新たな街はお酒と共に
門でギルドカードを提示すると、すんなり街の中へ入ることができた。
大きな門を潜り抜けると、そこはまさに中世のような景色が広がっていた。
木造の建物はどれも二階建て以上あり、隣の家と密集している。
大きな通りの両脇は建物が敷き詰められ、城壁に囲まれた限られた敷地内でこれでもかと乱雑に建物がそびえ立っている。
そして街を行く人々にも変化があった。
人間の方が多いが、明らかに動物の耳や尻尾の生えた人間がいたり、身長が2メートルを超えるような男や女。
その逆にもあり、子供と同じ身長にも関わらず立派な髭を蓄えた男。
肌の色や髪の色といったものとは違う、明確な種としての違い。
俺は初めて目にする亜人種というものに度肝を抜かされた。
魔法や魔物もそうだが、どれも映画やテレビの中だけの存在だったものがこうして目の前にいる。
思わず街を行く人たちを目で追ってしまう。
「主様」
「ん? なんだ?」
「田舎者みたいですよ」
「酷い言い草だな……いや、ある意味で俺たちは田舎者なのか?」
「え……一緒にしないでほしいんだけど……」
あんな何もない空間に住んでたコイツラも田舎者だろうに……俺はこの街よりも発展したの都会出身なので田舎者ではない。
そのことを二人に丁寧に伝えると。
「ハァァァアア⁈ 僕らの世界の方が上に決まってるでしょうが!!」
「主様とはいえ、さすがに今の発言は見過ごせませんよ?」
「あの白い空間に何があるっていうんだ? 俺の地元の方が発展してるぞ?」
「……吐いた唾は飲みこめませんよ?」
「いくら危害は加えられないとはいえ、やりようはいくらでもあるんだよ?」
二人から闘気の様なモノが立ち上り始めた。
なんだなんだ。二人はもしかしてその事を気にしていたのか? ……仕方ないから、大人である俺が譲歩してやるか。
「わかったわかった。お前らの世界の方が上。それでいいな? はい。この話は終わり!」
「適当に話題を締めようとしてます?」
「僕たちは納得してないよ~?」
「ほれ、タバコと酒だ」
「「わ~い」」
俺は《無限嗜好品供給》を発動しタバコと酒を放り投げた。
ハクアとクロエはすぐさま反応し、それぞれの品物をキャッチ。
直ぐにタバコに火をつけ、酒瓶の蓋を開けた。
「……フ~。これでチャラになったとは思わないでくださいね」
「ングング――ぷはっ。ほんとほんと。僕らはそんなチョロくないよ!」
そう言いながらも二人はそのまま歩き出した。
二人はああ言っているが、チョロいな……とはいえこれはあくまでも最終手段だ。
頻繁に使えばすぐに慣れてしまう。
コイツラを上手く運用するにはタバコと酒の供給をある程度コントロールする必要がある。
……二人があえてそうしている場合もあるが、それはそれで構わない。気長に付き合っていこう。
俺は二人の後を追うために歩き出した。
街に着いて最初にするのは……まずは冒険者ギルドへ行きたいな。二人がここに来るまでに殺した魔物を売り払わなければ。
ほんと、色んな魔物を殺したよな…………狼に似た魔物や、猪、鳥、牛。
ほんとに色々な種類が俺たちを襲ってきた。
襲って来たが、ハクアとクロエがその全てを一蹴してくれた。
ハクアが力加減をミスして粉々になる魔物も多数いたが、逆にクロエは酒瓶が当たった箇所だけがゴッソリ消え去っていた。
ダメージが全身に均等に分散するハクアと違い、クロエはダメージが一点に集中するようだ。
そのせいで、クロエの仕留めた魔物はみんな頭がない。体が残ってればいい……かな? その分値引きされたら、次からは手加減してもらおう。
そんなことを考えていると――
「主様。遅いですよ」
「ほらほら早く〜」
「――わかったよ」
それなりに距離の開いてしまった二人との距離を縮めるために、少し小走りで追いかけた。
◇
街の中心部にほど近い場所に、冒険者ギルドの建物を見つけた。
造りは最初の町の物と似ているが、建物の大きさが三倍くらい違った。
正面に添えられている魔物の骨も、更にデカかった。
どうやら街の大きさに比例して建物もデカくなるみたいだ。
俺たちは建物の扉を開け、中へ入った。
中の造りは最初の街とほぼ同じだが、広さが全然違うし受付も複数ある。
さっそく魔物を買い取ってくれる受付に声をかけた。
「魔物を買い取ってもらいたいんだが」
「買取ですね――あの、手ぶらの様に見えますが」
「ちょっと待ってくれ。ハクア、クロエ。出してくれ」
俺が合図をすると、ハクアが《収納》から次々と魔物を取り出す。
改めて見ると凄い数だな……
みるみるうちに買取用の机が埋まっていき、魔物の死体で溢れかえった。
「……ちょ、ちょっと待ってください! ストップ! ストーップ!!」
受付嬢の言葉に、ハクアは魔物を取り出す手を止めた。
「なによ」
「ア、〈収納魔法〉をお持ちだったんですね……それならそうと言って下さい。量が多いので、順番に出してください」
そんな受付嬢の言葉に、俺はクロエに問い掛けた。
「〈収納魔法〉ってなんだ?」
「あー、僕たちが使ってる《収納》のことだね。こっちの世界では〈収納魔法〉っていうみたい」
「呼び方は統一されてないんだな……」
「効果は同じだけどね~。主様の世界でも同じ意味だけど呼び名が違うってのはあるでしょ?」
なるほど、たしかにそういったものは存在する。
それならあんまり気にする必要もないのかな。
受付嬢が大量の魔物の死骸を前に悪戦苦闘している。
それもそうだ。本来なら二~三体の死骸を置く台の上に、山盛りで積まれているんだ。
誰だってそうなる。
更に質の悪いことに、ハクアはまだ半分も出してないうえに、まだクロエが控えている。
俺は受付嬢が狼狽えている光景を、ただ黙ってみているしかなかった。
◇
「……ハァハァ。で、では買い取り額をお伝えします――が、再度確認なのでふが、全て当ギルドに売却でよろしいんですね?」
「ああ。それで頼む」
「わっかりましたぁ! ではコチラが買い取り代金になりますのでご確認ください!」
そう言って受付嬢は、バスケットボールほどの袋を俺に差し出した。
今更だが紙幣が硬貨だけだからかさばるな……
「悪いハクア、確認してくれ」
俺は片手では持つことの出来ない重さの袋をハクアに手渡し、確認を頼んだ。
「仕方ないですね……ふむふむ。問題ないかと」
「そうか、ありがとう。君もすまないな、面倒をかけた」
「い、いえいえ。コレも仕事ですから……あっ、そうだ! 買取が終わり次第、あちらの受付に来てほしいそうですよ?」
「受付に? わかった、ありがとう」
俺たちは言われた通りに別の受付に向かった。
次は何が起こるやら……




