第七話 もう片方の旅
アクエルドら三人が亜人国の王城にて選定の儀の宣告をした同日。
人間国王都王宮内にて同じく選定の儀の宣言をしていた。
王の執務室。
部屋の壁面にはいくつかの絵画が飾られており、資料を保管する棚などの様々な品のある家具が置かれている。その奥に豪華な椅子と大きめの机が設置されていた。
そんな執務室の中に四人の人間がいる様だ。
長く綺麗に整えられた顎鬚を携えるプラチナブロンドの老人――人間国王ウェスト・ユグドライスが豪華な椅子に座り、机を挟んで向かいに並んでいる三人の王子王女らを見据えている。
ウェスト王が口を開く。
「これより、我が国の王位継承者を決める選定の儀を執り行う。ライト・ユクドライス、ラン・ユクドライス、レンジ・ユクドライス!」
「はいっ!」
「はいっ!」
「は、はい!」
重く掠れたウェスト王の言葉に、三人の王子王女らが返事をする。
横並びに右から第一王子であるライト。整った美形の青年で父と同じくプラチナブロンドの髪を携えている。大層女性からモテそうな雰囲気を醸し出している。
ライトの一つ左にいる第一王女であるラン。吊り上がった瞳と凛とした佇まいに、プラチナブロンドの長髪を携えている。かっこいい女性というのが一番しっくりきそうだ。
そして、ランの左側にいる第二王子であるレンジ。プラチナブロンドの前髪で目が半分ほど隠れていて、背中も多少丸くなっており、どこか暗い印象を与える青年だ。他の二人と相まって、より一層暗い印象を与えている。
ウェスト王が立ち上がった。
「まずはこれを渡しておこう」
そう言って机の引き出しから三つの丸薬を取り出した。赤、青、黄の三色の丸薬だ。
「これは変化の丸薬だ。赤が有鱗族、青が有尾族、黄が長耳族だ。もうすでに決めていると思うが、間違えず取るのだ」
ウェスト王の言葉に三人が一歩前に出る。
「…いいのかレンジ。今からでも代わるが」
「…大丈夫…で、す。いつまでも…ライト兄さんや…、ラン姉さんに頼って……いられないし…」
ライトの問いにレンジは目を泳がせながら答えた。
そんなレンジの頭をポンとランが叩く。
「しっかりやんなよ」
「う、うん…」
少し厳しめな口調で言ったランだがその手は優しい。心配しているのだ。
それぞれライトが青の丸薬、ランが黄の丸薬、レンジが赤の丸薬を手に取り、飲み込んだ。
徐々に三人が変化していく。
ライトは茶髪に茶色い毛の猫耳を生やし、縞々の尻尾が生えてきた。
ランも茶髪になり、毛の生えた長い耳が生えてきた。根元と先端部が細く、真ん中の部分が少しふっくらしている耳だ。
レンジは黒髪になり顔つきが少し男らしくなったぐらいで大きな変化が無い。かと思うと、レンジは身じろぎし袖をまくった。するとそこには、先端が尖がっている鱗が出来ていた。それも両腕だ。
「どうだ。亜人となった気分は」
「尻尾が手足の様に動く。それに耳の位置も変わって何だか変な感覚ですね…」
「アタイもそうだね……。それによく聞こえるよ。城内で誰かが歩く音かねえ」
「ぼ、僕は…、腕が覆われてる安心間というか……、何なんだろ…? 取り敢えず…、服は、変えないと…、鱗が、引っかかる……」
ライト、ラン、レンジのそれぞれが身体を動かし、各種族の特徴を体験していた。
亜人は例外を除けば、大きく分けて三つの種族に分けられる。
一つ目に有鱗族。
体に鱗を持つ亜人で、鱗がある部位や範囲は人それぞれ違いがあり、鱗の種類も違う。今回のレンジは両腕に鱗が出て、鱗の種類は一枚一枚の先端が尖がっているものだ。他にも丸み帯びていたり、触り心地がツルツルやザラザラしていたりと、鱗の種類は多岐にわたる。
勿論、鱗の部分は外観通りの性能を有している。
