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商談後は呑みたくなる

倒したので再開します


 胡椒を入れ終わったので二人に報酬を渡し、出来上がった小瓶を見つめながら思う。


 さすがに50個は作りすぎたか?

 正直相手がどれくらいの量を欲しているのかわからないので、渡す時は小出しにしよう。

 それはそれとして、これがいくらになるのか楽しみではある。


 準備も終わったので、残りの時間は何しようか。

 ハクアとクロエは各々好きに過ごしているので、俺も好きに過ごさせてもらおう。


 街に出てみるのも悪くないが、さすがに一人で出歩くのは危険か?

 ハクアかクロエについてきてもらうのもありだが、やめておこう。

 すでに二人ともパジャマに着替えているし――あれ、いつ着替えたんだ?

 思い返してみれば、いつの間にか服が変わっていることが何度かあったな……魔法でどうにかしてるんだろう。


 俺は深く突っ込む必要はないと判断し、ベッドへ横になる。


 久しぶりに野宿じゃなく、屋根のある部屋で寝れるんだ。

 今はのんびりくつろぐとしよう。


 ◇


 夜が明け、次の日になった。

 準備を済ませた俺たちは、前日受付嬢から聞いていた商人の住所へと向かった。


 到着した店は、ありふれた外見をしていた。

 言い方は悪いが、面白みのない外見で独創性に欠ける店舗だった。

 とりあえず中に入ってみることにした。


 店内もこれまた普通だ。

 取り扱っている商品も珍しいと感じるものがない。


 うーん。もしかして香辛料を目玉にするつもりだろうか……だとしたら随分と浅はかというかなんというか。

 冒険者に仕入れを頼むなんて、安定した仕入れルートを確保できるとは思えんのだけどなあ。

 まあその辺は何か考えがあるのだろう。


 俺が店内を物色していると、一人の人物が声をかけに来た。


「いらっしゃいませ。何をお探しですかな?」


 恰幅のいい男が現れた。

 口髭を蓄え、頭は禿げあがっている。


「冒険者ギルドの依頼で参りました。なんでも調味料を探していると伺っておりますが」

「おお! 冒険者の方でしたか。それではこちらへどうぞ――」


 そう言って店主は店の奥へと俺たちを案内した。


 店の奥の部屋に通された俺たち――というか俺は、向かい合ったソファーに腰掛けた。

 なぜかハクアとクロエは座らずにソファーの後ろに立っている。

 恐らく護衛という立ち位置になるつもりなのだろう。


 席に座り、俺が先に口を開く。

 

「依頼では調味料とありましたが……具体的にはどういったものをお求めですか?」

「そうですな……この辺りでは採れない物だとありがたいですね」


 その言葉を聞いて、ハクアに目配せする。

 ハクアが《収納》から胡椒の入った小瓶を取り出し、テーブルへと置く。


 その瓶を依頼人の男は身を乗り出して凝視した。


「こ、これは……胡椒ですかな? それにしてはキメ細かい……一体どこでこれほどのものを」

「たまたま伝手がありましてね。これくらいの量ですと、いかほど必要ですかね?」

「それは……まだ量を用意できるということですか?」

「ええまあ」


 俺がそう答えると、商人は顔を明るくした。


「そうですか! ではあるだけ買い取らせていただきたい!」


 ……あるだけか。そうなるとだ、今1個出しているから残り49個を買い取るということだな。

 いや、やめておこう。無難に追加で4個出して様子を見るとしよう。


 俺はハクアに、瓶を4個出す様に指示した。

 するとすぐに頭の中に声が響いた。


(全てお出ししなくていいのですか?)

(ああ、とりあえずはこれで様子見だ。更に必要ならその都度売ればいい)

(承知しました)


 テーブルの上に追加で4個の瓶が並べられた。

 その光景に商人は目に見えて色めき立っているのがわかる。


 どうやらこの世界では胡椒は貴重な代物のようだ。

 やはりいっぺんに出さなくてよかったな。


 商人は俺に一言断りを入れてから、瓶を手に取り隅々まで品定めを行った。

 5本とも全て確認し終わると商人は佇まいを直し、口を開いた。


「確認致しました。こちら全てお売り頂けるということでよろしいですかな?」

「ええもちろん。お売りする金額に関しては――ハクア頼む」

「承知致しました。こちらの品に関してですが――」


 その後、ハクアの交渉により胡椒は結構な値段で売れた。

 袋いっぱいの銀貨と数枚の金貨。


 うーむ。

 金や銀が多いとやはり気持ちが高まる。

 元手はゼロでこれだ。正直、笑いが止まらん。この場では笑わないがな……  

 さて、商談も無事に終わったことだし、なんで調味料を求めていたのか雑談がてら聞いてみよう。


「そういえば、何故今回のような依頼を出されたのですか?」

「……実は、近々領主様にお会いできる機会がありまして。その手土産になればと考えていたのです」

「なるほど。それで貴重な調味料を――と?」

「はい。この街の領主様は美食を好む方でして、貴金属よりもこういった物の方が喜ばれるのですよ」


 なるほどね、たしかにそういう人間はいる。

 生前の取引先の社長とかでも、希少な酒を渡すと喜ばれたりしたな。

 それならば――


「ハクア。コンソメ出してくれ」

「……承知しました。どうぞ」


 ハクアは《収納》からコンソメのキューブが入った小瓶を取り出し、俺に渡した。


「これも何かの縁ということで、お近付きの印にどうぞ」


 瓶の蓋を開け、中から剥き出しのコンソメキューブを二欠片取り出し、商人の目の前に差し出す。


「これは……なんですかな? 何やらいい匂いがしますな」

「コレも調味料の一つです。これをお湯に溶かし、野菜と……そうですね。ウィンナーも一緒に煮込むと美味しいスープができますよ」

「ほ、ほほぉ〜。興味深い。これはいくらですかな?」

「いえいえ、お代は結構です。領主様への貢ぎ物として、ご一考頂ければと、そういう思惑です」

「なるほど。では遠慮なく頂きましょう」


 商人は俺の手からコンソメキューブ受け取ると、近くにあった空の瓶に移し替えた。


 よしよし。これでコネができる可能性ができた。

 俺のこの行動はお近付きの印ではなく、完全に打算によるものである。

 美食を謳っているとしても、現代社会の化学調味料ゴリゴリの旨味を凝縮させたような代物にどんな反応を示すのだろうか。

 やはり権力者への印象は良くしておかないとな。


 ただでさえ問題児か二人もいるんだ。

 後ろ盾はいくらあっても困らんよ……


 俺は席を立ち、商人へ別れの言葉を告げると宿へ戻ることにした。

 

タイトルを変えようかなーとか考えてます。

シンプルに「異世界ドタバタニコチン道酒〜 」 とか

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「酒とタバコと男と女」にしよう(提案
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