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ボス戦後の一服は最高

 

 襲い来るゴブリンの群れ。


 ハクアはその場から逃げもせずに迎え撃つ。


 パンッ。


 パンッ。


 とまるで手拍子をするような軽快な音。

 だが実際に目の前で起きている光景はそんな生易しいものではなかった。


 ハクアがバールを一つ振る度にゴブリンが爆ぜ、血飛沫が舞う

 突然消えた同胞を前にしても、ゴブリンたちは怯むことなくハクアに襲いかかる

 その度にパンッと音が響き、ゴブリンの数が減る。


 その様子にハクアは首を傾げていた。

 何かが気になるようだ。


 俺にはただゴブリンが爆ぜてるようにしか見えない。


 明確な異変が現れた始めたのは、ゴブリンの数が半分を下回ったタイミングだった。

 ハクアがバールで殴ると、血飛沫の他に小さな肉片が舞っていた。


 それはゴブリンの数が減るに従い、徐々に大きさをましていき。

 残り数体という頃には、ゴブリンの体の大半が残るようになっていた。


「――っ、クロエ。お前の補助魔法でハクアを助けられないか?!」

「んー、ハーちゃんなら大丈夫だと思うけど?」

「大丈夫って……そうは言ってもだな」


 そうこうしているうちに、最後の一匹になってしまった。

 ハクアは最後の一匹にバールで叩くと、ゴブリンはきりもみ回転したのち地面へ落下。


 体の原型を留めたまま――


 そのゴブリンを見下ろしながら、ハクアは何度か頷きクロエに告げた。


「クロ。力加減は〝コンッ〟くらいよ」

「えー、そんな弱く殴らないといけないの?」

「ええ、弱い魔物は軽く殴るだけて塵になるから不便ね」

「……何を言ってるんだ?」


 二人の言ってる意味がよく理解できない。力加減はコンッてなに? なにかの隠語か?


「魔物の原型を残すための力加減を探っていたんです。魔物の素材や魔石は冒険者の収入の大部分を占めているようなので、そのためです」

「あ、ああ〜。だから粉微塵にならない力加減で叩いてたってことか?」

「はい。ただ……その加減を知るまでにかなりの数をダメにしてしまいました。申し訳ありません」

「いや大丈夫だ。それより助かったよ。ハクアってかなり強いんだな」

「ええまぁそれなり程度には。クロ、貴女の力もちゃんと見せつけなさい」


 そう言うとタバコに火をつけた。


 それと同時に、ゴブリンが現れた方角から、緑色の巨体が姿を表す。


 ソレはゴブリンよりも遥かに大きく、俺の身長さえも頭一つ分超えていた。

 どこで手に入れたのか鎧を着込み、その上からなにかの骨をアクセサリーのように身につけていた。


 首の後ろがゾワッとするのを感じた。


 本能的に感じる。こいつには勝てない――と。


「クロ。あれは貴女が殺りなさい」

「うい――《保護(プロテクト)》」


 クロエはいつの間にか酒瓶を手に持ち、何かを唱えると酒瓶が一度淡く光ると、すぐに収まった。


「主様。失礼します――ふーー」


 俺の傍に寄ったハクアは一息でタバコを吸いきると、俺にタバコの煙を吹きかけた。

 すると――俺の周りにドーム型の煙の幕が出来上がった。


「その中にいれば安全ですので、外に出ないでくださいね」

「お、おうわかった。ていうかこれなんだ?」

「即席の結界です。もう少しちゃんとしたのもできますが――どうします?」

「……いや、これで大丈夫だ。ありがとう」


 ハクアは一つ頷くと、そのまま次のタバコに火をつけた。

 どうやらクロエの戦いに手出しはしないようだ。

 ということは俺も黙って見てるしかないか。この結界の外に出るなって話だし。



 ゴブリンが咆哮をあげる。


 その声の大きさは大気を震わせ、周囲の木々すら押しのけるように感じた。

 体にビリビリとした衝撃が伝わる。


 ……っく、やっぱり逃げたほうがいいんじゃないか? そう思った。


 クロエとゴブリンが同時に駆け出す。


 ゴブリンは手に持つ巨大な剣をクロエに向けて振り下ろす。


「――コンッ!」


 クロエは酒瓶を雑に振り上げた。

 ただそれだけの動作で巨大な剣は砕け散り――


「コンッ!」


 クロエは跳躍するとゴブリンの頭に酒瓶を叩きつけた。

 鈍い音と共にゴブリンの頭はひしゃげ、体の中へと陥没――そのままゴブリンの生命活動は停止した。


「――勝利のポーズ!!」


 クロエは手に待つ酒瓶を頭上へ放り投げる。

 すると酒瓶は粉微塵に砕け散り、紙吹雪のようにキラキラと舞い落ち、その中で謎のポーズをキメた。


 …………


 …………この二人は改めてヤバいと実感した。



 その後は、クロエに労いの意味を込めてビールを渡すと、とても喜んでいた。


 ハクアにも新しいタバコをと思ったが、まだ残っているようなので後で渡すことにした。



 薬草を採取してただけなんだが……


 俺たちの周りにはゴブリンの死体が散乱しており、採取した薬草の山にも返り血が降り注いでいた。


「……ハァ」


 思わず溜息が零れる。


 今日の成果が……これ買い取ってくれるのかな……


 そんな俺の様子を見てハクアが言った。


「主様。なぜ落ち込んでるのですか?」

「なぜって……ほら、薬草がゴブリンの血で汚れてるだろ? もしかしたら買い取って貰えない可能性があるじゃないか」

「……主様。先ほども言いましたが、冒険者の収入の大半は魔物の素材と魔石ですよ?」

「さっき聞いたな。それがどうしたんだ?」

「あのゴブリンの死体をギルドに売れば、それなりのお金になりますよ?」

「……え、あれ売れるの?」


 魔物の素材と言うからには、毛皮とかそういうのを想像していた。

 だからあのゴブリンが売れるなんて考えが俺の頭の中にはなかった。


 売れるなら話が変わる。

 変わるが……どうやって持ち帰えろうか。

 小さいゴブリンなら俺が背負えば問題ない。

 だがデカいゴブリンは二人に担いで貰うことになる。


 そうなると薬草は放置するしかないか。


「ハクア、クロエ。あのデカいゴブリンを持ち上げられるか?」

「――ああ、そういうことですか。手で持ち帰る必要はありませんよ」


 そう言ってハクアはデカいゴブリンに近付き、足で体を押すと――何もない空間へと体が入っていくように見えた。


「……え、なにそれ」

「《収納》という魔法です。別の次元に物を保存できる魔法ですね。クロエも使えますので、何か持ち運びたい時は私かクロエに仰ってください」

「僕の方がハーちゃんより容量大きいから大物は任せてね〜」

「そういうことです」

「そ、そうか……魔法って便利だな」


 改めて魔法の便利さに面食らった。

 この魔法があれば物流に革命が起こせる……トラックを使う必要性がなくなるな。何せ商品を積み込んだ人を送るだけでいいのだから。

 ダメだダメだ……すぐ商売に直結してしまう。

 もう経営側じゃないんだから、自分たちの為だけに有効活用しよう。


「では町へ戻りましょうか」

「帰ったら飲み放題〜!!」

「覚えてたか……」


 俺たちは町へ向かって歩き出した。

バール:天界のなんかすごい鉱石で作られたバール。とても硬い。どんな釘も一発で抜ける。


酒瓶:その辺に売っている酒瓶。耐久性はガラス瓶と同じ。地球産の酒瓶だと魔力の通りが良い。

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