『ボタン・L・チャック物語』
さぁ書こうとすると、ペンがどっかへ飛んでった。あんまり大した事ではない。ただ少しだけ退屈で、でも大分信用のならない話だ。拾うよ。
この慎重に書いた恋文が、君にとってはアヒルの朝ごはん程にドキドキしないものであるのなら、僕は後で後悔するだろう。でももしこの恋文が…とやはり夜中に考え、フットボールはその場に止まっていた。僕は手を出せないのだ。
彼女の気持ちを書く事もできる。それを紙に書いて、こいつの部屋のよく使うテーブルの上に置いておくのは朝飯前だ。しかし、彼女の今の気持ちを書けたとしても、それで彼女がドキドキするかどうかなど分かれはしないのだ。
やはり作者は神などにはなれないのだ。ここで船を出してフットボール達をガテマラへ行かせる事は出来ても、カナダへ行かせる事は出来ないのだ。それがどんなに治安の良い国だろうが、どんなに治安の悪い国だろうが、僕にはなにをどうする力もないのだ。
せめて2粒のジュズダマを、冷蔵庫の下に転がして…
ーボタン・L・チャックー