勇者
「え?確か勇也さんがカードを貰っている時に用事があるから勇也と一緒に待っててと言われました。」
「…用事の詳細って分かるか?」
「いえ。今までもよくあったことですから。」
今までも、か。まぁ行ってみないと分からないな。
先程、爆発音がした場所に着いて勇也は安堵の息をした。
そこにいるのはRPGで言うならゴブリンの様な姿だ。
「なぁアニェラ。一応聞いておくけど、魔王軍ってこいつらの事か?」
「えぇ、魔王軍の精鋭部隊のゴブリン。今一番魔王軍で危険とされてる種族です。さらに言えばこの種族は…ー。」
そこまで言うとまた先程の爆発音が聞こえてきた。
「…この通り爆発物を自ら作ることができ、このように毎日ランダムの時間に投てきしてくるのです。」
え、そんなセコイことすんの?ただの嫌がらせじゃん…。こっちの世界では序盤で出てくる最弱種じゃん…。
そんな勇也の心の叫びはつゆ知らずアニェラの説明は続く。
「さらにコボルトと最近手を組んでさらにズル賢い攻撃をしてくるようになりました。」
え、コボルトとゴブリンってドイツ語か英語かの違いで一緒やん…。
だがアニェラはまだまだ説明は続く。
「あと自分の死を顧みず、近づいてきたら最後、自爆します!」
「え…と、ゴブリンとコボルトって一緒じゃないの。」
「あ、すみません。えとですね、ゴブリンの親玉がコボルトって呼ばれています。」
そんなアニェラの説明に一つの疑問が頭の中をよぎる。
「それならなんで…ー。」
バゴォォォン!!!!
アニェラに質問しようと口を開いた瞬間、先程よりも大きな爆発音が聞こえてきた。その衝撃でか、大きな岩が頬をかすめた。
「質問は後にしてください。それより今は相手に集中をしましょう。」
そう言うとアニェラは手をかざし、杖を出現させた。
「てか俺はどうしたら良いんでしょうか…。武器とか無いし戦うの初めてですが。」
「あ、そう言えばそうですね。まぁひとまず町のけが人を安全な場所に運びましょう。今はまだ持ちこたえていますし。他の町にいる人達で耐えてくれると思います。」
「あぁ分かった。」
「お願いします。」
こうして勇也はけが人を救助しに行った。
「-はぁ、はぁ。これで最後か…。」
勇也は担いだけが人を降ろしながらそう呟いた。
「お疲れ様でした。勇也さんのおかげで死人はでませんでした。ありがとうございます。」
「いや、殆どアニェラの治癒力のおかげだよ。100人以上の負傷者を1人で回復させるなんてな。」
「私は当然のことをしているだけですよ。」
…。本当に優しい子だな。そう改めて思う勇也であった。
「でもこのままだとまたけが人が出てしまいますね。どうにかしないと…。」
「それは任せて。あとは私がやる。」
不意に後ろから声がして、2人が後ろを向くとそこには銀髪の色をした女の子が立っていた。
この子の為にあるとも思えるぐらい穢れも寄せ付けない銀色の髪。その髪に負けないぐらい綺麗なルビー色の瞳。まだ幼さを残した可愛らしい顔。もし勇也の育った世界にいたらどんなアイドルよりも圧倒的に可愛いと思えるそんな子だった。
「ありがとう。2人とも。おかげで手加減なしで攻撃できる。」
そういうと銀髪の子は戦場に行ってしまった。
「あの人は…勇者ミリナ!?でもなんでこの町に。」
アニェラは驚いた顔をしてそう呟いていた。
「あの子が勇者…。そんなに凄いのか?」
「凄いなんてものじゃ無いですよ。たった1人で100万を超える人数の反乱軍を全滅させたり、今日の様に襲撃してきた魔王軍だって殆ど瞬殺です。」
「マジかよ…。あんな小さな子が。」
ミリナはその言葉通りの強さを見せていた。
ゴブリンがミリナに気づき爆発物を投てきしようとするが、投げる直前、ゴブリンの腕が切れていた。
全く人の目では見えない神速。そして投げられるはずだった爆発物が地面に落ちると同時にミリナは上に飛び二振り目の剣を抜いた。そして爆発と同時にゴブリンの親玉、コボルトに空を蹴り向かっていく。
「はぁっ!」
コボルトは何とかその剣筋を躱した。
…筈だった。
ミリナの攻撃を躱しコボルトが反撃しようとした所でコボルトの首が跳ね飛ぶ。
「必殺、残斬。なぁんてね。」
「嘘だろ…。たった1人で…。」
「あの魔王軍の精鋭部隊をたった1人で…。」
勇也とアニェラは同じ様な感想を言った。
ミリナと呼ばれる子は100を超えるゴブリン+コボルト1匹に対し30秒も掛からず敵を全滅させた。
そんなデタラメな力を当然の様に使い、何事も無かった様に帰っていく。
町の人たちの歓声が起きる中、勇也は呆然と見ることしか出来なかった。