第二十六章 ユウナのドレス
翌朝、ゼロは私の部屋に来た。
「お前、踊れるか?」
私の部屋に来て最初にいう言葉かこれはっ!
「は?」
私は聞き返した。
「だから踊れるかって聞いてんだよ。」
「一応踊れますけど・・・でも何で?」
「今夜、舞踏会がお前の光の国で行われるそうだ。俺は国務で忙しい。
だが、今夜は時間が空いている。ちょうどいいと思ってな。」
「・・・ゼロはわざわざ今夜の時間を空けたんですか?」
「うっ。それは・・・」
私の言葉にゼロは顔色を変えた。
「あなたならやりそうね。国務で忙しいならそちらにいそしめばいいのに。」
「確かにお前との時間を作るためだが、利益はそれだけじゃない。
光の国との交流を深めるためにでもある。まぁ、そうはいっても仮面舞踏会だからな。
正体を明かすことはできないが舞踏会の主催者には言うつもりだ。」
「主催者に明かしてしまうと、他の方々にばれてしまうのでは?」
「それは心配いらない。
主催者はばらそうとはしないさ。それに他の有名な貴族もこられるそうだからな。」
「有名なのね、その舞踏会は。」
「いいだろう?たまにはそういうことも。」
「まぁ、ゼロがそういうのならいいわ。光の国にも戻れてうれしいし。」
「そうか。じゃぁ、俺はこの辺で。
あ、そうそう。
俺がいろいろ手配してやったからそれが後から届くだろ。
6時に迎えに来るからそれまでには支度を終わらせろよ。じゃぁな。」
ゼロはそういって私の部屋から出た。
早口で言わなければならないことだけ言っといて即座に出て行ったところからすると
どうやら本当に忙しいらしい。
ゼロはそれだけ私に求めてるってことかしら。
こんなにも私はあなたに冷たくしてるのに。
ゼロがどうして私なんかにそこまでする理由が分からない。
私は心の中で呟いた。
昼になってゼロの言ったものが届いた。
そして私は届けられたものを侍従たちの手によって着飾られる。
届けられたもの・・・
それは純白のドレスとダイヤモンドのついたネックレスとそのほかたくさんな飾り物。
その届けられたものには全て共通点があった。
それは全て白にゆかりのあるものだった。
見るもの全てが白。
いやになるくらい周りが全て白で頭がおかしくなりそう。
おまけに仮面まで白。
こんなにも私の髪の色に合わせなくたっていいのに。
私の髪の色は白。白髪なの。
白髪って言うより銀髪に近いのだけど。
着飾られた私を見て侍従たちは
「なんとお美しいのでしょう。」
「ゼロ様がお選びになったのでしょうね。」
「ゼロ様はほんとに見る目がいいですわ。」
「ユウナ様は幸せですね。あんないい殿方の妻になられたのですから。」
と、私やゼロを褒め称えた。
ゼロはみんなに慕われているんだな。
「私・・似合ってるかしら・・」
思わず呟いた。
「それはもう。すごくお似合いですわ。神々しくて惚れ惚れしてしまいます。」
「自身をお持ちくださいませ。ユウナ様のお姿に誰もが魅了されますわ。
それは私たちが保証いたします。」
「そう?そこまで言われると恥ずかしいわね。」
侍従たちの言葉に私は頬をほんのり赤く染めた。
誰もが魅了されるって言われても・・困るわ、そんなの。
銃たちは私をほめた後、帰っていった。
一人残った私はドレスにしわができないよういすに腰掛ける。
なんか・・だるい。
銃たちがあーだとかコーダとかいろいろと動かされ着飾られたからだろうか。
それにしても重い。
何この飾り物の多さはっ。
髪を結う宝石で派手に飾る髪留め、私が動くたびにゆれるイヤリング、
ドレスを派手に飾る数々の宝石、ドレスに合わせた色の白いヒール、そのほかもろもろ。
見た人が魅了されるどころか逆に引くんじゃないかしら・・この装飾の多さに・・。
そう思っても仕方がないほど多かったのだ。
あぁ~。頭がおかしくなりそう。こんなものばかり見てると・・。
いや、もうおかしいかもしれない。
なんだか、だるいし、重いし、考えられないし。
こんな重いもので私は踊らなければならないんだろうか・・
私がはぁとため息をついた。
それと同時に部屋のドアが開けられた。
「おい、もう準備できたか。」
ゼロはそういって私に声をかけて部屋に入ってきた。
ゼロは私を見るなり硬直した。
「どうしたんですか・・?」
何で硬直するの?
やっぱり似合わなかったかしら。
「普段とのギャップがすごいな、と思ってさ。」
「やっぱり似合わないですよね・・」
私がゼロの言葉にそう呟くとゼロはあわてた。
「ち、違う。そ、その逆だ。お、俺が言いたいのは。
ユウナは普段こんなものを着ないから、いざ、それを着たユウナの姿を見ると、
あ、あまりにも似合ってて・・だからその驚かされたというか、なんと言うか・・・」
ゼロはあわてて言い直した。
「・・・。」
ゼロのあわてぶりに私が硬直する。
ゼロが言いたかったのはそっちのほう?
そんな似合うとかいわれるの困るんだけど・・
「じゃ、じゃぁ、いくか。そろそろ行かないと間に合わないからな。い、いくぞ。」
ゼロはそういって私の手を引っ張って部屋を出て馬車に乗り込む。
私はゼロに手を引っ張られついていく。
ぼんやりした頭では何も考えられなかった。
ただ、一つ考えられたのは
何でゼロの手がこんなにも熱いのだろうか?
ということだけだった。




