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32.ゲロイン

 パラパラと降り注ぐ土たちは、全てフカフカで団粒化された物になっていた。作物にとって最高のベッドだ。


 わーいわーい! 土属性のどこがハズレよ。これ以上ないほどのチート属性じゃない! もう地味とは言わせない、これからは土属性の時代だ! フィーバー!


「すごい!すごい!すごい! 見てほら、どんどん良い土になってくよ!」

「お、おい」

「主様、ちょっと待――」

「やった、これでおいしいものが、そだつよ、おいしくなーれ、オイシクナーレ!」


 調子に乗って手当たりしだいに混ぜ合わせていく。だんだんと浮かされるように気分がふわふわと、あれ、あへぇ?



 ……



 ――様、主様



「主様!」


 ハッと気付いた時、私は土の上で横になり上半身を誰かに支えられていた。


 ? ちょっとだけ意識跳んだ?


 視線を上げれば、目の前には珍しく感情を顕わにしているルカの怒った顔があって、初めて見る表情に一瞬誰だろうこの人、と思ってしまう。


 目が合うと少しだけホッとしたような表情を浮かべてくれるのだけど、またすぐにキュッと目を吊り上げて叩きつけるように怒鳴られた。


「初めての癖にあんな無茶をするなんて、馬鹿ですか!」

「バカって――」


 寝起きの罵倒にようやく意識がはっきりする。だけども次の瞬間、ものすごい吐き気が襲ってきた。


「う、ぐぅぅ……ぶぇ、きぼちわるいぃぃ~」


 とっさに口を押さえるもせり上がってくる。我慢できなくなった私は背中を向けると畑に向かってゲーゲーと吐きはじめた。


「まったく……」


 呆れたようにため息をつきながらも、有能な右腕は背中を優しくさすってくれる。


「マナを取り込んで魔力と合わせるのは精神に相当な負担が掛かります。限界を超えてやるのは魂をすり減らすのと同じこと、あれだけ派手にやれば当然の反動ですよ」

「しら、知らない、先にいってぇぇ~」

「止めたのに、ハイになって聞く耳持たなかったのは誰ですか。狂喜じみてて皆ドン引きでしたよ」


 出すもの出してしまえばスッキリして、心配そうな村の女の人が持ってきてくれた冷たい水を一気に飲み干す。ぶぁぁ、ひどい目にあった。


 まだ厳しい目つきのまま、ルカは半目でにらみながら約束を取り付けた。


「今後、慣れない内は私の指導下でなければ魔導を扱うことを禁止します。よろしいですね?」

「はぁい、ルカせんせ……」


 バツの悪さを感じながら視線を逸らす。と、土の中からポコンと飛び出している可愛らしい緑の双葉が目に入った。あちこちで種まきをしているのだけど驚いたことに片っ端からポコポコと芽が出始めている。


「えええ、こんなのアリ?」

「試しに蒔いているのですが、恐ろしい程の生育スピードですよ」


 確かに良い土ではあったけど、ここまで来ると早回し映像でも見ている気分だ。ドラゴンのフンのおかげなのか、私の土チートの成果なのか、あるいはその両方か。


 その辺りは後で検証してみようと頭の片隅に書き留めて、半面は種を蒔かずに休ませておくよう指示する。この急成長野菜が食べても安全かどうかはまだ分からないし、予備面は残しておくべきだからね。


***


 その後しばらく観察を続けていると、小さな実を結んだところで成長は一旦ストップした。トマトに似てるけどなんの植物だろう、収穫が楽しみだ。


 向こうの畑からやってきたラスプが額の汗を拭いながら辺りを見回す。その頬には少しだけ泥がついていて、率先して働いてくれていた事が伺える。


「これなら一週間もしない内に喰えるかもしれないな」

「本当?」

「トヌトって野菜なんだが、生食でも糖度が高くて美味いし、煮込んでスープにしても肉や玉子なんかと一緒に炒めてもいい。後はゼリーにしても――おい、ヨダレ」

「はっ!?」


 無意識の内に垂れていたしずくを慌てて拭う。んんん~っ想像しただけでたまらん!辛抱たまらん!!


「よぉーし、ラスプの食レパートリーの選択肢を増やすため、張り切って土壌作り再開!」

「食糧難を解決する題目はどうした」

「……っていうのはオマケで、みんなのお腹を満たすため頑張るぞ~」

「お前な――」


 呆れた様子だったラスプの耳がピクピクッと動き、警戒するようにザッと構える。


 どうしたの、と尋ねる直前『それ』がやってきた。ズズンと下から突き上げるような揺れが発生したのだ。


「わっ、わっ!?」


 なんとか踏ん張ってバランスを保とうとする。その間にもラスプは素早く駆け出していた。


 揺れが収まり私も慌てて後を追いかけると、まだ開墾途中だった方面から村人たちの悲鳴が聞こえて来る。何かあったんだ!


「主様、それにラスプ」


 離れたところで指示を出していたはずのルカが驚いたように振り返る。


 その場はもう阿鼻叫喚だった、腰を抜かした村人たちがあっちこっちで這いつくばりながら逃げているし、畑のあっちこっちにはボコボコと謎の穴が開いているし。


「いったい何があったの!?」

「それが――」


 百聞は一見にしかず。キシャアアア!!とつんざくような鳴き声が辺りに響き渡り、とりわけ大きく空いた穴の一つから『そいつ』が顔を出した。


「土壌が急激に変化したことを察して様子を見に来たのでしょう、もしかしたら元々この地下に住んでいたのかもしれませんね」

「巨大ミミズーーっ!!」


 私の叫びと同時に、その巨大モンスターがドゴォ!!と暴れ始めた。

手首です。下の村から悲鳴が聞こえるのですが…何かあったのでしょうか。心配です

ごめんなさいっ、質問を頂いてますが心配なので次回に回させて下さい。あぁでもどうしようっ、わたくしが行ったところで何ができるのかしら…(おろおろ

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