序
人間ーーーそれは亜人の特徴を無くした人型の生物。
亜人ーーーそれは獣毛や獣耳や尻尾を有する者、又は様々な特徴を持った鱗を有する人型の生物。
それらを総称して人類と呼んだ。
彼らは互いに国を作った。
亜人達が集まり創った国、亜人国。
人間達が集まり創った国、人間国。
その二国だけの世界が出来上がった。
現在から四百年前。互いの領土を巡る第一次大戦をしていた両国に、突如として天より十二個の武具が降ってきた。そしてそれと同時に地上では、"魔物"と呼ばれる人害生物が大量に誕生し、人々の平穏を脅かした。
両国は戦争してるどころではなくなった。
戦争を止め、互いに協力しながら魔物の討伐に当たっていくが、徐々に徐々に亜人国と人間国の両国は魔物に侵略されていってしまった。
そんな時だ。後に"英雄"と呼ばれる者たち十二人が、天から降りし十二個の武具を手に取り、魔物、そして魔物を使役する魔族を押し返し始めた。
人と魔の大規模な戦争が始まったのだ。
戦争は二年間もの間続いた。その間に多くの力なき民たちが亡くなり、十二人いた英雄も五人が死に、武具も四つ破壊されてしまう。
激闘の末、英雄たちはとうとう魔族の王、"魔王"を追い詰め、討伐することに成功した。
人々は英雄たちに、そして天からの武具を称え。そして、長い戦争を終え、平和となった世界を民達は喜んだ。
しかし、その平和は長く続かなかった。
亜人国、人間国の両国は再び戦争を始めたのだ。
第二次大戦。その理由は互いの思想の不理解。ただそれだけだった。
更にこの大戦では、"魔力"と言う英雄や魔の者達が持つ力を、世界の人々が使えるようになってしまっていたのだ。その特徴は様々ではあるが、これまでの原始的な武具を用いた戦闘方法から形態がガラリと変わった。
そしてそれに加え、人々が抗うことが出来なかった魔の者たちを退けた強大な力――英雄を従えての大戦だった。
それは多くの人々と世界を破壊し、世界を再び混沌の世へと導く大戦へと発展していった。
平和を喜んでいた民たちは嘆いた。これでは一体誰が魔の物なのか…と。
その時、両国の王子二人が、戦争の引き金を引いた自身の親である王を殺し、戦争の終戦を呼び掛けたのだ。平和を願う人々が多かったこともあり、多少の遺恨を残したが、無事終戦へと至った。
両国の王子はもう二度と、混沌の時代が訪れないことを国民に約束し、亜人国と人間国は友好国となった。その際、両国南部の領土を合わせ、戦争の悲惨さを目の当たりにした長寿族を王として、中立国であるニクスを作った。
王となった二人は話し合った。
今回の戦争の起因が相手国の思想が分からず、畏怖し、戦争に至ったとして、両国の時期国王となる王子、王女らを、数年間相手国へ旅に出し、互いの国の内情や思想を知る為に国を見て回る儀式―――選定の儀を設けた。
その後、大きな戦争もなく平和な世界へと成る。
そして現代。
亜人の王が統べる国、亜人国。
人間の王が統べる国、人間国。
二度の大戦後、亜人国と人間国の中立国として長寿族が王として統べる国ニクス。
この三ヶ国のみが存在する世界が維持されていた。
そして現在。
各国の王子王女らの選定の儀が始まろうとしていた。
※話の舞台となる大体の世界地図です。