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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

星の海のセイレーン

作者: ネムノキ
掲載日:2019/05/01

「ゆきーのしーんぐーんこーおりーをふんで」

 敵艦から放たれたレールガンの砲弾が、星間物質やデブリとぶつかることで蒸発しながら進んでいく様は、どこか彗星と似ている。

「どーれがかーわやーらみちさえしれずー」

 そんな彗星が、何条も『私』を破壊せんと直進してくるのを、『私』は小刻みに上下左右に動くことで回避していく。

「うまーはたーおれーるすててもおけず」

 所詮百メートル級のコルベットを改造したに過ぎない敵艦が保有している粒子砲の類は、その根幹を成す粒子加速機の大きさから正面に向けてしか放てないため、こうして横っ腹から襲いかかってやれば、反撃手段は実弾兵器しか存在しない。

「こーこはいーづくーぞみーなてきのくに」

 実弾兵器なんて、早くても秒速五十キロメートルしか出せないし、デブリの多いこの古戦場では射程は良いところ百キロメートルしかない。相対距離八十キロメートルでチョロチョロしている『私』に、レールガンが当たることは億が一にもあり得なかった。

「ままーよだーいたんいっぷくやれば」

 これだけ挑発してもミサイルの類を撃ってこないということは、敵艦はミサイルや魚雷の類を保有していないと考えて良いだろう。

「たーのみすーくなーやーたーばこーがにほん」

 ミサイルの類を持っていると、追い詰めた時に護衛対象に向けて撃ち込んだりしたとても面倒だから、これは幸運だ。

 さて、厄介ごとが無いと分かったことだし、片すか。

「やかーぬひーものーにはーんにーえめしに」

 『私』は、構えた姿勢だけは取っていた右手のアサルトライフルにエネルギーを最大出力から二割分だけ回し、セレクターを『ビーム・単発』にしていることを確認してから、敵艦のレールガンの砲塔目がけて射撃。

「なーまじいーのちーのあるそのうちはー」

 狙い違わず撃ち抜かれた砲塔は、炎と鉄屑をまき散らして沈黙していく。様子見のつもりだったのに、思ったより脆い。

「こらーえきれないさむさのたきび」

 どうも、敵艦は軍艦の改造艦にしては、対粒子砲兵装であるシールドをまともに張れていないらしい。アクティブスキャンから見た主砲の反応はカタログ通りなところから考えるに、どこかの戦場で廃棄されていた艦を適当なジャンク品で修理したのだろう。シールドは宙域にデブリが多すぎることから、ジェネレーターの反応から張っているのか推測するしか無かったので、誤解していたのも仕方ないこととしよう。

「けーぶいはーずだよなまぎがいぶる」

 全く、勿体ない。レールガンを四基も増設して両舷十二門にする金があるのなら、その金で正規品のシールドジェネレーターを取り付けた方が、継戦能力は余程向上するのに。

「しぶーいかおしてこうみょうばなし」

 まあ、こいつを倒さなければならない私からすれば、有り難い話だけれど。

「すーいといーうのはうめぼしひとつ」

 左舷のレールガンを全て沈黙させると、敵艦は焦ったのか船体を回転させて右舷をこちらに向ける。まだ抵抗することに私はげんなりしつつ、馬鹿な敵艦の残るレールガン砲塔を全て撃ち抜く。

 残る主な攻撃対象は主砲とエンジン位だ。危ないから、主砲位は沈黙させようか、と敵艦の艦首側に移動しようとすると、護衛対象から急に通信が入ってきた。

『共和国製のコルベットの主砲は高く売れるんだ! カチコミはこっちでやるから、『セイレーン』はそれ以上そのフネを壊すな!』

「エンジンも壊さなくていいの?」

『ああ! そんだけ壊れてりゃワープも出来ねえからな!』

「りょーかい」

 お仕事終了だ。離れた所で戦況を見守っていた、護衛対象の三隻のデブリ回収船の中でも一際大きい船から、対艦突入ポッドが四基放たれ、必死に逃げようとする敵艦にコバンザメのようにくっついていく。私はというと、いつでも敵艦を沈められるよう、アサルトライフルに回すエネルギーを五割まで上げて待機。

 絶叫と断末魔に彩られたカチコミ隊の通信をBGMに、適当な歌を口ずさむこと三十分。ようやく『制圧完了』の通信がカチコミ隊から入ってきた。その間に適当なデブリを拾ってカーゴを埋めていた護衛対象は、欲張ることなくこう言った。

『一旦帰投だ! 流石にコルベット一隻は大きすぎる』

 笑い声混じりの『了解』の通信が飛び交い、私も適当に「りょーかい」と返す。

 護衛対象達は一番大きな船を先頭に、鹵獲したコルベットを最後尾に菱形の陣形を取り、『私』はコルベットの甲板に着艦して基地へと帰還する。

 基地まで半日の距離はかなり暇で、雑談に興じても時間はなお余る。

『しっかし、護衛が人型機動兵器なんぞ骨董品で来たから不安だったが、あれだけの腕があるなら安心だなぁ』

 骨董品で悪かったな、と内心憤りつつも、同時に骨董品と言われるまで生きてしまっていることを哀しく思う。長生きはするものじゃないな。

「でも、あんまり相手が多いと処理しきれないから、その時は逃げに徹してもらうよ」

『わーってる、って。だが、『宙賊と遭遇したら出来るだけ鹵獲出来る形で仕留めてくれ』って無茶振りを実行出来る、ってこたぁ、ただ撃破するだけなら結構な数行けるんじゃねえのか?』

「数はね」

 そう正直に答える。

「それで君達に被害が出たら意味ないからね。その時は本当、ちゃんと逃げてよ?」

『わーってるわーってる』

 通信先の一番大きな船の船長はゲラゲラ笑う。

(笑い事じゃないのに……)

 そういうことを疎かにした人から死んでいくのに。まあ、入れ込む程親しい相手でもないので、その時はその時か。

批評お待ちしています。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 宇宙での戦闘が魅力的に描かれています。 [気になる点] 敵が馬鹿で味方も緩く、主人公も歴戦を潜り抜けている割に軽いので、重厚な戦闘描写に対して、人間の描写の部分で緊張感に欠けるように思いま…
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