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ランクアップは煙と共に

 

 手の空いている受付嬢にギルドカードを提示しながら声をかける。


「ちょっといいかい? さっき買取の担当から受付に顔を出すように言われたんだが――」

「はい。伺っております。お話がありますのでお時間よろしいでしょうか?」

「急ぎの用はないから大丈夫だ」

「ありがとうございます。では端的に申し上げます。ナガオカ、ハクア、クロエの三名のランクをGからEに昇格する必要があると、報告が上がってきております」


 GからEに昇格……一気に二つもランクが上がるのか。

 心当たりは――最初の町で倒したジェネラルゴブリンの功績だろうな。


「なので、本日よりEランクになりますがよろしいですか?」

「あー、そうだな……二人はどう思う?」

「特に問題はありませんので、よろしいかと」

「おけまる水産〜」

「返事くらいちゃんとしてくれよ……それで進めてくれ」


 俺は受付嬢に昇格する意志を伝えた。


「承知しました。では一度皆さんのギルドカードをお預かり致します」

「わかった。ほら二人もカードを出してくれ」


 ハクアとクロエからカードを受け取り、まとめて受付嬢に渡す。

 ちなみにカードには名前と一緒にデカデカとGと書かれていたので、それをEに変えるんだと予想した。


 受付嬢は何やらレバーのついた箱を取り出すと、蓋を開けカードを入れ。

 ガシャンとレバーを手前に倒すと、カードのGという文字がEに変わっていた。


 何だかよくわからない機械で文字を書き換えたな。

 この世界の活版印刷機か? にしては小さいから、似た別の何かだろうな。


 受付嬢は残りの二枚も同じ処理を施すと、カードを俺たちに返却した。


「処理は以上で終了となります。他にご不明な点はごさいますか?」

「そうだな……EランクとやらはGランクとどう違うんだ?」

「まずは、あちらをご覧下さい」


 そう言って受付嬢はホワイトボードくらいの掲示板を手で指し示した。


「あちらがEランク用の掲示板となります。その隣の小さい板がGランクです。見てわかる通り、依頼の量が圧倒的に違うんです」


 Eランクの掲示板の横には、四分の一くらいの板に数枚の羊皮紙が貼り付けられていた。


 前の町でもそうだったが、Gランクというのは本当に仕事がないんだな……


「Gランクは基本的に、全てのギルドで、同じ依頼内容となっております。Fランクから指定した魔物の討伐が含まれますので、GとFは駆け出しの冒険者を死なせないようにする為の登竜門と思っていただいて結構です」

「なるほどね……俺らはそういうのが必要ないって判断された感じかな?」

「そのように伺っております。先程の買取での魔物の量といい……個人的にはDかCランクでも問題ないと思いますので、頑張ってくださいね」

「ありがとう。これで呼び出しは終わり、でいいんだよな?」

「はい。では、よい旅路を」


 受付嬢がペコリと頭を下げた。

 その様子に俺は少し心が安らいだ。


 感じの良い娘だな。

 うちの会社の受付嬢に欲しいくらいだ。

 いや、うちの会社の受付嬢もそれなりに優秀だったな。


 俺は昔のことを思い出し、すぐに頭を切り替えた。


「さて、宿を探す前に少し掲示板を見たいんだが、二人はどうする?」

「どうするも何も、基本的には主様について行きますよ?」

「そうそう。僕らが離れてる間に死なれちゃ困るしね〜」

「街の中何だからそんな簡単に死ぬわけないだろうに……まあいい。ほら掲示板を見に行くぞ」

「はい」「は〜い」


 とりあえず前回の町では、少し離れただけで男たちから声をかけられていたからな。なるべく二人から離れないようにしよう。

 その証拠に、遠巻きに俺らをチラチラ見ている輩が何人かいる。

 もしそうなったら、またクロエの大声で撃退してもいいが……あの受付嬢に迷惑をかけるのは忍びない。 

 穏便にやり過ごせるのならそれに越したことはない。


 俺は二人の後ろに立つ形で、掲示板に張り出された依頼の数々を確認した。


 色々あるが……基本的には魔物の討伐か素材の採取が大半だ。

 他の依頼は――おや?


 俺は一枚の羊皮紙に目が止まった。

 そこにはこう書かれていた。


 『求む! 希少な調味料!!』


 その下には『注:塩以外の調味料のみ』との注意書きが書かれていた。



 ふむ。塩以外の調味料か……


 俺は思案した。


 《無限嗜好品供給むげんしこうひんきょうきゅう》を使えばこの依頼は簡単に達成出来る。

 塩以外の調味料という指定もあるので、恐らく胡椒や香辛料でいいはずだ。

 だが問題もある。

 何故調味料を求めているのか、その理由が書かれていない。

 受付嬢に聞けば詳しく知ることができるだろうか……よし、この世界での調味料がどれくらいの立ち位置なのか試してみるか。


 掲示板から羊皮紙を外し、先程の受付嬢の所へと向かった。



 ◇


 受付嬢に詳しい話を聞いたところ、この依頼を出した人物はこの街に住む商人ということがわかった。

 特に悪い噂もない、平凡な商人で時折このような依頼を出しているそうだ。


 受付嬢の話を聞き、俺はこの依頼を受けることに決めた。

 たまたま調味料を持っていたので、それを売って今後の資金にする。ということにした。


 実際に商人に見せるのは胡椒だけにした。

 細かく砕かれた物よりも、粗めの方がいいだろう。とハクアが言ったのでそうすることに。

 それに別の容器にも移す必要があるので、宿を探しながら適当な容器を買うことにした。


 受付嬢に礼を言い、俺たちは冒険者ギルドを後にした。


 ◇


 陽もすっかり暮れ、グレードとしては中くらいの宿を確保した俺たちは、さっそく内職作業を開始した。

 内職作業と言っても、俺が出した胡椒を別の容器に移し替えるだけだ。


 俺が《無限嗜好品供給むげんしこうひんきょうきゅう》で出した胡椒は、スーパーなどで売っているような、詰め替え用の袋に入った状態で出てくるからだ。

 さすがに日本語が書かれた袋のまま渡すのはまずい。

 なのでこの世界で売られていた、小さい入れ物に移し替える。

 とりあえず50個ほど作る予定だが、はたしてこんなに必要だろうか。

 そんなことを思いながら、俺は二人に指示を出した。


「俺は20個で、二人は15個がノルマだ。タバコも酒もこれが終わるまでなしだと思え。では作業開始」


 ブーブー言う二人を無視して俺は自分の分の作業を開始した。

別で書いてる「異世界転移は草原スタート」の2巻の書籍化作業があるので更新が少し遅くなります。

タバコと煙をふかせながら待っててください!

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― 新着の感想 ―
電子タバコが吸いたくなったら本体ごと出せたりするのかな 出せたからってどうなるもんでもないけど
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