出撃! 魔改造TLF16
できた。
とにかくなんだかわからないが、マギルスのレストアは完了。
消防関係についちゃ全く専門外なので、図面を取り寄せた後はアレクとパレッタに丸投げである。
俺の担当はエンジンと足回り。
正直、ディーゼルの修理は久しぶりだし、これだけデカブツのメンテだからマジで大変だった。
まあ、神様はもっと大変だったらしいがな。
送付された部品についてきた手紙には……
“オーバーホールキットはまだいいんだよ。問題はディスコンの部品で、一応ボッシュの汎用品を送るから(うんぬんかんぬん)”
途中で読むのやめた。
こんなもんとりあえず、バラして構造調べて調子を見たら、あとは出たとこ勝負!
「で、実際どうなんだよ。ちゃんとコイツで火事は消せそうなのか?」
「はい。ホース内部をシーサーペントの腸で強化、放水ポンプのプロペラはミスリル製に換装。それから……」
「ああ、もういいよ。後で聞く」
どうせ、聞いたって全然わかんないからな。
とりあえず、俺のオーダーは “水場がないところでも放水できるように魔法でなんとかしてくれ” ってことだけ。
「それじゃあ、試運転行ってみるか」
「はい。じゃあ、西にある里山に行きましょう」
「なんで、そんなとこに?」
「一昨日から山火事が広がっててなんとかして欲しいと」
うわぁ、先に言えや。
つーか、そんな火事消えんのか?
慌ててキーを回すとガガガガと特有な音がする。
ウィーン……………………
「あれっ? まずったか」
ガラガラガラガラ
焦らせんなよ。
ちゃんとベンチで回してテストはしたんだが、積んでからはこれが初めてだからな。
「よーし、ピートもアレクも乗り込め。後の連中は」
「現地に向かってます。町長を始め、パレッタと水魔法使いのエミリア様も一緒です」
最後の一人、誰だそれ。
グォォォ
バキバキバキ
とても消防車が通るような道じゃない。
トルクが凄えから多少木が邪魔でもなぎ倒して進めるがな。
はっきり言って自然破壊もいいところ。
ごめんよ。でも、火消さないとお前らも全部燃えちまうんでな。
見えた。
立ち上る煙。山頂付近を中心に火が広がっている。
無理だ。
俺はエンジンを止めた。
「どうしたんです。早く行かないと」
「届くわけねーだろ。低山とはいえ、水が500mも届くわけがねぇ」
「届きます! 試算では800m以上」
大丈夫か。こいつの頭。
消防車ってのはな。一般的なビルの上層になんとか届く程度なんだよ。
あそこまで飛ばすにゃ高層ビル何個分必要なんだ?
「行きましょう。あれなら十分に」
「水源は? この辺にゃ、川も沼もねーんだぞ」
「魔石があります」
マジか。マジなのか。
「わかった。行こう」
どうやらこのTLF16は、元の消火能力とは似ても似つかない魔改造を受けたらしい。
あとは、あのパレッタの力を信用するしかない。
「来たぞー」
「デケェ、うぉぉお」
「これならやってくれるんじゃないか」
麓に集まっている数十人から歓声があがる。
ほとんどがこの辺の集落に暮らしている連中だろうが、町長やパレッタの姿も見える。
「どいて!」
「うわっ」
車を止めると知らない魔法使いが乗り込んできた。
操作パネルをいきなりパチパチと切り替えると、サイドのドアが開き、待機していた何人かが、ホースを取り出した。
こいつらどこでこんな訓練してたんだ?
「まずは精霊を鎮める。魔法科学霊水射出!」
「はい」
シュワァァァァ
空に霧のように水が撒き挙げられた。
火事にシャワーかけてどうすんだよ!
ダメだ。こんなんで山火事が消えるはずが……おっ、おおおお。
吸い寄せられるように霧状の不思議な放水が山に向かっていく。
「凄え、火の勢いが収まっていく」
「あと、少しだ……もう、終わりなのか」
消火までは至らず、水の勢いが衰えていく。
「ホース破損。予備は」
「ありません」
「クソッ、こっちはこれまでか」
やはり、無理だったんだよ。
消防車一台で山火事を消すなんて。
周りの期待が失望のため息に変わっていく。
まさにその時。
「第二弾、消火放水開始」
ゴォォォォォオオ
予備はなかったんじゃ!?
いや、違う。
さっきより格段にぶっといホースが轟音を立てていた。
マギルスの巨体が震える。
ありえない大量の水が、燃え盛る山に襲いかかっていった。




