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第五章 婚姻の儀

 ユウナが魔の国に連れて行かれて二週間たった。

国と国との争いで両国とも痛手を受けた。

光の国より勝っていた魔の国もそうとうな痛手を受けたらしい。

光の国は、魔力こそ魔の国に劣ってはいたが、特殊な能力の持ち主の数は勝っていただろう。

それ故に痛手を受けたのだ。

争い後の修復やら何やらで婚姻の儀が先延ばしになっていたらしいと、ユウナがあとから聞いた。

そして、婚姻の儀の当日、ユウナはため息を朝からついていた。

その理由は婚姻の儀でゼロとキスしなければならないのと、それをロイに見られてしまうことだった。

ロイの国は、争いごとを好まないため、光の国と魔の国が和平を結ぶことを喜ぶだろう。

その証として神の国の王子のロイが従者とともにこの国に来るらしい。貢物を持って・・・。

そのことは、ロイからの手紙で分かった。


 私は、その日、憂鬱にながらも指定された時間に起きた。

部屋から出たら、朝食の時間だと言われ、ゼロに引っ張られて食事の場に連れて行かれた。

今日はなぜかゼロは機嫌がよかった。そのことを聞くと、

「・・別に・・」

と、とぼけていたが、体は正直でうずうずしていた。私はそれが不思議だった。

朝食が食べ終わると次は着替えに連れて行かれ、ドレスを着せられた。

ドレスは髪の色に合わせてか純白で、靴も白だった。いろいろ着飾りさせられた。ゼロは私の姿を見て

「・・・。」

と無言だったが、顔を赤くして私と目を合わせようとはしなかった。

ゼロの格好はいかにも王子様というような感じでそれが意外にも似合っていて笑いそうになった。

普段とのギャップが激しすぎたからかなのか、それともロイとは違う印象を持った人だからなのか、

あるいは、その両方なのか、私には判断がつかなかった。

ただ、これだけははっきりしていたことがある。それはいつもとは違う雰囲気を漂わせていることだけだった。

 光の国では魔の国のことについてこんなことが噂されていた。

一つ、魔力を己の私利私欲のためだけに使われているのではないかと。

二つ、傲慢でプライドが高く、自己中な人たちの集まりだと。

三つ、己のためなら手段を選ばないこと。

この三つの噂は私が連れて行かれ、聞けなくなるまで消えなかった。

そして、後の二つは当たっているだろうと言われていた。

それは、光の国と魔の国が対立した理由の一つだったらしいからだった。

そんな噂を聞きながらこの国へ来た私だが、このごろ噂が外れていると思うときがある。

ゼロは、あまりしゃべらないし、自己中心的な人ではないと思い始めていたからだった。

ゼロは、

「早く行くぞ」

といって、早歩きで歩き始めていた。

「早い」

といっても、ペースを落とそうとしない。

 

                 前言撤回


どうやらゼロは自分の思考の限界度に達していると周囲が見えていないようである。

私は、歩くのをやめて、いまだに早歩きを続けるゼロの背中を見つめ続けた。

ゼロは、私がついて来ないのにようやく気づいたのか振り返る。

「早い」

と、私は同じ言葉を繰り返す。ゼロは、ようやく理解したのか

「悪かった。」

と、謝った。

 このあと、婚姻の儀を行う会場に着き、婚姻の儀を行った。

ゼロと婚姻の言葉を言い、唇を互いに合わせた。

・・・ロイ以外ではじめて唇を合わせた人・・・

互いに唇を離し、ゼロが、

「この婚姻の儀のもと、国と国、人と人の争いをしないと、共に誓おう。」

と、婚姻の儀を見ていた者に言った。

わぁーと歓声が沸き起こる。


 これにて婚姻の儀は終わりを告げた。


  私は、ゼロの顔をまともに見れないなと思った。




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