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謁見

 王宮の中をずんずんと進んでいくと、デカい扉の前に辿りついた。


「ガルドレイン陛下。コージロー殿がお見えになりました」


 整列した衛兵たちが姿勢を正す。

 装備している鎧がガチャりと音を立てて、光治郎は一瞬怯む。


「いいか。くれぐれも陛下に失礼のないように」

「わあってるよ。任せとけ」

「……滅多なことを申して首がとんでも知らんからな。開扉!」


 二人がかりでドアが開けられていく。

 光治郎、パレッタ、エミリアの三名は事前に言われた通り王の前5mまで進み、ひざまずいた。



「よく参った。お前がコージローだな」

「はっ」

「車はどうした。あの貴族の馬車にも負けぬ威容を誇る車両は」


 どうして知って……あっ! あの時城下で馬車から見てたのは陛下だったのか。

 ここは当たり障りのない答えで行くか。


「あの車は陛下にお見せするほどのものではありません。それに、王城内の見事な石畳。間違って痛めることになっては、と本日は徒歩で参りました」

「うむ、それなら仕方がない。残念なことではあるがの」


 周りのものに合図をすると、一枚の羊皮紙とメダルが陛下の元に届けられる。


「ミツミネコージロー。お主の働きのおかげでラクタルの町とその近隣の村、さらにはライル山地の山火事までが抑えられていると聞く。その偉業に対し、金一封と王国褒章を贈るものとする」

「ははーっ」


 周りから前へ出ろと促され、神妙に前に出ると陛下自らメダルを首にかけてくれた。

 しかし、ラクタルの町にライル山地ね。名前知らんかったわ。


「ありがとうございます」

「他の二名、パレッタとエミリア。そち達についてもあとで褒美を出す。それでは……」


 そこまで言ったところで、陛下の声を遮る者がいた。

 これ、不敬にならないのかな。


「なんだ、バンゲルドか。何か言いたいことがあるのか」

「はい。その者たちが偉業を成し遂げたとは事実でしょう。ですが、王国の許可もなく近隣の町や村から金銭を徴収し、さらには自動車なる珍妙な乗り物を普及し、人々を混乱させ、あまつさえドワーフたちの生活まで脅かした罪は軽くはないと小官は考えます」

「それは真か」


 今にも飛び出しそうなエミリアを抑える。

 ここは正直ベースが必要だ。


「一部事実であり、一部はいちゃもんの類だと思いますね」

「い、いちゃもんだと!」

「ええ、近隣の町と村から金を集めたのは消防署の維持のためです。こちらが暴利をとっているわけではないという証拠をお持ちしました」


 用意してきた書類をエミリアが陛下の側近に渡す。

 それを覗き込む陛下とバンゲルド。その隣にいる従者は……ドワーフか。

 こんなところにまで連れ出してくるのか。


「なるほど。確かにこれは必要経費と呼んでいいだろう」

「で、ですが陛下。ここまで王家に無断で組織を立ち上げた罪は……」

「黙れ! バンゲルド」


 陛下の一喝に引き下がるが、その視線は刺すように光治郎に据えられたまま。

 それが気にならないわけじゃないが、大勢はこちらに有利。これで罰せられる恐れはないだろう。


 だが。


「この件についてはコージローたちに分がある。しかし、ドワーフたちはこれについてなんと言っておるのだ」

「はい。あれが普及した場合、多くの者が職にあぶれることを危惧しております」

「そうなのか? コージロー」

「問題ないと思いますがねぇ。俺……じゃなかった私がレストアした車は今のところ五台だけ。そのうち二台が私の手元にあります。一台は消防車、一台は体調不良の馬の代わりに使っているだけですからね。個人として所有しているのは村長が買ってくれた一台だけです」


 ここまでは想定通り。

 一応、もう一段用意はしているが。


 気になるのは、恐らくドワーフである従者が何事かバンゲルドの耳元で囁いていることだ。


「そう、申しておるが」

「で、ですが。その一台は近隣を走り回り、町長や村長を何人も丸め込んでいると聞きますぞ。しかもあんな下賤な外見の代物を」


 ずいぶん、調べてやがる。

 まあ、あの村長やることが派手だからなぁ。


「ふむ。それについても問題はないとは思うが、それでは大臣の顔が立たぬであろう」

「そこでコージロー」

「はい」

「ワシが乗るに値する車を一台用意するが良い。その出来次第で決めるとしよう。コージローの作ったものが下賎なものとは最初から思ってはおらん。だが、民草に対するある程度の威厳は必要となる。それが証明されたら、今後自動車の普及を許そう。大臣もそれでいいか」

「仰せのままに」


 やっぱりこうなったか。

 結局はモノで勝負。


 すでに頭には献上するにふさわしい車がある。


 それは、ロールスロイス シルバークラウドIII

 まさに王のための車である。


 だが、嫌な予感がする。


「陛下。我らにも挽回の機会を頂けますまいか」

「ふむ。そうだな、大臣。このままでは目覚めが悪かろう。お主もドワーフに命じて一台馬車を用意させよ。それを光治郎のものと比べて雌雄を結するものとする」


 うがあぁぁ。コンペだと!

 こいつは想定外だ。


 問題は、あの車がこの異世界の価値観に合致するかどうか。

 勝つためには、エミリアとパレッタに相談する必要がありそうだ。


 こりゃ、忙しくなるな。

 少なくとも、あらん限りのオプションてんこ盛りになるだろう。

 部品リスト見て神様が卒倒しなきゃいいが。

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