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猫の始末書

作者: ゆえ

天候が不思議に思ったので作りました。

これで少しは雨の日の外出も気分が上がるかも?


短い創作話なりますので、宜しければご覧下さい。

黒猫が不吉ってよく言ったもんだ。俺は確かに不吉な象徴なんだろうな・・。

そんな事を思いながら、今日も空を走る。黒い短い毛、眼はヘーゼル、小さい口から時折見える白い、小さな歯。ピンクの肉球が愛らしい。そんな彼は皆と違う箇所があった。彼は今日も死者を天界に運ぶ。猫が空を駆ける事も違うがもっと画期的に違う箇所があった。


「お、天使さんよぉ。二人連れてきてやったぜ。なんでこんなに天界ってヤツは分かりずれえかなあ~。」


口が悪いのみならず、声も少し低かった。まあ言葉を話せる事がそもそもおかしいが。連れられて来た人達が猫にお礼を言うと、光る扉に消えていった。それを見送って振り返ると金髪にスーツを着た優男が立っていた。


「・・・あなた、そこに座りなさい。」白くフワフワした雲の上で、穏やかに男が言う。金色の髪が穏やかな風になびいた。

「ん?座るって?じゃぁ、これでいいか?」と彼はお座りをした。

そんな自分がツボに入ったらしくのたうち回りながらヒーヒー笑っている。

「・・・いい加減にしないと、怒りますよ?」

男の背中からバサッとした音と共に白い大きな羽が出た。羽の一枚一枚が大きく広がり、威嚇するかのように広がる。白かった雲が徐々に黒くなり、ゴロゴロ・・と音を鳴らした。

「お、すまんすまん。ちょいと調子に乗った。で、どうしたよ?」と聞くと

「あなた、なんで最近下界から天界に来る時に姿消さないんですか?あれだけいったでしょ?ちゃんと姿消しなさいって!!」耳をつんざくような怒鳴り声が響いたと思うと、雲の下で「ガラガラドーン!!!」と眩い閃光と共に雷が落ちた。


「あ~あ、今ので地上の人間、何人か倒れたぞ。いいのかよ。そんなに天使が怒って。」と茶化すと、「あなたのせいでしょうが!!そんなんだからこんな番組や雑誌に取り上げられちゃうんですよ!!」とスーツの男が、手元のリモコンでTVを映す。

画面には「私は見た!空を駆ける猫!!」の特集が流れた。落とされた本を見ると「死んだ祖父が一緒に黒い猫と空に上がるのを見たんです・・・」と特集を組まれている。


「お、おれじゃん!・・ってか、お前こんな俗物見たりしていいのかよ・・・」

「それはまた別の話です!」「第一、地デジどうやって受信してんの?」

「これ以上、怒らせる気ですか・・」雲がまた光を帯びてくる。今にももう一回落ちそうな勢いだ。


「悪かったって。だってそんな暇ないぐらい忙しいんだもんよ。」

「悪いですんだら天使もいらないですよ。あなたの事で私がどれだけ怒られたと思ってるんですか!」と今度は泣き出した。雲からも盛大な雨が降っている。


「悪かったって。ごめん。気をつけるからさ・・・。」

「それ、二回目ですよ?もう、あなたのその言葉は信じれません・・。」とさめざめと泣いた。雨がさらに強くなっている。

「ほら、三度目の正直って言うじゃん?」と慰めるように頭に肉球を置いた。

その手を払うと「二度ある事は三度あるって言いますよね?」と肉球が置かれていた個所をハンカチで拭く。

「ってかさ、お前ハッキリ言って女々しいわ・・・。」と猫があきれた。

「女々しい!!あなた、自分の事棚に上げてよくそんな事言えますね・・・・第一、地獄に行くはずだったあなたをその役割につかせてあげたのは誰だと思ってるんですか!!」ともう一度、地上に特大の雷を落とす。

「・・すいませんでした」と少しふてくされて猫が言う。

「本来であればあなたのような輩、この天界に上がる事も許されないんですよ?私があなたをその役割につかせる為にどれだけの苦労をしたと思ってます?書類手続きとか本当に大変だったんですから!上司へのプレゼンするにも、あなた生前にロクな事してないし。」

「マジ!?そんな事してたの?」

「しましたよ!!寝ずにプレゼンの資料作りましたし、あなたのいい所探す為に生前のDVD、60回は見ましたからね!!」


「え?俺のDVDとかある訳?」

「ありますよ!最近のはHDDに落としますけど。あなたは本当に未成年の頃から飲むは打つは買うは、ロクな事しないんですから。採用したらしたらで、あなたは問題ばかり起こすし。」さっきから雨音が強くなる。


「そろそろ止めないと、もう地上がえらい事になってるし、どっかの県浸水してるぞ?」

TV画面の上にテロップがさっきからとめどなく出ている。


「あなた、本当に反省してないでしょ?」天使の顔が涙と鼻水でぐちゃぐちゃだ。

「いや、本当に、反省した!俺、もっと頑張るからさ。心入れ替えるよ!だからさ、泣くなよ・・・」肉球でティッシュの箱を掴んで渡す。


「・・・本当ですね?」

「本当です。この肉球に誓って。」小さな肉球を上にあげた。

「・・信じますよ。」ニッコリとほほ笑むと雲は白くなって少し晴れて地上には青空が広がった。


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