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第三話 誕生日 朝

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今日は、俺の誕生日だ。二十歳はたちになる。

いつのまにか寝てしまったようで、ベットの上じゃなく、

ベットに背もたれて目が覚めた。


「変な夢を見たなあ~。」


もう二十歳(おとな)になるというのに随分と子供じみた夢を見たもんだ。


「そんなに俺ってストレス溜まってるのかなあ。」

独りごちる。


「あ~。まったく、今日は親友の五十嵐いがらしが用意してくれた合コンがあるのに。まったく、ちゃんと眠れなかったなあ。変な寝癖ついてないだろうな?」


手鏡(てかがみ)を手に寄せ、ヘアスタイルを確認する。


うん、問題なし。


でも、あんな夢見るなんて、俺もよっぽど欲求不満なのかなあ。

しかし、あの悪魔の姿や声色は妙に現実感リアルティの残余が頭に響いている。

「とにかく、今日は絶対彼女を作るぞ!」


俺は、自分でそう宣言して、取り急ぎシャワーを浴びることにした。


「ったく、何が幸運の女神(フォルトゥナ)能力スキルだよ。今日の合コンうまくいくかなあ。訳の分からない幸運ラッキーよりも、目先の彼女だよ。今日五十嵐の奴、本当に、良い子連れてきてくれるんだろうなあ。」


蛇口を捻りながら、早速、五十嵐にLINEで確認してみる。

-今日の合コン、可愛い子本当に来るの?-

スマホは濡れないようにシャワーヘッドの上に置いたままだ。

すぐ既読になると、暫くして返事が来た。

-マジで、良い子来るからさ。誕生日おめでとうな。今日はお前に最高の誕生日プレゼント用意してやるからさ。ハーフのお前にピッタリのギャルが待っているからさ-

思わず、可愛い彼女が出来ることを想像してにんまりしてしまう。


「本当に少しは幸運ラッキーを味わいたいよ。幸運の女神(フォルトゥナ)能力スキルだとかがあるっていうなら、彼女をください。マジで。」


俺はシャワーを浴び終えると、急いでドライヤーで髪の毛を乾かし、

クローゼットを開き、今日のために買っておいたアローズのスーツを探した。


「これ、これ。これで今日はビシッと決めないとね。」


普段はジャージばかりエルだが、今日ばかりはスーツにデニムとオフィスカジュアルで服装を整えた。


ピンポン。


「はーい。」

「佐川急便です。」


何かAmazonアマゾンで注文でもしたかな、と思ってドアを開ける。


「こちらに黒川様のご署名をお願いします。」


エルは、<黒川くろかわエルピス様へ>と書かれたデカい包装袋をまじまじと見つめる。

うーん、衝動的に何か大きなモノ買っちゃったっけか?


「有り難う御座います。それでは失礼致します。」


宅配便のお兄さんが去って行った後、残された大きな宅配物に思案する。


「ん?これ、この前ネットで懸賞に応募したAyuあゆのフィギュアじゃね?」


そういえば、1週間ぐらい前にネットで今話題のアイドルユニットのメンバーAyuのフィギアに当たるっていうアンケートに答えたんだっけか。


「当たったのか。。。これって幸運ラッキーなのかなあ。まあいいや。幸先さいさきは良いってことで。」


エルはそのまま包装紙をほどき、確かにAyuのフィギュアが入っていることを確認すると、

無造作に机に置いた。


「なんか。今日は良いことありそうだな。」


四月も終わる初夏の朝陽(あさひ)にエルの目が滲んだ。

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