if物語~もしあの場面であの選択をしていなかったら~
600ブクマ到達ありがとうございます!
企画の内容に悩んでいたところ、のいさんにifルートのアイデアを頂きました 感謝
今まであきらがたどってきた軌跡。もし違う選択をしていたら? を、お楽しみください
※結構キャラ崩壊してるのもあるのでなんでも許せる人向け(すべて別世界線でのお話と考えてください)
(20.れっつ、ネクロマンシぃぃぃー!! ifルート選択)
すぅっと息を吸い込んだ私は数歩進み出る。そして両手をバッと天に掲げるとお腹の底から声を出した。
*select*
「れっつ、ネクロマンシぃぃぃー!!」
⇒「永遠の眠りに尽きし眷属たちよ、聞け、我らが同朋の嘆きを。其は我を、我は其を、魂の寄る辺を与えよう、我が声に応えよnecromancy!!」
*choice!*
「永遠の眠りに尽きし眷属たちよ……」
ふいに浮かんだ詠唱が口からスラスラと流れ出す。手の中に物理的ではない何かが入り込んでくる。私は確かな自信と共にそれらをしっかりと握りしめた。
「我が声に応えよnecromancy!!」
瞬間、呼応するように柔らかい地面から一斉に手がボコボコボコォ!と、突き出した。ぎゃああああ!!! できちゃった!
「お見事」
「おぉぉ~、あきらにそんな才能があるなんてちょっと意外」
「怖い怖い怖い!」
感心する配下二人の後ろに逃げ込んでこわごわとゾンビたちを観察する。あーあーうーうーと呻きながらも彼らは整然と並びこちらの命令を待っている。あ、れ、思ったより知性ありそう?
「主様、この調子でじゃんじゃん蘇生してしまいましょう」
「え、えぇぇ~?」
……
あれからどれだけの月日が流れただろう。意外にもネクロマンサーの適性があったらしい私は次々とゾンビを量産していき、ついには世界を統一することに成功していた。まぁコスパ最強の不死軍団が居たら何も怖いものは無かったわね。いつの間にかおとなりのメルスランドも降伏してきたし、魔族諸島も配下に入ったし。
「近頃では不死者に率先してなりたがる若者も増えているそうですよ」
うめくゾンビたちが徘徊する大広間の玉座に座りながら、私はルカの報告を聞く。そういえばグリがいつの間にか消えた。このままじゃ過労死するって言い残していったっけ。ゾンビたちの腐敗臭がすごいけど、それを除けばそれなりに各地で平和になってるみたいだし
「まぁ、これも一つの世界平和よね」
-不死王アキラ-
ネクロマンサーとして比類なき才能を見せた魔王
その実力は世界統一をするほどで、彼女の元には絶対の忠誠を誓った不死者が寄り集まったという
ゾンビたちの頂点に立つ彼女の雄姿は後世に語り継がれている
Normal end 1
-飛び出せゾンビ王国-
***
(30.褒めて差し上げましょう ifルート選択)
最後の晩餐を終え、私はカップをソーサーにカチャリと置いた。両手を合わせてごちそう様でしたと食材たちに感謝を捧げる。
う、うぅぅ、本当に、おいしかったなぁ~、この決断は本当につらいけど、でも
*select*
「…………明日でいいから、その食材、下の村に持って行って全部おいしくない食材と交換して来てほしい」
⇒「まぁでも、少しぐらい交換したところで焼け石に水か」
*choice!*
「まぁでも、少しぐらい交換したところで焼け石に水か」
「ん? 何の話だ?」
ラスプが不思議そうに問いかけてくるから、私はごまかし笑いを浮かべながら素直に答える。
「いや、その食材と村のおいしくないの交換した方が良いかなって一瞬思ったんだけど、よく考えたら別にそんなことしても意味ないかーって思っちゃって」
一瞬はぁ? って、顔をしていたシェフだったけど、手早く食べ終わったお皿を下げながら当然の事のように言う。
「ンなことする必要ないだろ、王ってのはどんなに国が貧しくても一定のモン喰うべきだ」
「だよねぇ~、あはは。あっ、ところでこれおかわりない? すっごい美味しかったからもっと食べたいなー」
「仕方ねぇヤツだな、待ってろ」
「わーい」
……
足りない。ぜんぜん足りない。
「お腹へったなぁ」