二つ目に有尾族。
尻尾の生えた亜人で、尻尾の性質や形、生えている本数など。これも様々な種類がある。一番特筆すべき点が自在に操れるというもので、五本目の手足と言われている。
そして、尻尾の特徴に付随した耳が生えている。
三つ目に長耳族。
頭部に長い耳が生えている亜人で、耳の性質や形の違いはあるが、長いという点と、常人以上に耳が良いというその種共通の特徴を持ち合わせている。
例外の一つとしてはアクエルドら竜人族と呼ばれる存在である。
彼らは有鱗族の鱗と似た機能を持つ鱗模様と有尾族の様な尻尾、それから角が生えてあり、竜王となれば翼を持つという特殊な亜人だ。
そして、これら四つの特徴を持つが為に、王となったとされている。
三人の様子を見ていたウェスト王が大きく頷いた。
「うむ。それが亜人というものだ。この旅の最中、不備が出てくる部分があるじゃろうがそれも発見だ。友好国の民の生活を味わい、彼らの考え、生き方を十分に理解してくるのだ!」
「「「はい!」」」
ウェストが背後へ向き、窓の外を眺めた。
「王宮の裏門より馬車を用意してある。それに乗って亜人国に向かうのだ。お前たちの成長を祈っておるぞ」
ウェスト王の言葉にそれぞれ礼をし、三人は部屋を出ていった。
少しして。
コンコンッとノックする音とドアが開く音が聞こえた。
「あなた…」
そこにいたのは王妃であった。
王妃が中に入り、そのまま窓の外を見ていたウェスト王の元まで歩いていく。
「大丈夫よ」
そう言って王妃はウェストの肩に優しく手を置いた。
「ラビは好奇心旺盛だもの。帰ってきたライトやランにレンジからの話を聞いたら、外の世界にまた興味を持ってくれるわ」
「……そう…だな。…我らも引き続き、治す方法を探さねばなるまい」
ウェスト王は硬く拳を握った。
「王位継承が終わったらこの世界の隅から隅まで探しに行こう」
「ええ、私も一緒によ」
王には四人の子供がいる。その中の末っ子である第二王女のラビは、生まれてこの方外の世界を知らない。正しくいうなれば、一度出た外の世界で何かトラウマのようなものを見たのだろうか、外が怖いと心底怯えてしまい十八年間のほぼ全てを王宮内で過ごしている。
今も王と王妃の見ている先、王宮の一角にある塔の中で生活をしている。
いつまでも今の環境では駄目だと部下を使って治療法を探しているが、原因は不明。今もなお原因の究明を急いでいた。
王都から発ち一ヶ月が経った。
ライト、ラン、レンジの三人は国境を越え、最初の街であるレットテールに着いていた。
レットテールの街並みや城壁の作りは人間国のフィンリスと同じような作りだ。大地の魔力持ちが多い証拠だ。
人間国との貿易拠点として馬車の出入りが多く、街の中もずらりと商店が並んでいる。
ガチャガチャと積荷馬車がごった返している広場に一台の馬車が停まった。
馬車の中から尻尾と猫耳の生えたライト、そして長い耳が生えたランが出てきた。
二人はそれぞれ伸びをしたり、周囲を見渡したりしながら、馬車の長旅で固くなった身体をほぐしていた。
「ふぅ~。……ん?」
身体をほぐしている間、一向に出てこないもう一人にライトが気づく。
「レン、どうした?」
と、ライトが馬車の中に向かって言った。
ガサガサと物音がした後、馬車の中からレンジが答えた。
「ご、ごめんなさい…鱗が引っかかって……ん、よし。……っ! わあぁぁ!」
待たせてしまった。そう思ったのか、急いだ様子でレンジが馬車から降りてこようとする。しかし、馬車の枠にまたもや両腕の鱗が引っかかった。
急いでいた勢いで、滑るように前のめりに倒れてしまう。
そんな様子にランは軽く頭を抱えた。
