いつもの風景、いつもの、町……?
しばらくほけーっとおユキちゃんを見つめながら、私は今までの夢を振り返る。一体、何だったんだろう。大切な何かを失った。だけどそれが何だか、全く思い出せない。
『――き』
……?
なんか今、聞こえた気がする。気のせい?
『――づき』
やっぱり。聞こえる。これは?
外から聞こえる。私はお気に入りのスニーカーを履き、外へ出た。
『――はづき』
導かれるように、私は歩いた。だんだん声が大きくなっていく。その声は男性のようだった。心配してるようにも思える声。ド田舎の田んぼ横の道を歩き、幼馴染の家を通り過ぎ、しばらく歩いて神社へと。階段を上りながら謎の声に耳を澄ませる。力強い声は大きくなりつつ、裏腹にどこか消えてしまいそうな不安を私に与えた。そして、ついには消えてしまった。
……? ここは?
川社神社。私の家から最も近い神社。よく来ている神社なだけに、大した不安は無い。
『葉月参上!』と大きく彫られてある大木に疑問を覚え、近付いて見てみる。誰? こんな悪戯したの。樹齢数百年はあろうかという注連縄が捲いてある大木を触りながら、私は憤りを隠せなかった。
『戻ってこいよ、葉月!!』
大木に触れた瞬間だった。力強い声が私の耳元で叫んだのは。触れた手が木の中に持って行かれ、私の意識は遠のいていった。