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箱と勇者と世紀末  作者: Sary
1/4

白銀の世界

初投稿です。

突っ込みどころがあるかと思いますが

温かい目で見てやってください。


僕は、ここにいる。


この殺風景な世界で。


草木は見当たらず白銀の景色がどこまでも続いている。


白銀?いや、一見雪のように見えるが触れても冷たさを感じない。

これは何なのだろう。ただ触れていると胸の奥が騒めく。

そんな粉末が辺り一面を覆っている。


他に僕の視界に入る物は、おそらく人工物なのであろう。所々に鎮座している。

それは建物なのか、オブジェなのか、はたまた者なのか。


だが、僕以外動いているものは見当たらない。


僕はふと自分に目を向けた。見覚えのないボロい服を着ている。

ボロい傷だらけの服に反して体に傷は見当たらない。

怪我はないようだ。


そして見覚えのない傷だらけの箱を手に持っていた。

箱を言うには武骨で石でできているような

片手には少し余る正六面体の箱だ。

特殊な模様にサイコロの四のような穴が六面に空いている。

穴に指を入れたりしても何も起こるわけでもない。

ただ、これは持っていなきゃいけない。

そんな確信が僕の中で木霊する様に響いている。


他には何もない。

僕は雪のように見える粉末をかき分けながら歩くことにした。

一歩踏み出すごとに粉末がさらさらと音を立てて膝の高さまで舞い上がる。

そのたびに起こる胸の奥の騒めきに不安とはまた違う違和感を感じながら進んでいく。





もう、どれだけ歩いた事だろうか。




日の光は曇天によって一定の薄暗さを保ち、

人工物らしきものがあまり変わり映えすることなく鎮座している。

変わったことを強いて言うのであれば、踝の上ほどあった白銀の粉末が、

三分の一ほどになっている。

所々赤茶色の岩肌が見えている。


ふと気が付けば、風が吹いていない。

音も自分の動きが発するもの以外無い。

最初からだったか。臭いなんかもあまり感じない。

改めてみても殺風景な空間が広がっている。


「もう少し歩いてみるか」


僕は声が出た事に驚いた。

こんな声だったか?どれだけ声を発してなかったんだろうと

僕は半分呆れながら空笑いした。

音も臭いも風もない空間にいたら自分の声が想像より大きく

だが何もない空間で声が返ってくるはずもない。

……と思っていた。


「だ、誰かいるの?」


怯えるような震える小さな声が何もない空間によってハッキリと大きく聞こえた。

僕は少し驚きながら声のした方向を見つめた。

そこには、この殺風景な白銀の世界と同じ白銀の髪をした少女が人工物の陰に立っていた。

その様子はとても怯えた目をしてみすぼらしい格好をしていた。

僕も人のことは言えないが…。


「え?えっと?ここでなにをしてるの?」

「か、隠れてたの」

「なにから隠れてたの?親御さんは?」

「わ、わかんない。お母さんが隠れてなさい!って…。それからどこか行っちゃったの…。」

「うーん、そっか…。はぐれちゃったんだね。僕と一緒に探しに行く?」

「え、でも…。お母さんはおうちにいなさいって…。おうちが探してくれるからって」

「え?あ、これは家なんだね。ん?おうちが探してくれるって?」

「うん、おうちが動いて探してくれるの。でも一週間くらい前大きな音がしてこの粉が降ってくると動かなくなっちゃったの」

「へ、へぇー、おうちが動くんだね…。って一週間も一人だったの!?」


動くのは普通でしょ?という態度でスルーされた。


「一人だったけどご飯はおうちにあったから。でももう食べ物なくなっちゃって外に出たらお兄ちゃんがいたの。」


そういえばここ数日何も食べてないな。かといって途轍もなく空腹というわけでもないな。


「なるほどね、そうだったんだ。それじゃあおうちも動かないみたいだから一緒にお母さんとごはんさがしにいこうか?ここに置いて行く訳にもいかないしね」


こう尋ねるといままで怯えていたのが嘘のように


「いいの?私ライカっていうの!」

「お、おう。ライカちゃんね。よろしく」

「お兄ちゃんのお名前は?」


………。僕の名前…?当たり前の質問に答えられない。


「お兄ちゃん?」

「え?ああ、ごめん。なんか思い出せないんだ。」

「お兄ちゃん記憶がないの?」

「記憶?確かに昔の事を思い出せないかもしれない…。」

「うーん。じゃあ変な箱もってるから箱のお兄ちゃんね!」

「え、もっとなんかないの!?」

「えー!それじゃあ普通のお兄ちゃんかなー」

「とりあえず思い出すまでそれでいいよ…。」

「よろしくね!おにいちゃん!」





こうして何もない殺風景な空間に僕以外の音ができた。





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