「レン、あんたそんなんで大丈夫なのかい」
ランはレンジの元へ行き、手を差し出す。
「うぅ…ごめんなさい…」
ランの手を握り引き上げられたレンジは、服についた砂を落とす。
そんな二人の様子を微笑ましくライトは見ていた。
「やはり私がそっちにすれば良かったかな」
「い、いや…大丈夫…だよ……たぶん…」
「ならシャキッとしなっ!」
ランがレンジの背中をバンと叩いた。「いっ!」と小さな悲鳴を上げ、レンジが背筋を伸ばす。
そんな様子を他所に、ライトがレットテールの街並みを見渡しながら言った。
「さて、先ずはある程度の資金集めをしないといけないな。この街にいる間はお互い協力して行こうか!」
「そうねぇ、それじゃあギルドへ向かおうか。……どこだったっけ?」
そう言いながら近くの案内板までランが歩いていこうとする。が、それをレンジが止めた。
「ま、待って…姉さん。…ギルドは…あっちの方。……確か…」
そう言ってレンジは街の北門側を指した。
「何だい、ここのギルドに行ったことがあったのかい」
「うん。……十一年前に一度だけ…」
「そうか。じゃあ行こうか」
レンジを先頭に三人は歩き出した。
レンジの後ろを歩いていたライトとランが歩みを遅くし、レンジとの距離を取った。
そうしてライトとランはレンジに聞こえないように小声で話し始めた。
「んーもう少し自分に自信を持ってほしいのだが…」
「そうだねえ。でももうここまで来たんだ。この旅で変わることを期待するしかないさね」
実の所、ライトとランはレンジを王にしたいと考えていた。いや、レンジが一番相応しいと思っているのだ。
というのも、ああ見えてレンジは相当優秀であり、努力家で、知識・戦闘・内政、どれをとっても兄弟の中では秀でた能力を持っている。過去に人間国で起きた大事件を解決したこともあるのだ。
ただ、それでも自分に自信を持ず、周囲の目や反応を気にし過ぎてぎこちなくなってしまう。そのことにライトとランは頭を抱えていたのだ。
「一時期は人が変わったかのように自信に満ち溢れていたが…。今ではまた昔の様に一歩引いて行動するようになってしまった…!」
「レオパードでのことが大きいんだろうねえ」
「これまでにも私行きつけの店を勧め、ちやほやされたり、レンジが好みそうな女性を紹介したりしたのに…、何故だ…!?」
本気で頭を抱えているライトにランは軽蔑の眼差しを向けている。
「…あんた本当にどうしようもない男だね。そんなんだからレンジに負担が掛かるんだよ。全く……」
「仕方があるまい。男は女性を求め。女性は男を求めるのだ。これは変えられぬ真理さ」
「バカ言ってんじゃないよ…っ!」
ランは嘆息しながらスパンッ! とライトの頭を振りぬく。
音に反応したレンジが足を止め振り返った。ランは痛がるライトを無視しながら笑顔でレンジに手を振る。
ああ、いつものか…。とレンジは苦笑いしながら前へ向き直し、歩を進めた。
「まあ、あんたのはともかく、他にも色々やってみたけどてんで駄目だったしねぇ」
「ああ。またアクエルド君の様な人に出会えれば変わるのだろうか……」
「ふぅ…。なるようにしかならない…か」
肩をすくめたランが歩く速度を上げ、レンジの元へ向う。その後にライトが続いていった。
道中三人で他愛ない話をしながらギルドへ向かって行った。
ギルドとはギルド員に様々な仕事を斡旋する機関だ。ギルド員となれば様々な地域にある支部より仕事を請け負うことが出来る為、三人のような旅人は大概ギルド員となり各地のギルドの仕事をこなしながら生活をしていく。旅をする上での必須職種となる。
「ほんとよく覚えてるねぇ、レンジは」