ぽつりと呟いた私の発言に赤いしっぽがびくっと跳ねる。私は山のように積み上げられた骨の中の一つを弄びながらぼんやりと続ける。
「ゴブリンも、スライムも、食べつくしちゃったし、年貢を納めてくれるはずの住人もほとんど逃げ出しちゃったし、なんでだろう?」
いつからだろう、周りにいる住人たちが食材にしか見えなくなってきたのは。なんか食べてるうちに角とか、爪とか生えて来たし。だんだん自分の体が異形化してきた。
そういえば『優しい国』を造ろうだなんて言ってた時もあったっけ。でも仕方ないじゃない、お腹はどうしたって減るんだもの。
ふと視線をあげると怯えたような目と合う。調理してくれるから最後まで残しておいたけど、もう『これ』もいっか。食材は素材そのままでも けっこう おいしいもんね
「ねぇラスプ、狼っておいしいのかな?」
Bad end 2
-暴食の魔王-
***
(71.侵略作戦、始動! ifルート)
「となると、先立つものが必要になってきますが……主様、申し上げにくいのですがそろそろ底が見えてきましたよ」
(土台は揃った、赤字から黒字に転換させなきゃ)
*select*
「メルスランド側に身内が出て行ってしまった人間をリストアップして、その人たちを中心にキャラバンを組んで」
⇒「目くらましと魅了の魔術って難しい?」
*choice!*
「目くらましと魅了の魔術って難しい?」
「目くらましと魅了、ですか?」
私が尋ねるとルカは少し意外そうな顔をこちらに向けた。目くらましの魔術――それはルカやグリたち魔族がヒトに化けるために使っている技術だ。
「そう、これより我が国は目くらましと魅了の魔術習得に特化した学校を作るわ! 幸い魔族は魔力に長けたものが多い。顔の造作に関しては私が監修するから」
「主様、まさか……」
察しのいい右腕に力強くうなずく。
「資金繰りのためにホストクラブを作ろう!」
……
「ドンペリはいりまーす」
グレーのスーツをきっちり着こなしたグリが相変わらずのゆるい喋りでコールする。その隣では適度にスーツを着崩したラスプがグラスを一気に呷って歓声が上がった。ルカは隣の卓でゲストたちから黄色い悲鳴を浴びている。彼が先導して教え込んだおかげで、忌み嫌われていた魔族たちはそろって美形に変身していた。私直伝の接客術もあって、ハーツイーズ城を改築してできたホストクラブは今日も大盛況だ。
「アキラ様」
厨房でドリンクの用意をしていると、ふわっとした茶色い髪をしたイケメンが顔を出した。私はそちらに振り向いて手を上げる。
「もうちょっと待って、今用意できるから」
銀のお盆によそったサンドイッチを調理担当の女ゴブリンが持ってくる。それを彼のトレイに乗せてあげて、ついでに肩についた綿埃を払ってあげる。前は私より小さかったのになぁ。
「そういえば今月の使命率、ルカを抜いてあなたがナンバーワンになれそうよ」
「本当? 嬉しいな。でも」
柔らかく笑った彼は、誰にも見えないように屈むと耳元に口を寄せた。
「ボクは誰よりもアキラ様に指名して欲しいな。ねぇ、今のボクなら兄ぃたちにも張り合えるかな?」
昔の無邪気な声はそのままに、色気を含ませた声が全身をカーッと熱くさせる。成長したライムは囁いた
Normal end 2
-今夜のご指名は?-
***
(1.勇者が攻めて来ますので、我が軍を率いて何とかして下さい ifルート選択)
「主様、あなたは先代魔王の生まれ変わりです」
「私が?」
「あなたにはこれから前世の記憶とスキルを少しずつ取り戻し、元の魔王様に戻って頂きます。よろしいですね?」
「じょ、」
突拍子もない宣言に思わず声が詰まる。何とか肺からの後押しで声を押し出した。
「冗談じゃない! 私は私よ、他の誰にもならないんだから」
「話は変わりますが、私、血を絶って今日で一週間目でしてね、一度飲みはじめたら干上がるまで貪り食ってしまうかもしれませんのでご了承下さい」
*select*
「やる! 魔王やるから食べないでーっ!!」
⇒「それでも、絶対にムリっっ!!」
*choice!*
「それでも、絶対にムリっっ!!」
