第二十章 ユウナ奪略策
ゼロは日中、国務に追われている。
休む時間なんてありはしない。
それは今の国王が病で伏せておられるからだった。
国王が病に伏せられる前は、ゼロに国務の仕事などそんな忙しくなるほど回ってはこなかった。
だから、国務の仕事を手際よくこなすことができない状況にあった。
手際よく国務をこなせない俺が悪いことだが、国務の仕事が回ってきてから、ユウナと合う時間が少なくなっていった。
ユウナは別にそんなことどうでもいいという表情をしているのが悲しくて仕方がないゼロだった。
早く仕事を終わらせようと、張り切るゼロだった。
今日、ユウナがロイの策によって奪われることも知らずに。
ユウナはその日、部屋で今、はまっている編み物をしていた。
ゼロにあげるためである。暇つぶしとも言うが。
ゼロはこれまでに私を何度も助けてくれた。
せめてものお礼である。
ユウナは暇つぶしに編み物、ゼロは忙しく国務。
ユウナを奪うにはちょうどいい日であった。
ユイは計画を実行した。誰にも見つからないように慎重にことを運んだ。
そして、理由をつけて従者とともに外出する。
夜
ゼロは自分の部屋に戻った。何かいい香りがする。
疲れを癒すような香りが部屋に充満していた。
ゼロは眠くなってきた。そして気絶するようにベットに倒れこんで寝た。
ユウナは、編み物をきりのいいところまでやって終わった。
ベットに寝に行こうとしたとき、窓からコンコンと音がした。
ユウナはぎょっとした。
この部屋は城の中。
城の中でもここの高さは低いほうだけど、地面からここまで、普通降りたら即死ぬような高さにある。
それ故にぎょっとした。
恐る恐る、窓を開くと、
「ユウナ、会いたかったよ。」
ロイがそういい、抱きしめてきた。
「え?」
何でこんなところに?だって、ロイは帰ったはずじゃないの?
私はロイがここにいることが信じられなかった。
「あいたかったよ。すぐに戻らなければならないことがあって、挨拶できなくなったんだけど・・。」
「そ、それをいいにきたの・・?」
私にはロイの行動が理解できなかった。
そこまでしてきてくれたことはすごくうれしいんだけど。
「いいや。ちがうよ。君を連れ戻しに来たのさ。」
「え?何で?ど、どうして?」
いきなり信じられないことを口にするロイ。
「それはね・・。その話の前に、ちょっとこれもってくれないかな。」
ロイがそういって、私に持たせたのは何か香りのする袋だった。いい香りがする。甘い香り、それは見るもの全てにひきつけられるそんな感じがする。
「つらいだろうけど・・。これを見てくれないかな。」
ロイは何か写真を渡した。そのとき、えもしない悪寒が体中をめぐった。
暗くて見えなかったから明かりをつけた。
写真に写っているのは私の髪の毛を持っているゼロだった。
「な、何これ?」
ユウナは信じられなかった。
「ゼロはね、君の能力を利用しようとたくらんでるんだよ。知っているでしょ?能力は、能力の持つ持ち主の細胞を媒介して手に入れられることを。でも今はそれを研究中だということ。
細胞は何でもいいんだよ、髪の毛一本でも・・。」
ロイは静かに言う。
「嘘よ・・ゼ、ゼロが・・信じられない。」
私は信じることができず、震える。
この写真を持ったとき感じた悪寒はこのことをいっていたんだ。
「・・でもこれが証拠。だから君を連れ戻しにきたんだよ。」
「で、でも、もし、私がここから姿をくらませたら・・。」
「大丈夫。僕がユウナを守るよ。だからついてきてはくれないかな?」
「ロ、ロイ、で、でも!・・信じられないよ・・ゼロがっ・・・・・・・んっ、んぅ」
ユウナは必死でロイにゼロがやってはいない、間違いだと何とか言おうとするが、ロイによって口をふさがれいえない。
「・・ん、んぅ・・んっ・・・はぁっ」
ロイのキスは強烈だった。頭ではもう何も考えられない。
ロイは唇を離し、
「ユウナ、僕は君が好きだ。ユウナは僕のこと、好き?」
そう問いかけてきた。
「私は・・ロイが・・好きだよ・・誰よりも・・。」
わたしは気づいたらそう口にしていた。
確かに好きではいるが、誰よりもなんて・・。
そのとき、
「んぅっ、ん、んんっ・・・・。」
ロイがまたキスをしてきた。
さっきよりも甘く深くなるキスに私は溺れた。
ロイが好き。ロイしかいない。ろい、ろいっ。
ロイへ向かう気持ちがあふれ出てきた。
ロイは唇を離した。
私は、意識はがもうろうとしてきて、ロイに言おうとした。
が、甘い香りとロイの視線が言わせてくれず、そのまま、意識を失った。
ロイは気を失ったユウナを抱いて、窓から飛び降り背中に翼を広げて飛んだ。
そして、ロイはユウナをつれて神の国に戻った。
ロイの言ったことには偽りがある言葉もあるとだけ述べておくことにする。