特に迷うことなくギルドの建物に着いた。昔からレンジは記憶力が常人からかけ離れていて、一度見た物聞いたものは絶対に忘れない記憶力を持っている。
三人は中に入った。
ガヤガヤと騒がしい。現在の時刻は昼頃だがすでにギルド内にある酒場で酒盛りをしている者が多くいた。
今の時間帯は依頼を受ける人が少ないようで、受付の前はガラガラに開いている。その為すぐにギルド員になる為の登録試験を行うことが出来た。
試験が終わるころには夕方になっていた。試験の内容は面接と講習だ。面接といっても簡単な確認程度だったおかげですぐに終わったのだが、その後の講習が長引き夕方になってしまった。
三人とも人間国で登録試験は経験済みであるが、ここまで長引くとは思いもしなかった。どうやら亜人国特有の環境が原因のようだ。
登録を済ませたら街を見て回ろうと話していたが、予定を変更。宿を取り一日を終えることにした。
ライトとレンジは雑魚寝で寝れる宿を取り、ランは窮屈だが小さい一人部屋の宿を借り、その日を終えた。
次の日から薬草の採取や郊外の清掃、それからそれぞれの魔力属性に合わせた依頼をこなしていった。
そんな日が続いて十五日が経った日の夕方。
ライトはレンジに呼び出されていた。
「ふむ。どうしたのだろうか…」
宿泊先宿の廊下を、腕を組みながら考えるライトが歩いていた。
レンジの部屋の前で立ち止まり、ノックする。
レンジの返事が聞こえライトは部屋の中に入った。
「どうしたんだ、レンジ」
部屋の中は狭い。
壁際にベットがあり、その反対側に机と椅子。最低限の部屋と言えるだろう。
しかし、元々雑魚寝部屋で生活していたライトとレンジの生活水準が上がったことを示しており、今では三人が同じ宿の一人部屋に泊まれるぐらい稼げていた。
レンジの魔力属性の依頼料が多かったこともあるが。
「…兄さんごめん…」
「ん? 別に大丈夫だぞ」
急な呼び出しのことを気にしていたのだろか。なにも気にしていないとライトは微笑み、そのまま近くの椅子に座る。
レンジはベットに腰かけた。
「それで? 今日はどうしたんだ?」
「うん…実は…相談したい事が……あるんだ」
腕をさすったり、指でもじもじしたりとレンジに落ち着きがない。
おやっ、と眉を上げたライトはレンジの言葉を待った。
「……実は…、依頼主に依頼完了の確認とサイン…をもらった時…なんだけど……――」
レンジがポツポツと話を始めた。
今日の出来事である。それぞれ属性別の依頼に分かれて仕事をしていた時だ。
レンジはとある資材に耐雷を施す依頼を受け、雷の魔力コーティングを行っていた。
「…あ、あの…! 雷耐性付与…終わりました」
と、レンジが今回の依頼人である、有尾族のガラの悪そうな親方に報告した。
その報告に親方が凄みながら振り返り、眉を釣り上げ怒号を上げた。
「なにぃ! もう終わったってか!? …いい加減な仕事してねぇだろうなぁ?」
レンジを睨み付けながら親方は顔を近づけた。レンジは慌てて否定しようとするが言葉が詰まってしまい、うまく声が出ない。
「……まあいい。確かめりゃあ分かることだ」
そう言ってレンジを鼻であしらった親方は付与した資材のところへ行き、資材の魔力を見た。
「!?」
ガラの悪そうな親方が思わず目を見開き、唖然とする。その後、後ろに付いてきていたレンジを静かに睨んだ。
ビクッとレンジの体が小さく跳ねる。
「てめぇ…何もんだ」
「す…す…すみません! やり直します!」
勢いよくレンジは頭を何度も何度も下げた。そんな姿を見た親方は呆けた後、豪快に笑った。
「はっはっは!! やめろやめろ! こちとら褒めてやってんだ!」
そう言って親方がレンジの肩を叩き、そのまま肩を力強く掴んだ。
