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出動、英国紳士!

 妙なことになったもんだ。

 薬の一件で村の様子は変わり、パレッタは魔法使いというより薬師みたいな仕事をしている。


 ところが、アレクのヤツが村人を遠ざけようとしたのだ。


「気安く近づくんじゃない」

「は、はい。済みません」

「そんな……。普通でいいですよ」

「ですが、パレッタ様」

「アレクは黙ってて!」


 結局、村民と仲良くしたいパレッタはアレクを追い出してしまった。

 それはいいのだが、なんで俺のところに来るかなあ。



 仕方なく、今はメカニック見習いである。


「そこでスパナ。違う! そんなにデケーのいらないだろ。ボルト良く見てみろ」

「は、はい。えーと、これだったかにゃ」


 だから、男のニャはいらねーんだって……



 平和な人間しかいなかった村に、ある日ガレージが突然出現したのだ。

 その後、パレッタがエルフだとわかり、アレクも猫獣人だと言う。


 最初はおっかなびっくりだった村民も、有益と分かれば馴染んでくる。


 馬が使えなくなったところで光治郎がトラックで作物を売りに行った。

 村の人たちの怪我や病気は元々パレッタの薬で助かっていたのだ。


 印象なんて暮らし次第でコントロール可能というと聞こえは悪いがな。



「光治郎様、アレクはうまくやってますか」

「ああ。あいつなりに頑張ってますよ」


 時々パレッタは様子を見にガレージにやってくる。

 鉄が苦手なエルフが、ご苦労なこった。


「今度は二台なんですね」

「ええ、やりたくてやってるわけではないんですがねー」



 そう、今ガレージには二台のリフトそれぞれに車が載っている。

 アレクが来ることになってから俺は神様に初心者向きの車をお願いした。



 ところが翌朝、ガレージには。


 モーリス・マイナー・トラベラー。古き良き英国紳士。

 そして、四代目スプリンタートレノ、いわゆるハチロクである。


 “新人教育もいいが、それだけじゃお前も暇じゃろう”


 神様がダッシュボードに置いた紙にはそんな一言が。


 いや、モーリス・マイナーはいいチョイスだよ。新人向きで。

 でも、パンダトレノなんてどーすんだよ。


「こんなもんレストアして、道路も舗装されていないこの異世界のどこの峠で走らすんだよぉ。だいたい、日本のメカニックにハチロク渡しときゃ満足すると思ってんじゃねーぞ」


 俺は思わず絶叫した。



 意外だったのはアレクがハチロクのレストアを希望してきたこと。


「こっちの方がカッコいいです。俺にやらしてください」

「無理だって。だいたいこれ直しても走らすとこないんだぞ」


 強情なヤツだ。

 逆らうつもりはなさそうだが、まだブツクサ言っている。


 木製製品が溢れているこの世界じゃ、鋼板製の車が先進的に見えるのもわか……いいこと思いついた!


「パレッタ様が鉄に近づけないことを知ってるよな」

「はい。それが何か」

「この車は何でできてる? この薄い鉄板を包んでいるこのフレームは何かなぁぁ」

「私がやります! 誠心誠意、この車のレストアに全力を尽くします」


 そう。モーリスマイナーは木製フレーム。

 パレッタだって、この車なら乗れるに違いない。


「ああ、俺が直した車にパレッタ様が!」

「まあ、頑張れや」


 態度が180度変わりやがった。

 フッ、ちょろい。そしてキモい。



 それからは順調。

 ハチロクはそっちのけで、モーリスマイナーはほぼ完成。


 あとは、完熟運転を試すのみ。


 そんな時、サティが駆け込んできたのだ。


「コージロー助けて! 町が火事なの」

「そんなこと言ったって、火を消せる車なんてねーぞ」

「いや、パレッタ様の魔法なら何とかできる」

「アレク、本当か」



 サティはアレクと共に、パレッタの家に走り出した。

 この車がこのタイミングでレストア済なのは天の配剤と言ったところか……


 だが、わからん。

 アレクには、ああは言ったが、あのエルフが本当にこの車に乗れるかは自信がないのだ。


「考えても仕方がないか」


 ちょうど向こうからサティとアレクがパレッタを連れて走ってくる。

 

 モーリスマイナーにガソリンをぶち込み、車のキーを回す。


「話はあとだ。すぐに車を出すぞ」


 躊躇しながらも乗り込むパレッタ。

 あとは天に任せてアクセルを踏み込むのみだ。


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