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33.VSワームベーム

 色は薄いピンク色。太さがドラム缶ぐらいある時点で卒倒モノなのだが、何より特筆すべきなのはその長さだ。全長が出ていないというのにすでにとぐろを巻けるほど長い。もうこれミミズっていうか、ヘビだ。


 穴から飛び出した巨大ミミズは地面でのたうち廻るように暴れ始めた。ギリギリのところでかすった村人がふっ飛んでいき道端にキュ~と倒れ伏す。私はすっかり腰が抜けてしまって、気付けば尻もちをついていた。


「ワームベームと呼ばれる魔物ですね。知能はそこまで高くないのですが、意外と動きが早く、一度暴れ出すと甚大な被害が出るとか」


 こんな状況でも冷静なルカが助け起こしながら解説してくれる。


「……」


 だけど私は初めて直面する死の恐怖で声を発することさえできなかった。巨大ミミズがこちらにまっすぐに向かってくる、トラックが全速力で突っ込んでくるってこんな光景なのかと頭の片隅でぼんやり考える。


 次の瞬間、私はルカに抱えられてふわりと跳んでいた。ピンクの肉塊が足のつま先スレスレを通過する。


「参りましたね、幸いまだ植えていない面ですけど、このままでは作業もままなりませんし……」


 今、ルカが助けてくれなければあっけなく死んでいた。ドッと冷や汗が吹き出す私とは別に、地上のラスプや村人たち、ゴブリンたちはみんな当たり前のように普通に動いて逃げ回っている。この世界ではこのくらいの危険が当たり前なんだ。


 少し離れた安全地帯に降ろしてもらう。まだガクガクと笑っている膝でなんとか大地を踏みしめる。おちつけ、深呼吸、すぅはぁ、よし。


「ど、どうしよう。なんとかなだめる事って、できないかな」

「言葉が通じるほどの知恵があれば良いのですが、あの状態では説得が通じる前にミンチにされるでしょうね。ラスプー! そのままひきつけて置いてくださいねー!」


 逃げ惑う村人たちとは違い、一人勇猛果敢に立ち向かっている彼から「武器もないのにどうしろってんだよ!!」と悲痛な叫びが返ってくる。確かに麦わら帽にクワって、ネタ装備もいいところだ。


 ラスプは持ち前の俊足を活かし、巨大ミミズの懐まで入り込むと思い切り踏み込んで跳躍した。クワの柄を棒術のように使い、向かってくる尻尾(?)攻撃を上手く流す。そこを足場にトンッとさらに上へと跳ぶ。


「だりゃああああ!!」


 頭と思われる方と同じ高さまで飛び上がり、大きくクワを振りかぶる。ドスッと鈍い音がしたかと思うと巨大ミミズの頭にクワが突き刺さった。


 しかしダメージは思ったよりないようで、ミミズはブルブルッと頭を振り頭に刺さっている異物を吹き飛ばした。キシャアアア!!と怒りの声を上げると、臨戦態勢を崩さないまま警戒するように左右を見回している。


「クッソ堅ぇぇ! アイツ、頭の方が皮膚硬いぞ!」


 空中でくるっと一回転したラスプが私たちの隣に着地する。彼は痺れる両手を払いながらすぐに立ち上がった。涼しい顔のルカがその様子を見てさらりと毒を吐く。


「情けない、頭部を切り落とすぐらいの気概がなくてどうするんですか。あなたの肩書きを『警備隊長(笑)』にしてしまいますよ」

「農耕具で戦えとかアホだろ!! お前こそ風魔導持ってんだから切り裂けよ!」

「あいにく、私はボディガードで手一杯でして」

「素直に動きたくないからって言えや!」


 二人が言い合いをし始めたその時、私は少し離れた位置で動く何かを視界に捕らえる。


 ミミズと私達のちょうど中間ぐらい、たぶん逃げ遅れてしまった男の子が真っ青な顔をしてこちらに向かって必死に這ってきている。


 と、その時。ゆらゆらと待機状態だったミミズがピタリと動きを止めた。その先端が向けられているのは――あっ、まずい!


「そもそも私は頭脳派ですので、野蛮な戦い方は……主様!?」


 ルカの声とほぼ同時に、巨大ミミズが動いた。


「うわぁぁああぁぁ!!」


 駆け出した私は、魔石のついたブレスレットを前方にかざす。地面がせり上がるイメージを強く思い描きながら思い切り踏み込み、その勢いで両手を後ろから振り上げる。


 手ごたえを感じると共に、男の子の前にズァァッと高さ二メートル、幅十メートルほどの土壁が飛び出した。ヤケクソとばかりに私は男の子に飛びつき、そのまま抱えて横っとびにゴロゴロと転がる。


「……ひっ!」


 すると一拍だけ間を置いて、男の子が居たところに巨大ミミズの頭が凄まじい音を立てて叩きつけられた。ズズ……と、ピンク色の巨体が壊れた壁の向こう側へ引っ込んでいく。


「だ、大丈夫だからね、お姉さんが、ぜったい、助けるからね」

「あ、あうぅ」


 土壁の裏に隠れながら私と男の子はガタガタと震えていた。は、はやく助けに来てよ、ルカもラスプもなんでポケッと突っ立ってるの。


 いつ後ろから吹き飛ばされるかと生きた心地がしなかったのに、いつまで経っても気配すらない。不思議に思って壊れた壁からそーっと覗くと、巨大ミミズは標的を見失ったかのようにキョロキョロと辺りを見回していた。


(もしかして、そんなに目が良くないの?)

手首です。前回は取り乱して申し訳ありませんでした。そうですね、信じて待つのもメイドとしての役割ですわね…!ここはぐっと堪えて、帰りを待ちましょう。

***

まこ様よりお便りが届いてますわ

「手首ちゃんに質問です!メイン面子と手首ちゃん、ロカさんの好きな色とか、分かれば教えて欲しいなっ♪」

色、色。そうですね、きちんと聞いたことはないのですが、ご主人様はどうやら淡い色合いが好みのようですね。パステル調のお召し物が多いです。ルカ様はやはりというか深い緋色が好みのようで、アクセントによく使ってらっしゃいます。

……あら文字数が。続きは次回に致しますわ

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