「こんな短時間にこれだけ良質な付与をしたんだ! 謝んじゃねーバカヤロー!」
「は、はい!」
「……なあウチで働く気はねーか? もちろん給料は弾むぜ!」
「え、えーと……ははは…」
「チッ! …わーってるよ、ほんの冗談だっ!」
そう言って親方はレンジの肩から手を放す。
割と本気だったのだろう、肩が少し痛い。レンジが肩を摩った。
「にしてもよぉ…」
と言いながら親方は改めてレンジの顔を見た。
「そんだけの実力があんならもうちょっと自信を持ったらどうだ? へこへこしてねえでよお」
周りから何度も言われた言葉だ。「自信を持て」「お前は優秀だ」と。しかし、いつもそんなことをいう人は自分より優れたところを多く持っている。だからレンジは、ほんの慰めで言ってくれているんだろう。そう思っていた。
「は、ははは……」
レンジは頬を掻きながら引き笑いをするがすぐ消え、視線が泳ぐ。
そんなレンジを見て親方は、思わず大きくため息をついてしまう。
「フン…なら男を上げて自信の付く店を紹介してやるよ」
「え?…あ、はい…」
そうしてレンジはにゃんにゃんオーリーという飲み屋を紹介してもらった。
「――……っていうことが…あって」
そう言いながら懐から一枚の紙を出した。その店の内容が書かれている。
簡単に言えば、可愛い女の子と一緒に楽しくお酒を飲むお店だ。
「ふむ。つまり私と一緒に行こうと!? よし、行こう!」
レンジの提案に即答したライトはレンジの手を引いた。
「ま、待って待って…!」
「ん? どうした?」
レンジは踏ん張りライトを止め、ライトは真剣な表情でレンジを見た。
「い、いや…なんていうか…さ。そういうお店で…な、何を話したらいいのか…わからなくて……。前行った時もろくに話せなかったし。そこのところを相談してから…行きたいなって」
思わずライトは目を見開いた。今までのレンジから考えられない発言である。まだ亜人国にきて十五日ほどしかたっていないのだが、もう何らかの効果が出ているのか…。
ライトは座り直し答えた。
「ふむ。正直に言おう。私も分からん! すべてその場のノリと勢いで喋っているからな! まあそんなに考え込むな。こういったものは数をこなさねば身に着かないことだ。焦らず色々試すことだな!」
「…数…か……」
ドクンドクンと心臓が速くなってきた。もうこの時点で緊張してきた様で、頭が冷たくなってくる。レンジは落ち着け落ち着けと思いながら、ゆっくり深呼吸をした。
「大丈夫だ! 今回も私がいる。フォローは任せるんだ!」
「……う、うん」
そうして二人は部屋を出ていった。
一方その頃ランはというと、部屋で幼い頃からの日課である日記を書いていた。
不意に呟く。
「そういえば明日の依頼、昼から一緒だったっけ?」
とランは首を傾げた。
明日の朝、朝食を食べる時でも聞けばいいのだが、何となく今聞きに行ってみようと、ランはレンジの部屋に向かった。レンジならば間違いなく分かるだろうと思って。
しかし、その時には二人は出かけた後だった。
レンジの部屋をノックするも返事がない。
何処かへ出かけているんだろうか。
そう思ったランはライトの部屋へ向かった。しかし、ライトも部屋にいない様だ。
声も掛けず二人していなくなるのは何かおかしい。そう思ったランは再びレンジの部屋の前まで戻り、ドアノブに手を掛けた。
すると鍵が掛かっていない様でドアが開く。レンジが鍵を掛け忘れる事態に眉をひそめた。
中に入り軽く部屋の中を見渡すと、ベットの足元で一枚の紙を発見した。
手に取って見る。
「……あんのバカ兄貴がぁ!!」
鬼の形相のラン。可愛い長耳が台無しである。
ランは紙を握り潰して宿を出てった。