神殿炎上で酒が美味い
ゴオオオッと燃える神殿。
うん。
まあね、確かに殺れと言ったのは俺だ。
だからってやり方というものがあると思うんだ俺は。
開幕ハクアが煙を吹きかける様に炎を吐き出し、クロエが風を送り更なる延焼を加速させた。
「燃えろ燃えろ~アハハハハハハハ!!」
「ふう……まあ燃える姿はキレイね」
その光景に男たちは腰を抜かしたようで、「あわあわ」言いながらその場でオロオロしていた。
そして――
「ぎえええええええ! あつ、あつ、い! ばわおがおあがぐぁ」
自称神とやらは何か喚きながら神殿から飛び出してきた。
ブヨブヨとした体は所々焼けており、仄かに香ばしい匂いが周囲に立ち込めた。
なんだか食欲をそそる匂いだが、こんな物体を食べる気にはならないな。
今のうちに問いただしておこう
「おい。お前は本当に神なのか?」
「――ひ、ひぇ。なん、なんなんだ、おまえらは」
「質問に答えなさい」
ハクアがバールで自称神様を軽く小突く。
「ぐべええええええ」
そんな軽い一撃も自称神からしたら大層な一撃のようだ。
「へいへ~い。神様ちゃ~ん飲んでる~? 宴は始まったばかりだよ~?」
「ひ、ひいいいいいいい!」
「――ふー。まったくあなたの住処の煙のせいで煙たいですね。どうしてくれるの?」
「そ、それ、はわれのせいで、は――ぶべええええ!」
ハクアのイチャモンに口答えした自称神がバールで殴り飛ばれる。
ひでえな……ヤの付く自由業みたいな追い込みだ。コイツラ本当に天使か?
俺が殺れと言った手前、やり過ぎだと止めるのもな……
「な、な、何やってんだお前らあぁぁ」
リーダー格の男が覇気のない声で叫んだ。
その声も自称神を痛めつける二人の天使の耳には届かず、虚しく辺りに響き渡った。
俺はリーダー格の男に近寄り告げる。
「連れてくる相手を間違えたな。どういうつもりでここに連れてきたのか、俺に聞かせて貰えないか?」
「そ、それは……」
どういうつもりも何も、さっき俺らのことを生贄にするとか言ってたし、それ以上の理由なんてなさそうだが……一応念の為だ。念の為な。
「あ、あの子に頼まれたんだ。代わりの生贄を用意してくれって……」
「…………悪いことは言わん。その女はやめとけ」
「はあ?! 何でだよ!」
「赤の他人を平気で殺すように指示する女だぞ? 何かあったら次はお前の番だ。私のために死んでね?って感じでな」
「あの子はそんな人間じゃない! お前らを生贄にするって決めた時も、あの子は泣きながら俺に感謝してたんだぞ!」
……うーん。アホすぎて話にならん。
絶対嘘泣きだろそれ。
赤の他人を生贄にして、なんでお前に感謝するんだよ逆だろ。絶対ヤバいやつじゃん。
この男には何を言っても無駄だな。
俺はまだ何か言いたそうな男を無視して二人に歩み寄る。
「あ……が、ぐぎ…………」
いつの間にか自称神が黒焦げになっていた。
「もうええでしょう」
俺は思わず止めに入った。
まさかこのセリフを言う機会が来るとは……今はそんなことどうでもいいか。
「えーっと、今はどういう状況だ?」
「まだ体の表面を焼いただけですね」
「中はウルトラレアだよ〜」
「わかった。まだ生きてるってことでいいんだな」
二人は頷く。
とりあえず燃えてる神殿をどうにかしてもらおう。
木造だからかよく燃えているし、周りの森に延焼するとまずいからな。
「ハクア。とりあえず火を消してくれないか? 森に燃え移るとまずい」
「一応対策はしてありますが、気になるのでしたら消しますね」
ハクアがタバコの煙を燃えている神殿に吹きかけると、みるみるうちに鎮火していった。
「神殿の周りの空気を遮断致しましたので、すぐに鎮火するかと」
「……ありがとう」
サラッととんでもないことを言ったな。
煙を吹きかけたってことは、生き物相手にもそれが使えるってことだよな。
本当に天使か?
