第十八章 ロイの潔さ
ゼロはユウナを抱きしめている中、ロイについて考えていた。
・・・なぜあんなにあっさり国へ帰った?・・もっと反抗するかと思ったのだが。
ロイは素直に帰っていった。
それが不思議で仕方がなかった。あれほどユウナを思っているロイがこうも簡単に引き返した・・。
そこが今になって気になり始めた。
先に言うが、ロイとてユウナを簡単に手放すことなんてできるはずもなかったんだ。
ロイにとってあのときの場は不利だった。
ではなぜロイがゼロに従ったのか・・・・それは、ゼロがロイを呼び出す以前ロイのみにあることが起こったからだったのがきっかけだった。
ロイはその日も優雅にゼロの城で滞在を楽しんでいた。
ロイのお供としてロイの母国の城で仕える従者をつれてゼロの城へ『国と国の友好をを深める』を名目に訪れた。
ロイ自身それはただの口実にしか過ぎなかったが。
それは別の話で、その日以前からユウナとゼロの関係がロイにはとても気がかりだった。
ユウナはゼロのことを意識している風でもなかったが、ゼロはユウナを気にかけていたことはロイにも分かった。ゼロはやたらと自分の思いを表情を表に出しているとロイは気づいていた。
ユウナにゼロのことを聞いてみようとロイが思ったとき、ロイの従者が
「ロイ様へお手紙です。差出人はこちらにかかれておりますが・・・。」
といってロイに手紙を渡す。
「ありがとう。」
そういって受け取り差出人の名を読む。
・・
差出人の名は『ユイ』
その名にロイは心当たりなど何もなかった。あるはずもなかろう。
面識だってそんなにないのだから。
ロイは、この手紙の差出人はゼロの兄上であるゼリム殿のの婚約者だと思い当たった。
何だってそんな人が手紙など・・・
そう不思議に思いながら恐る恐る手紙の封を開いて読んだ。
して、その内容は・・
はじめまして、私ユイと申します。
手紙でのご挨拶をお許しください。
して、手紙をあなたに送った理由ですが、
それは私があなたと少しお話をしたいからなのです。
少しお時間をいただけないかしら。
私もいろいろ都合がございましてなかなか対面は難しいとは
存じますが、どうしてもあなたとお話がしたいのです。
あなたのほうから都合の良い時間をお知らせください。
してその方法ですが、私に仕えているものは皆、
青い鳥の文様が左胸のところにつけられているので、
その者に都合の良い時間の書かれているものを渡してください。
私もその者を通して都合の良い時間をお知らせしましょう。
尚、このことは他言されませぬようにお願いいたします。
私の一方的なお願いでご迷惑をおかけしました。
あなたと会う日が待ち遠しいです。 ユイ
という内容だった。
この内容を見て、ロイはユイ殿に会おうと、以降、手紙を送った。
ロイはその後、ユイと対面した。
そしてユイと話をした。
だが、ロイはユイの言葉に共感はできなかった。反対もしなかったが。ロイは、
「このことはゼロ殿には言いません。似たような感情を持っていますからね。その話、乗ろうと思ったとき、また、こちらから出向くことにいたしましょう。それでは、またいずれ。」
この言葉を最後に、ユイから去った。
そして、ゼロに追い出されるような形でロイは自分の母国に帰ってきた。
ユウナのことを諦めているわけではない。
だからこそ、また、ユイ殿に接触してみようと思うのであった。




