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車と威厳と限られた時間

 幸次郎たちは謁見を終えた後、王都に構えた臨時ガレージに戻ってきた。

 そして、全員にドワーフと対決することになったことを告げた。


「大変なことになりましたですにゃ」

「そうかな。俺はワクワクしてきた。ちゃんと手伝うからさ」

「油断できませんね。どんな車にするんです。まだ決めてないんですか?」


 全員乗り気である。

 気後れしている場合ではなさそうだ。


「腹案はある。問題は入手できるかどうかなんだが……ところで、ドワーフってのはやはりすごいのか」

「ええ、彼らは鉄を鍛えることに対しては、恐ろしいまでの能力を発揮します。さらに、人族では考えつきもしないアイデアもあって……」

「それだけじゃないんですよ。剛腕だけじゃなく、手先の器用さも尋常じゃなくてですね……」


 変わるがわるドワーフの手腕を語るのを聞いていると、やはり舐めてかかれる相手ではないらしい。



「わかった。とにかく、極めつけの一台を注文することにする。ただ、あれを直すとなると気がかりが一つだけあるんだが」

「何、弱気になってんですか。早く自動車を召喚する儀式をやって下さいよ」

「そ、そうだな」


 筆をとり、神様に要求書を “お供え” する。

 だが、光治郎はその要求がかなり厳しいものであることを自覚していた。




 翌日の朝、車は来なかった。だが、午後にはなんとかするという。

 神様も頑張ってくれているらしい。なんとかなるのか?




 そこに。


 ププーッ

 キーーィ、ブルン


 小型車が止まった。ガレージを開けなくても誰だかわかる。

 そのクラクションとエンジン音で。


「応援に来たぞい」

「よくここまで来ましたね」


 やっぱりか。

 外に停まっているのはオースティンミニ。

 運転しているのは村長と……げっ、なんでアレクまでついてきてんだよ。


「苦労したわい。ようやく辿り着いたのじゃ」

「そりゃ、この車で来りゃ、そうなりますよ。それにしてもどうしてコイツまで」

「なんとなく、な。それに途中で何かあった時もいないよりマシじゃろ」

「酷いですにゃ、村長。何度オイル漏れを直したと思ってるんですか」


 ここまでたどり着くための修理要員としてか、それなら納得だ。

 それと何度もいうが、アレク。男のニャはいらない。



 わいわいと全員で昼飯を外に食べに行った後、ガレージに戻る。



 すると、四軸リフトに鎮座するのは、銀に輝く巨体。

 まさに望んでいた車である。


「まずいな、やっぱりこうなったか」


 思い通りに入手できたと言うのに光治郎の顔色は冴えなかった。

 悪い予感が的中していたのである。


「何が不満なんですか。凄い車じゃないですか。なんかいかにも王様が乗る車って感じがします」

「俺もそう思う。ちょっと汚いけど、直した後、ピカピカに磨けばすっごくかっこいい一台になると思う」


 サティとピートはお気楽にその威厳ある外観を褒めちぎっている。

 だが、光治郎は口をへの字に曲げたまま、腕を組んだままだ。


 それを不思議そうに見つめるパレッタとエミリア。


「どうした。私たちも手伝うぞ」

「ええ、この車なら宝飾品の類でグレードアップも可能だと思います」



 そう言ってくれるのはありがたいが、そんなんじゃないんだ。 


 ロールスロイス シルバークラウドIII


 確かにロールスの中でも名車中の名車だ。

 エンジンも一流、内装も一流。だが、問題はボディパネルの状態である。


「こいつぁ、アレクを連れてきた村長には感謝しなくちゃいけねーな」

「ああ、もちろん、やりますよ」

「俺もです」

「ああ、ピート、アレク。頼りにしてるぞ。何晩、徹夜することになるかわからないからな」

「ど、どうしてですか。三週間もあるんですよ」


 知らないのは無理はない。

 ボディを全部地金まで戻し、下地処理をした後、塗装する回数は――


「なんでそんな顔してるんですか。コージロー。こんな車、ちょっとデカいだけじゃないですか、いつもより少し手間がかかるだけ……」

「違う。少しじゃない。ロールスの塗装は七層なんだ!」

「ま、マジですかぁ」


 この厚い塗装を七回。

 塗って乾かして磨いて……それを繰り返すのに三週間という時間は決して十分とは言えない。


 その上、相手の出方を予想して、どんな手でこようと負けない車を作らなければならないのだ。



 呆然と立ち尽くす三人、そこにパレッタたちが声をかける。


「私たちもお手伝いしない?」

「ああ、私が消防署を運営できているのもコージロー殿のおかげだ。その恩返しができると言うなら、どんな苦労も厭うつもりはない。貴殿が外観だけで手一杯なら、内装は我らに任せてもらおう。魔物の素材ならこの王都で揃わないものはない。パレッタ、付き合ってくれるか」

「もちろんです。それに、ドワーフに勝つには、魔法的な防御力も必要になると思います。魔道具店ものぞいてみます」

「パレッタ、エミリア。ありがとう。助かる……内装は頼んだぞ」


 二人はうなづき、街へと飛び出していった。

 チーム三峰モータース全員での戦いが今始まったのである。

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