最弱の憂鬱
異世界に来て早1週間。
この1週間行ったことと言えば、この世界での戦い方と武器の使い方だ。この異世界は戦いに魔法を織り交ぜて戦う手法を用いており、人間族以外にも魔人族、亜人族、魔物も同じように魔法を用いて戦闘を行う。そのため、まず最初に始めたことは魔法の勉強だった。
異世界に来てまで勉強かよ…と思う人もいるだろうが、実の所これは案外あっさり終了した。理由はこの異世界に召喚された者は記憶力や学習力が大幅に増大するらしく、誰一人として苦戦する人はいなかったのだ。そのため、急ピッチで教え込んでいたので魔法についての授業はかなり短い期間で終了した。
その後、武器での戦い方について学ぶことになったのだが、ここで本堂には問題があった。それは自分のステータスのことだ。
ステータススフィアに表示された数値はほぼオール1。雑魚中の雑魚にも限度があるし、それに『(変動あり)』とかよくわからないものまで書かれているしまつだ。「ふざけるな!」と言いたいところだが、しかしそんなことを言っていても始まらない為、駿達の教官を務めることとなったアレク騎士隊長に訪ねることにした。
「アレクさん」
「?君は確か…」
「俺のことはいいので、少しこれを見てくれませんか?」
そう言って俺は自分のステータススフィアに表示された数値を見せる。それを見たアレクさんは驚いた後、困惑の表情を浮かべる。
「なんだこれは…」
「称号の所とかに『勇者の同行者』なんてことは書かれていませんが、それよりも別の所を見てもらえるとありがたいのですが…」
「いや、他の者にもそんな称号はないのだが…。それよりもなんだこの数値は?」
「俺に聞かないで下さい」
「雑魚にもほどがあるだろう!」
「口に出して言わんでもわかるわ!!」
いちいちそんなわかりきったことを口に出して言うな!
「いや〜すまんすまん。ここまで弱いと寧ろ清々しいと思ってな」
「だからってそれ口に出して言う理由あった?!」
「俺の気分が良くなる」
「最低だ!最低だこの人!」
こんなので良く隊長が務まるな!
「だがしかし、ここまで弱いと…」
「ペラッペラの紙盾とでも言いたいのか、鬼畜!」
「別にそう言うことを言いたんじゃねぇよ!・・・普通に考えてこんなに弱いことはありえないんだ」
「はあ?それはどう言う意味ですか?」
アレクさんの話を聞いたところ、ここまで弱い人間は存在しないらしい。ステータスの1という数値は生まれてきたばかりの赤ん坊がどうにか呼吸できているというレベルらしく、このステータスの低さはどう考えてもおかしいということらしい。
「普通に考えて呪いや何かしらのバットスキルだと考えるの普通なのだが…。?だけじゃ情報はわからないからな」
「そうですか…」
呪いやバットスキル…考えてみればその通りだ。ということは…
「!?俺のこのステータスは畜生童貞の呪い?!」
「いや、そんなわけないだろ」
冷静に突っ込まれた後、武器の特訓後アレクさんとマンツーマンの個人練習をすることとなった。武器についてはしばらくの間、自分に合ったを武器を探しながら様子見ということで話がまとまった。
「お!本堂が持ってるのステータススフィアじゃねぇか!ちょっと見せてみろよ!」
・・・変なのに絡まれた。
俺のステータススフィアを奪おうとしているのは砂糖…じゃなかった佐藤 力也。誰にでも当たり障りなく接する奴で、俺にも周りの視線を気にすることなく接してくるが、今回ばかりは間が悪い!
「やめろ、バカ!」
「え〜。いいじゃねえか?」
そう言いながら、俺の手にあるステータススフィアを力ずくで奪っていこうとする為、抵抗するがステータスの差からかいとも簡単に奪われてしまう。
「どれどれ…。なんだよこの数値!」
「リキヤ?どうした?」
佐藤の大声に散らばって特訓していた奴らが集まってくる。そして俺のステータスを見て笑いだす者、同情する者が様々な感想を口にする。
「だ、大丈夫ですよ!先生だってすていたす?というのはかなり低いんですよ!」
「ほら!」と言って自分のステータススフィアを見せてくる倉橋 唯子先生。というかいたのか…。ちっちゃくて全然気づかなかった。
倉橋 唯子
年齢:28
性別:女
種族:人間
体力:68
魔力:38
筋力:6
耐久:18
敏捷:3
魔攻:100
魔耐:78
スキル:水流・土壌支配・農場管理・天候コントロール
称号:異世界副教師
俺は先生にスフィアを返し、ただ何も言わずに遠くを見る。何故か先程からなんだか視界が悪いなぁ…。口元からも何か出てる気がするけど気にしない。「あれ?どうしたんですか!本堂君!」と俺をガクガク揺さぶる唯子先生。
すみませんが今は1人になりたいんです。出来れば話しかけないで下さい。
水流と土壌の支配って完全に万能じゃん。それに農場管理で食料関連は完璧じゃん。さらに天候コントロールって…ある意味最強の女神の完成じゃん。
それに比べて…
周りでワイワイと盛り上がっているが、俺はこれが初めてこの異世界を呪った最初の日だった。