‥‥‥‥。」
ごめん。ロメルちゃん。強引に誘っちゃった。
でも、これも人助けだよ?
私、お兄ちゃんにロメルちゃんを紹介したことはない。ロメルちゃんが家に遊びに来た時はお兄ちゃん家にいたことないし、二日前の文化祭の時は一緒だったけど、私から離れてたロメルちゃんのことは、ほとんど見ていなかったと思うんだ。
この激かわいいロメルちゃんなら‥‥‥‥‥‥
家に来たロメルちゃんとお兄ちゃんを二人きりにする→ガチ美少女のロメルちゃんにお兄ちゃんはメロメロに→心変わりしたお兄ちゃんがマナカさんと別れる→ロメルちゃんに夢中になるもののあえなく振られる→お兄ちゃんは二葉だけのお兄ちゃんに戻る。
っていうのはどうかなぁ?
ロメルちゃんに言ったら怒るから黙ってようっと。えへへ。
土曜日楽しみだなー!早くこないかなー。上手く行くといいなー‥‥‥‥‥
1時間目が終わって休み時間、お手洗いに向かっていた私に、ロメルちゃんの双子の男子の方、カイルがいきなり声をかけてきた。
「ちょっと、聞きたいことあんだけど。」
「何?私を今引き留めないで。私がここでおもらししちゃったらどう責任とってくれんのよ!後でねっ。」
この短い休み時間にマジ迷惑な!
私はお手洗いに急いだ。
私がすっきりしてお手洗いから出たところでカイルが待ち構えていた。
「うわー!まだいたの?さすがにトイレの前でコクられても私ひいちゃうわー。」
私は嫌みで言ってみた。
「中村さん。そんなことは俺が死んだ後も起こらないから安心して。」
真面目な顔で答えた。
私だってお断りだっつーの!
「あのさ、ロメルに隣の中学の知り合いがいるみたいだけど‥‥‥知ってる?」
「そんなこと、ロメルちゃんに直接聞けばいいじゃん。何で私に聞くのさ?」
「‥‥‥‥知らねーのか?お前らいつもつるんでんだろ?」
カイルの顔、何故かおこ。
「隣の中学のことなんて知らないよ!隣って言っても東西南北どこの中学のことかわかんないじゃん。へんっ!」
私はカイルが好きじゃないから冷たくした。
だってさ、いっつも突っかかってくるし、私にはいつもケンカ調で話してくるし。
わかってるんだ、私。
カイルは私がロメルちゃんと仲良しなのが気にくわないんだ。
ロメルちゃんは大抵カイルよりも私を優先にするから焼きもちをやいてるんだって。
そのまま私は自分の教室に急いで戻った。
私はカイルがロメルちゃんのことを聞いてきたってロメルちゃんに話した。
ロメルちゃんはただ、『ふーん、そう。』って言っただけでどうでもいい風だった。
「で、隣の中学にお友だちがいるの?」
私がきいてみると、
「あ、うん。友だちって訳でもないんだけど‥‥‥‥それよりも、えっと、じんさんの新曲聞いた?」
「うん、もち!」
なんかごまかされた?
2時目の数学が終わった後、いきなり雪村くんにベランダに連れ出された。
「何なのさ?こんな短い休み時間にこんなとこでコクられても感じ出ないしー。雰囲気って大事だよー?」
一応突っ込みどころを作ってあげた。
「そんなことは地球最後の日になってもありえないから安心して。」
そんな無表情で冷たく言われてもねー。マジ、優等生でノリが悪くてつまんないやつ!
私だってあんたなんてありえないからー。あんたなんか家のお兄ちゃんが龍だったらイモリじゃん。
「ちょっと聞くけど、誰にも言うなよ。あん‥‥‥蛇ノ目に‥‥‥‥‥彼氏がいるってほんとか?」
「‥‥‥‥それ、どっから来た噂なの?」
「本人。」
えーーー!私そんなこと全然知らないよ!
でも、親友として知らなかったなんて言えやしないよ!こんなやつにさ。
私とロメルちゃんは一番の仲良しなんだからっ!
「本人がそう言ったんならそうに決まってんじゃん。ふふん。」
私は知ったかぶりでそういい捨てるとさっさと教室内に戻った。
私がいない隙を狙いロメルちゃんに小白くんが話かけている。でもロメルちゃんは上の空でこっちを見ていた。
‥‥‥‥何かがあったんだ。だからカイルと雪村が私に探りを入れて来たんだ。
さっきもロメルちゃん何かごまかしてたし‥‥‥‥‥‥ほんとに違う中学校に彼氏が出来たの?