勘違いもいい加減にしてと思いっきり突き飛ばすと、意外にもルカはあっさり私を解放してくれた。押した反動で一歩後ずさるとシン……と沈黙が降りる。なぜか、温度が急激に低下したような気がした。先ほどまで感じていた熱は一気に冷や汗へと変わり、こめかみから頬にかけてつぅと汗がしたたり落ちる。
失望したようなため息が鳴り響く雷鳴の合間に聞こえる。私は視線を上げることすら出来ずにただ足元だけを見続けていた。何か致命的なミスを犯してしまったような、そんな絶望感を味わいながら。
「仕方がありませんね」
気配が変わった。先ほどまで細身の青年がいたはずの場所に『何か』が居る。圧倒的な存在感は日本という平和ボケした国で危機察知能力がなまりきっているはずの私でさえ震え上がらせた。意思とは関係なく膝が笑いだす。
「顔を上げなさい」
穏やかとさえ言えそうな命令は、絶対的な強制力で私を従わせた。抗うこともできずにゆっくりと顔を上げていく。見るな、見てはいけないと本能が叫ぶのに、まぶたはコントロールに従ってくれない。やがて見えて来た、紅い紅い、瞳が――
……
城内の見回りを命じられている狼男が、最後の見回り場所でもある玉座の大広間へと入ってきたのは陽も沈んでしばらく経った頃だった。
誰もいないと思っていた彼は、王座の燭台に珍しく明かりが灯っていることに気付き怪訝そうな顔をする。歩みを進めると、嫌味なほどに輝く金髪が闇の中に見えて来た。普段からいけ好かないと感じている同僚が、王しか座る事の許されない椅子に堂々と腰かけている。もう少し近寄ると、その足にすがるように華奢な影が見えてきた。髪の長い女のようだ。
「何やってんだ吸血鬼、女連れ込むんなら自分の部屋でやれよ」
ここでやるなと苦言を申し立てると、クスリと笑ったバンパイアは何も言わずに女の髪を撫でた。少しだけ興味が湧き、回り込んで観察してみる。見た感じ自分とさほど変わらない年のようだ。熱に浮かされた目はとろんと潤み、ルカに触れられる喜びで身を震わせている。しゃがんで覗き込むが、魅了された相手以外は認識できないらしく、こちらに気付いた様子もない。荒い息遣いの合間に「ルカ様……ルカ様……」とひたすら呟いている。
「おーおー、物欲しそうな目しちゃってまぁ。メスの匂いがプンプンするぜ」
しかし吸血目的で時おり女を連れ込んでいたのは知っていたが、ここまで愛おしそうに扱っているのを見るのは初めてだ。特別な謂れでもあるのかと見つめ続けていると、からかうような声が上から降ってきた。
「好みでしたか? あげませんよ」
「バッ……んなわけあるか!」
激昂した狼男は立ち上がり、最後に一度憐れんだ視線を女に向けると大広間から出ていった。残された吸血鬼は女の頬にそっと手をあてる。猫のようにすり寄る様に微笑みを浮かべると親指で唇をなぞった。
「いい子ですね」
「ふっ、ぁ」
「私の可愛い人形……」
燭台の炎がゆらいで消える。かすかな音だけが誰もいない広間にいつまでも響いていた。
Bad end 1
-傀儡-
***
「っぶはぁ!」
気合いの掛け声と共に上掛けを撥ねて飛び起きる。ドッドッと脈打つ心臓を押さえ、私は夢と現の区別を必死に処理していた。
「どうかされましたか? ものすごいうなされようでしたよ」
「なんか、よく覚えてないけど、すんごい夢をいろいろ見せられたような……」
そこではたと気づいた私は、窓のカーテンをシャッと開ける金髪に視線を向けた。
「一応聞くけど、ここ私の部屋だよね?」
「ですね、おはようございます」
ガッと脇のクッションを掴んだ私は、その爽やかな笑みを浮かべる顔面めがけて思いっきり投げつけてやった。
「なんでナチュラルにルカが居るのよ!!! おはよう!」
「怒りながらも挨拶を返してくれる主様が私は好きですよ」
「朝から恥ずかしいセリフ禁止ーッッ」
「なるほど夜なら構わないと。今夜をお楽しみに」
「ライムー!! セキュリティの強化を! 強化を!!」
コントみたいなやりとりをしながら慌てて飛び起きる。それに対して今日も完璧なルカは平然と本日のスケジュールを言ってのけた。
「そんなことより主様、今日は忙しいですよ」
「え、なんだっけ」
「ご自身から提案しておきながら忘れたのですか? 収穫祭に向けての事前コンペが始まりますよ」