などと考えていると、黒焦げの自称神が声をあげる。
「お、まえらは、いったいなんなんだ……」
「神を語るゴミに捧げられる生贄よ?」
「僕らがお前みたいなのに使えるわけないじゃんね~」
自称神をボールのように交互に蹴って転がしている二人に、俺は言った。
「お前ら。ご苦労だった。報酬のタバコと酒だ、受け取れ」
「気合入れて燃やした甲斐があったというものですね」
「フゥ~!! お酒だ~!」
自称神から即座に離れてタバコと酒を俺から奪い取った二人は、早速自分の時間を楽しみだした。
二人が離れた自称神は、黒焦げの体をビクつかせながら、安堵していた。
「話し。出来るか?」
「ひっ、あ、は、はいいぃぃ」
「あの二人に怯えるのはわかるが、なんで俺にも怯えてるんだ?」
「あ、あのばけもの、を、したがえているにんげん、ですので……」
俺があの二人を従えてるって? 冗談キツイな。
冗談ではないか……なんで俺はあの二人の保護者を任されてるんだろう。
とりあえず訂正しておこう。
「別に俺は従えてないぞ。アイツらが勝手について来ているだけだからな」
「そ、そうなのですか……?」
「違うよー! 僕らはこの主様の忠実な僕だよー!!」
「そうね。ふぅー、私とクロの二人を従えることが出来るのはこの方だけよ」
酒を片手にクロエが否定し、タバコを吹かしたハクアが肯定する。
話がややこしくなるから、もうそのままでもいいか。
俺は考える事を放棄した。
「で、お前が生贄を求めている理由はなんだ? あと、お前は本当に神なのか?」
「う、そ、それは……」
「主様」
「なんだ?」
「そいつは神ではなく、魔族です」
魔族……そうか、コイツは魔族だったのか。
…………魔族ってなんだ? たぶん悪魔とか、そんな感じの種族なのだろうか。
というかこの世界には魔物とかいう生き物の他に、魔族というよくわからんのもいるのか。
今度ハクアにこの世界に住んでいる生き物のことを聞いてみよう。
俺が首を捻っていると、ハクアが解説を始めた。
「主様。この世界には人間族と、亜人族、そして魔族が生息しています」
「へえ、って事は俺は人間族で……ハクアとクロエは何になるんだ?」
「私たちは亜人。というくくりになりますね。因みに魔族は人に近い見た目をした者から、醜悪な見た目をした者まで割と幅広く存在します」
「ふーん。見分ける方法はあるのか?」
「魔族は血が青いという特徴がございます。その者も流れている血が青いので、魔族で間違いないかと」
「僕が鑑定したから間違いないよ~」
なるほどね~。コイツは神ではなく、神を語った魔族ってことか。
……だから何?って感じだ。
生贄を求めるのはどうかと思うが、何か理由があるのかもしれない。
俺は黒焦げの魔族に問いただした。
「で、結局お前の目的は何なんだ? 生贄が必要な何かがあるのか?」
「に、にんげんの、にくはおいしいので」
「ハクア、クロエ。殺れ――」
「あいあいさー」
クロエが酒瓶で魔族を殴り付けると、青い血をリーダー格の男に巻き散らかし、そのまま潰れて物言わぬ肉塊へと変化した。
「……魔族ってこんなんばっかりなのか?」
「いえ? 人に近い見た目のはそうでもないですが、まあピンキリと思っていただければ大丈夫です」
「そうか……というか、神を殺しちゃったな」
「問題ないですよ。この程度で神を名乗るなんぞ身の程を知るべきですから」
……意外と神を語ったことにたいして怒っているのかな?
一応コイツラは神に使える天使だ。
そういう気持ちが少なからずあるのかもしれない。
俺はリーダー格の男に向かって言った。
「おい。お前らの崇める神とやらは死んだが、どうする? まだ生贄が必要か?」
「ひぃぃぃ。な、ないです! どうか俺だけでも助けてください――!!」
終始清々しいまでのカスだなコイツ。
俺は酒瓶を握り締め、男に詰め寄ろうとしたクロエの肩を抑えた。
「やめなさい。とりあえず問題は解決したんだ。村に戻るぞ」
「……はーい」
「主様は優しいですね」
「今は結論を下さないってだけだよ」
この男の処遇は村に戻ってからだ。
必要なら……俺たちが手を汚す必要もないか。
村の老人たちに期待しよう。
俺たちは男たちを引き連れ、村へ帰ることにした。
この世界の人種一覧
人間:やたら数だけは多い種族。ポンポン生まれるのでそれに比例してポンポン死ぬ。
亜人:人間種以外の言葉が話せる種族全般。エルフとか獣人とか
魔族:人に近い見た目をしている者から化け物みたいな者まで多種、特徴は角が生えており、血が青い。血が青ければ概ね魔族のくくり。




