第七章 街へ案内
街へ行く当日。
堂々と三人で歩くわけにはいかないのでフードをかぶっていくことになった。
城下町へ続く門から人々が行き交う。私たちもその中に混じり歩く。
私が真ん中で、両脇にロイとゼロ。歩きながらゼロが説明をしてくれた。
にぎやかな町並み、さわやかな天気。魔の国と聞いて思い浮かぶ風景とまるで違う。
私がロイと話に夢中になるといつもそれをさえぎるようにゼロがいろいろ説明してくる。
まるで、私とロイの邪魔をしているよう。
何で邪魔するの?と思う。でもゼロはロイが来てから言動がおかしい・・きっとそのせいだと、勝手に思い込んでる自分もいる。心の中がモヤモヤしていると、ゼロが
「昼食は、このあたりの評判のいい店でいいか?」
ときいてくる。ゼロは次第に敬語を使わなくなった。
ロイも肯定の意味を含ませて微笑む。
店の名は、ダーマン・タルト。この店はタルトがおいしいらしいとゼロが言う。
店に入ると中はシンプルな構造で一つ一つ席が区切られている。
一番見晴らしのいい席に座ると、店員が注文を聞きにやってくる。
店員は男性で、愛想笑いもなしに
「ご注文は・・?」
ときいてくる。
私たちはそれぞれほしいものを頼んだ。しばらく沈黙が続く。
が、それほど待たずに注文した料理が運ばれてくる。
私たちは、不思議に思いながらも料理を口にした。
「おいしい・・」
つぶやくほどおいしい料理ばかりだった。しかし料理の味を楽しむ間もなく、急激な眠気に襲われた。
それはロイもゼロも同じようだった。
眠気に耐えられず、テーブルに突っ伏して、気を失った。
・
・ ・
意識を取り戻した場所は、ロイもゼロもいなかったが、代わりにさっきの店員がいた。
「あなたは!?・・っ!?」
叫び聞こうとしたが頭痛がして聞けなかった。
起き上がろうとしたが、手は縛られていて動けず頭痛がして体を支えれなかった。店員は、
「動くな。」
といった。私は、
「なんでこんなことを・・」
と、聞こうとしたが腕をつかまれ引き寄せられて続きをいえなかった。
「俺は・・お前が・・・」
そういいながら顔を近づけてきた。
・・な、何!?・・
もう駄目かと思ったそのとき、バン!と、ドアを蹴り飛ばした音がした。
店員は、
「!?」
驚いて振り向き私を放し扉のほうへ視線を向ける。そこは煙が舞っていて、人のシルエットが二人浮かんでいた。
・・誰?・・
そう思ったとき、ひゅっと一つシルエットが消えた。
・・え!?・・
声に出す間もなく、私は抱き上げられ体が浮いた。視界がぼやけてはいたが、抱き上げてくれたのは、ロイだと分かった。隣にはゼロがいた。
二人とも私を見た後、店員を怒気のこもった目でにらみつけた。
ゼロはともかくロイまで怒りをむき出していることに驚いた。ゼロが
「あの料理に眠り薬をいれたんだな・・目的は何だ?」
と言い、店員はそれには答えずじりじりと後ろに退く。
ゼロが一歩前に出たとき、店員は、窓から飛び降りた。追おうとするゼロにロイが
「深追いは危険だ。それよりユウナを・・。」
と、ゼロに叱咤し、私を下ろして手を縛っていた紐を解いてくれた。
ロイが私を支えてくれてようやくた立つことができた。が、しかし、激しい頭痛がして、頭を抱えた。
頭を抱える私を心配そうに声をかけてくれる。
大丈夫と言おうとしたとき、ふいに視界が歪んだ。私の体がガクッと崩れた。
「ユウナ!」
ロイが叫び支えてくれた。
その声を最後に私は気を失った。
このあと二人はユウナを城まで運びかえったことを記しておく。




