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54.秘密基地な図書館

 おどろおどろしい黒石で出来た城は、上半分だけが白く染まっていた。独断で屋上からペンキを流したら、途中で足りなくなってしまってルカにこっぴどく怒られた犯人は私ですハイ。


「でもほら、チョコケーキの生クリームがけみたいでおいしそうでしょ?」

「あの辺り、『グリ参上!』と書いているように見えるのだが」

「なんかそこの壁、ペンキまみれになった誰かがぶつかった形跡が見えるんスけど」

「……」


 黙り込む私に何かを察したのか「なかなかユニークな城だ」とエリック様が気を使ってくれる……恥ずかしい。


 近いうちにちゃんと塗りなおそうと思いながら、中のエントランスホールへと案内する。すると、中に居た子供たちが一斉にわっと駆け寄ってきた。


「まおーさまだっ、ルカさまも居る!」

「あっ、この人がゆーしゃさま? こんにちは」

「あ、あぁ……こんにちは」


 ぺこっと頭をさげるゴブリンの子供に、戸惑ったように返事をした勇者様は、この子たちは?と視線だけで問いかけてくる。


「村の子供たちです。最近は親が畑仕事をしている間、みんなここに来るのが定番になっちゃって」


 その時、いかにもやんちゃそうな顔をした男の子が、私の横にピッタリと着いた狼を見て面白そうに声を掛けた。


「あれっ、師匠そんなカッコで何やってんの?」

「……」


 ギロリと睨みつけられてもなんのその、したり顔で笑った少年はからかうような調子で言葉を続けた。


「あ、わかった! そのアングルからアキラ様のスカートの中を覗こうと――」


 バウッ


「ぎゃーっ、何! 冗談だよ、ごめんってばぁ!!」


 吠えたてられた男の子は一目散に逃げていき、赤い狼がその後を追いかける。


 エントランスホールにみんなの笑いが響く中、勇者様だけは一人生真面目そうな顔で首をひねっていた。


「この国では犬を師と仰ぐのか?」

「あははははっ、そんなところです」


 笑いすぎてにじむ涙をぬぐっていると、図書室からひょいと一人の少年が顔を出す。彼は怒ったように拳を振り上げながら追いかけられている男の子を呼んだ。


「こぉーらぁ、リッツー! キミが一番年長なのに率先してサボってどうするのさっ」


 天使のような顔立ちの少年は、藍色の瞳をくりくりっと動かしたかと思うと明るい声を出しながらこちらに駆け寄ってきた。


「こんにちは勇者様。ボクはライム、よろしくね!」

「あぁ、あの号外に載っていた最年少幹部の……エリックだ、よろしく頼む」


 にぱっと笑って差し出された手を勇者様は微笑んで握り返す。最初に比べてだいぶ警戒心は薄らいできたようだ。ライムの人懐っこい雰囲気もあるんだろうけど。


 続いてルシアン君とも挨拶をかわすのだけど、彼はこの幼い少年が幹部なのが信じられないようであちこちの角度から観察するように覗き込みこんな事を言う。


「ほあー、どっからどう見てもちっちゃいのに幹部かぁ、オレこのくらいの時は鼻水たらして遊ぶことしか考えて無かったッスよ」

「失礼しちゃうな、ボクがちっちゃくて愛らしいのは事実だけど、これでもリッパに仕事はしてるんだよっ」


 頬を膨らませた匠は、すでに通ってきた関所遊園地が自分の設計であることを自慢げに話した。


「マジでぇぇ! センパイセンパイ、この子に頼んでウチの詰所も改造してもらいましょうよ!! 緊急出動はトロッコで窓から発射とかどうっすか!」

「着地はどうするんだ、それ」

「あははっ、いいよ。ボクたちの国と仲良くしてくれるんだったら、いくらでも作ってあげちゃう」


 関所遊園地という大仕事がひと段落したので、最近のライムとグリはここで子供たちの面倒を見てもらってる。簡単な文字の読み書きを教えたり、お城の中庭を使って鬼ごっこをしたり。


 ふと、ここで私は一人存在が足りないことに気づきコソッと問いかける。


(そういえばグリは?)

(面倒だから雲隠れするってさ、自分の部屋で寝てるんじゃないかな)


 ライムは肩をすくめて死神様のメッセージを伝えてくれた。まったくもう、顔合わせだっていうのに。


 呆れながらも私はガイドを再開した。ライムが出てきた図書室の扉を開けると中へと彼らを導く。


「ここは図書館。子供たちの感性を育てようと城の書庫を解放してるんです」


 大きな窓が開放的な一室は、私たちが本を置くだけだった簡単な書庫からは様変わりしていた。本が増えるにつれて手狭になったことに業を煮やしたライムが二階へぶち抜いて大改造してしまったのだ。


 その際、暇を持て余した子供たちにも工具の扱い方を簡単に教え手伝わせたらしく、銘々好きなように作らせた図書室はすさまじいことになっている。


 一応中央には普通の読書用の大机がいくつか並べられているのだけど、通路に一歩踏み込むと秘密基地が垣間見える。


 ギッシリと本が詰め込まれた棚が入り乱れて抜け穴や通路を作り、少し屈んで視線を低くすると、あちこちに本を読むための腰掛けベンチや寝転がって読む用のベッドが見えるのだ。


「……また改造した?」

手首です。この図書館に食べ物持ち込み禁止令を出したのはわたくしだったりします。みんなの共有物である本を汚したりしたら承知しませんからね!


ところで先日、感想欄に書き込むのは敷居が高いとの相談をとある読者様から受けましたの。

たしかに少し書き込み辛いかもしれませんが、気軽にポンとその日の感想を一言だけ放り込んで下さるだけでも構いませんのよ? むしろそうやって書き込みやすい雰囲気を作り出して下されば万々歳です。

皆さまからの感想は物語りを綴る上での大切なブースト材。グランドマスターもとっても喜ぶと思いますわ。

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