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三題噺もどき5

猫と椿

作者: 狐彪
掲載日:2026/10/28

三題噺もどき―きゅうひゃくごじゅうろく。

 




 そういえば、椿の花ってなんであんな風に落ちるのだろう。

 花は散ると言うけれど、椿は落ちるというのを疑問に思って、調べたことがある。

 その時に初めて知ったあの落ち方は、なんというか、どこか壮絶だった。

「……」

 ぼとり、と音が聞こえてきそうなあの落ち方。

 小学生の時の通学路に、踏みつぶされた椿を見たときは、なかなかにグロいと思った記憶もある。でもあの蕾を一枚一枚向いていくのも楽しかった。それは別の花かな。

「……」

 あの子が、お祭りで来ていた。

 浴衣に入っていた大きな椿も。

 あんな風に、ぼとり、と落ちるのだろうか。

「……」

 あの子は、椿が落ちるのをみてどう思うのだろう。

 綺麗だと思うのか、惨いと思うのか。

 それとも、何とも思わないんだろうか。

「……」


「……」

 ぼんやりとしたオレンジのライトが手元を照らす。

 部屋の電気は消されているのでそれ以外は真っ暗。

 隣の部屋では妹がカチャカチャと何かをしている。

「……」

 隣も電気は消えているので真っ暗だ。

 ただぼうっと何かが光っているのが見えるので、ゲームでもしているんだろう。

 最近何かにまたハマったらしい。明日も朝練があるとか言っていなかっただろうか。

 いくら年齢が幼くとも、夜更かしというのはかなりしんどいと思うが……まぁその辺の感覚がおかしいからこんな時間まで遊んでいるんだろう。

「……」

 かく言う私も、さっさと寝た方がいいのだけど。

 やること……というかまぁ、ちょっと寝るに寝られないので、眠くなるまで机に向かっているという感じなのだが。スマホをいじっている以上眠れそうにはない。

「……」

 オレンジに照らされた手元には、スマホが握られている。

 音量をひとつだけあげて、幽かに聞こえる程度の音で猫の鳴き声が聞こえている。

 今は、世間ではありふれたような猫がよくしゃべっている動画を見ている。

「……」

 何か文句を言いたそうに、なごなごと喋っていて、素直に可愛いと思う。

 猫ってあまり鳴かないイメージがあるのだけど、飼い猫になるとそうでもないんだろうか。飼い主によったりするのかな……よく話しかけていたらよく鳴くみたいな。

 生憎、動物を飼ったことがないのでその辺よくわからない。

「……」

 両親は幼い頃に飼っていたことがあるらしいんだけど……。

 そのせいで、飼うのは無理だと言われている。お金もかかるのはもちろんだが、別れるという事がどれだけ苦しいかと、散々言われてきた。

 確かにそうなんだけど、あまりそこを考えて飼わないという選択肢を取る人は、いそうでいなさそうだ。

「……」

 なんだかなんだ、最後だと決めても。

 その後に運命だ、生まれ変わりみたいだと、新しい子を飼っているイメージがある。

 偏見で申し訳ないが、そういうモノをよく目にする。

「……」

 今朝。

 通学路の端に。

 引かれている猫を見た。

 踏みつぶされた椿みたいだと思った。

「……」

 あんなところで引かれることはないだろうから、誰かが移動したのだろう。

 小学生や中学生、朝は多くの学生が歩くような、通学路。

 私が見たのは、反対側からだったからよく見えただけかもしれない。

「……」

 そんなものには目もくれず、ものすごい勢いで走り去っていく車。

 視界に入ることもなく、楽しげに話しながら歩いている学生。

 スマホを片手に操作しながら、スタスタと歩いていく大人。

「……」

 何を思うこともない。

 私には何もできない。

 アレに触れることもできない。

「……」

 ただ何となく。

 いつか死ぬならあれでいいと思った。

 誰に悟られることも、誰に振り向かれることもなく。

 ただその場で朽ちていくだけで、いいと思った。

「……――ふぁ」

 ……ねよ。











 お題:猫・お祭り・椿

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