助っ人登場
ガレージの前にはズラッと並んだ王宮の要人たち。
パレッタが知らぬ間に親交を深めた町の人々もいる。
「それじゃあ、お世話になりました」
「うむ、気をつけていくのじゃぞ」
ついに今日、王都から村に帰るのだ。
オースティン・ミニを直し、陛下が購入した街道沿いの土地にガソリンスタンドを建て。
……まさか、陛下直々に見送りに来るとは。
手を振りながら、王都の門から出ていくモンデオLXとパンダ45。
ん? 大改造したオースティン・ミニはどうしたって?
それはすでにこの世にはない。
あれだけ苦労してパーツを揃え、フレームの調整、合わないパネルを溶接してまで頑張ったのに。
光治郎とアレクの改造延べ時間は300時間を超えた。
そして、それを村長に渡してから三日目。街道のカーブを曲がりきれず納屋に突っ込み大破。
「あれは、いい車だったんじゃがのぉ。まさか、あそこまでトルクがあるとは思わなんだ」
「だから、パワーが違う、って言ったじゃねーか」
散々、言いふくめておいたのにこれだもの。
流石に笑ったね。
怒ってたぞ。アレクは。
あいつ塗装全部やったのは初めてだったんだから。
「どうよ。パンダは」
「……悪くない。ずっと新しい車じゃしの」
まー涼しい顔でいけしゃーしゃーと。
村長には自制、って言葉を覚えて欲しいもんだ。
マジでいい歳なんだから。
そうこうしているうちに村が近づいてきた。
なんか変。ガレージの前に人が集まっている。
ピートがスパナを持って噛みつきそうな顔をしてるんだが。
「コージロー、大変だ。知らない奴が勝手にガレージに入り込んでるんだ」
「なんだと! えっ、ありゃあ、もしかして……浩史さんじゃないですか」
「社長!」
「へっ?」
ポカンとするピート。
その向こうにいるのは、元『三峰モータース』のベテラン社員鍵屋浩史だったのである。
「えーと、な。ピート。そいつは怪しいもんじゃない。いや、ちょっと怪しいか……」
「ひどいですよ。社長」
「よくわかんないですけど、知り合いなんですか?」
「そう言うことだ」
“助っ人”ときたか。神様もやってくれる。
これで、レストアできる車がグッと増える、ってもんである。
「しかし、どうやってここにきた」
「それが潰れた社屋を見に行って瓦礫に潰されまして……(神様にここにくるか打診させたんですよ)」
途中で小声になる浩史。
「(そう言うことか。それで上條と平山は?)」
「(あいつらは、次の職場見つけて頑張ってます。おやっさんは仕事辞めましたけど)」
どうやら他の社員たちは大丈夫のようで何よりだ。
「いつまでコソコソ話してるんですか」
「わ、悪い。ピート。つもる話もあったんでな」
ガレージの奥で当座のことを決める。
まず、住むところがない。2階には仮眠室はあるが、あそこにずっと、ってわけにもいかないし。
「ああ、それなら大丈夫です。神様が用意してくれたらしいですから」
「どこだそれは……」
ガチャリとドアを開けるとその向こうにあるのは、今までなかったゾーンである。
あのな、神様。勝手に人のガレージ広げてんじゃねーよ。
「それにこっちの部屋もあります」
「うっわぁ、なんだこの最新機械の山は」
「これも神様から。ネットは使えないが、車の修理で使うものでは苦労させるつもりはないから、って伝言です」
いや、嬉しいんだけどね。
これ使えるのは浩史だけだから。それより調子の悪い塗装室の換気扇直して欲しかったよ。
早速、パソコン立ち上げて何か入力してる。
「おー、神様すごいですね」
「どうした?」
「メールで最新のロムデータ送ってくれたんですよ。ハハ、フォルダの名前がまんま『神』です」
やはりこいつは頼りになる。
だが同時に光治郎には、アレクの「何言ってるかわかりません」の一言がわかったような気がした。
トントン
来客だ。さっき村長がこの後、歓迎会開くって言ってたけど。
ちょっと早い。
「誰」
「パレッタです」
「うっわ。誰です。この超美人」
「いろいろ世話になってる謎のエルフの偉い人。パレッタさんだよ」
浩史のこんな顔を見たことない。
どういうこと?
「パレッタさん。独身ですか。そうなら結婚して下さい」
「へ?」
「何言ってんだ。お前ごときがパレッタ様に似合うわけないにゃ」
「こ、困ります」
やばい。
アレクの「にゃ」が久々に出るぐらいやばい。
「あいつ、何企んでるんだ? って、考えるだけ無駄か。聞いても答えねぇんだよなあ」
光治郎はガレージを閉めながらため息をついた。
凄い助っ人は、波乱も一緒に連れてきたのである。




