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お姫様との邂逅

 いつもの様にクラス特訓の後にアレクとのマンツーマンの指導を終え、湯浴びを済ませた後部屋に戻っていた。


「あら?あなたは確か…アキラ様と共に来た同胞者様」


 ・・・出くわした女性を無視して、駿は早足で自分の部屋に向かう。


「お、お待ちください!」


 が、一瞬ので差を埋められて先回りされる。抜こうとするも前に立たれ抜くことができなかった。


「ど、どうしていきなり逃げるのですか!?」

「別に。俺は早く部屋に戻りたかっただけだ」

「それならこちらを見て歩みを速めなくてもよろしいではありませんか!」


 どうやらこの人は俺が逃げるようにしたのが嫌だったらしい。何をバカなことを言っているんだ…。


「ベツニソンナツモリハナカッタヨ」


 全くもってその通りだよ畜生。



 *



 その後、結局ミスティーナ姫から逃げることができず姫様と共にテラスにてやってきていた。

 なんだか楽しそうにしているお姫様裏腹に、これがステータスの差か…と虚しい気持ちになりながらもどうしたものかと考えている駿。


「ところで…まだあなたの名前を伺っていませんでしたね?」

「え?ああ、俺は本堂です。本堂と呼んでもらえればそれでいいです」


 突然話しかけられたことと考え事をしていた為か、少し間の抜けた声が漏れるが、すぐさま返答する。


「ホンドウ様…ですか…。私は」

「ミスティーナ様…だったよな?」

「ご存知だったのですね」

「印象的だったので…」


 そりゃあ初めて出会った最初の異世界人だし…。


「そんなに印象的でしたか?」

「ええ、まあ…」


 そう返すとお姫様はフフっと嬉しそうに笑う。その姿に世の中の男どもは照れたり、顔を赤らめたりするのだが、駿は全く気にすることなく、


「それで?姫さんが俺を呼んだわけは?」


 早く要件を済ませようと本題に入った。そんな駿の態度に少しムッとした表情を浮かべるが、すぐさま不安げな表情に変わる。


「・・・私は…不安なのです」

「・・・」

「私は一国の姫として国民を導かなければなりません。しかし、魔人族…それに魔王にも私達の力では遠く及びませんでした…。その為、勇者であるアキラ様やホンドウ様達に多大な迷惑かけてしまいました。そんな私がこのまま王位を継いでもよろしいのでしょうか…」


 突然呟きだしたお姫様の言葉に駿は一瞬怒りを覚える。だが、それをどうにか押し殺してお姫様ことを考える。

 ミスティーナ姫がどう言った言葉を期待しているのか…。そしてどの様な言葉を言って欲しいのか。


「当たり前です。それに迷惑なわけないでしょ?」

「!・・・ほ、本当でしょうか?」

「ええ。我々は勇者一行。あなたの頼みならばどんな死地にも趣ましょう」

「それは!」





「どう?()()()()()()()()聞いて安心した?」





「?!」


 駿の言葉に今度は動揺の色が露わとなり、僅かにたじろく。


「こう言って欲しかったんだろ?()()()()()()()()()()って、()()()()()()()()()!って」

「そ、その様なこと…」

「ありませんって?だったらどうしてそんなことを聞いたんだ?」

「そ、それは…。わ、(わたくし)が本心でそう思っていることで…」

「本心で思ってる…ね…。でもな、人間ってのは不安に思っていればいるほど本心は口にしない生き物なんだ」


 駿の言葉にどんどんと口数が少なくなっていくお姫様。その表情には動揺と共に焦りの色も見え始める。おそらく自分の胸の内をかき回された感覚なのだろう…。しかし、それでも駿は止まらない。


「そういうことを言う時は、本心ではこう言って欲しい。安心したい。姫さんだって本心は同じさ…。勇者のお仲間だから、きっと同じように慰めてくれる。きっと安心させてくれる。なんたってあのお優しい勇者のお仲間さんなのだから。どうだ?当たってたか?」


 駿のその言葉にミスティーナは顔は真っ赤になり、


「そ、そこまでわかっていながら!どうして幸せのまま終わらせてくれなかったのですか!!」


 そんなミスティーナの言葉に、駿は真っ直ぐにミスティーナを見つめ


「あまったれるな!」

「!?」


 俺の大きな声に驚きビクッとなるミスティーナ。しかし、そんなことを気にせず駿は尚も言葉を続ける。


「一国の姫として?おお!立派なことだ!迷惑をかけた?大変その通りだ!俺からしたらあいつらと共に異世界なんて来たくもなかった!だがな、現実を見ろ!俺が異世界から帰る方法なんて魔王を倒すしかない!俺みたいに弱い奴は誰かに頼るしかない!どんなに頑張ったって、その現実から逃れられないだ!」

「なら、わたくしはどうしたらよかったのですか!」


 駿の言葉に応えるようにミスティーナは声を上げる。


「魔人族との戦争にも役に立つことができない!魔王の脅威に対して勇者を呼び出すことでしか皆さんのお役に立つことができない!そんな愚かなわたくしは誰かにすがってはいけないのですか?!安心する事さへ許されないのですか?!」


 自分の思いを打ち明けたミスティーナは着ていたネグリジェを強く握りしめ涙を流す。

 駿はミスティーナの本心を聞き、今度こそ自分の思ったことを口にする。


「・・・逃げたければ逃げればよかったんだ」

「え?」

「したくないことからは逃げる。それが良く言う()()()の生き方だ」


 駿の驚きの言葉にミスティーナは耳を疑う。駿はそんなミスティーナを気にも止めず言葉を続ける。


「でもな、一度でもしてしまったことからは()()に逃げられないんだ。やってしまったことに責任が伴う。それが世の中だ」


 なんだかとても()()()がある「絶対」という言葉がミスティーナの体に重くのしかかる。


「だから姫さんは俺を、そしてあいつらを元に返さなければならない責任があるだ」

「・・・確かにその通りですね…」


 ミスティーナは握りしめていたネグリジェをゆっくりと離し、ハンカチを取り出し涙を拭く。


「・・・姫さんがどれだけ辛い思いしてるかは知らない。けど、辛い時に必ず力になる奴は必ずいる」


 例えば勇者アキラとかがいい例だろう。


「だから考えろ。自分のしたいこと、本当の思いを」

「・・・はい…」


 こうして、テラスを照らす月下の語らいはこうして幕を閉じた。



 *



 部屋に戻ったミスティーナは先程のテラスでの話を思い出していた。


 わたくしの本当の思い…。そう考えるとわたくしはそんなことを考えたこともなかったと気付く。


 お父様に言われ通りに生き、魔王をどうにかしたいと考えてもお父様に言われた考えに従ってきただけだった。


 本当の気持ちを考えることがこんなにも難しいと思いながらも、考えをまとめることができなかった。


(・・・ホンドウ様…でしたか。あの方も色々とお悩みになったのでしょうか…)


 ミスティーナは駿に興味を持ちながらも、重くなった瞼に耐えきれず、そのまま眠りに落ちるのだった…。


 そしてこの発端を作った本人はというと…



 *



(やっちまった〜!!!。らしくもないことしちまった〜!!!)


 ベットの上で自分が言った言葉に悶えていた。

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