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悪ぁ  作者: 10777
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: ディアイゼ_20113620_1_v2

ディアイゼ : いつ来ても――飛行島に吹く風は優しいな。

キャトラ : 入ってくるとこからやり直し。

アイリス : キャトラ……!?

ディアイゼ : 何か非礼をしただろうか?

キャトラ : ひとんち来たらまずはあいさつ!礼儀を差し置いてシリアスな登場キメようったって、そうは問屋がおろさないわ!

ディアイゼ : 確かにその通りだ……すまない。親しき仲にも、だな。

アイリス : キャトラがシリアスに厳しくてすみません……

ディアイゼ : 謝るのは己の方だ。やり直させてもらうよ。こんにちは、お邪魔しま――

キャトラ : んじゃ一緒に遊びましょ。はやくはやくはやくはやく!!

ガラティナ : (いや礼儀は!!)

ディアイゼ : よし付き合おう。何をして遊ぶ?

ガラティナ : (おじさんもヌルっと受け入れないでよ!)

アイリス : ガラティナさんもいたんですね。こんにちは♪

ガラティナ : (そりゃいるよ。おじさんと私、一心同体なんだし……)

ディアイゼ : すまないガラティナ。この身体、一刻も早く君に返してやりたいのだが……

キャトラ : たしかガラティナはカナブ……終焉の大魔王に敗北して、生命を落としかけてたのよね……

ディアイゼ : ああ。そして偶然通りがかった己はこの身を引き換えとする魔法で彼女を救おうとしたのだが――己は、魔法が不得手だった。

結果、彼女の生命をどうにか繋ぎ止めることはできたものの……己の魂はこうして彼女の身体と一体化してしまった。

キャトラ : そうしてアンタたちはカナブ……終焉の大魔王を倒し、そしていつか元の身体に戻るため旅を続けてるのよね……

アイリス : キャトラ……!

ガラティナ : (ちょい出しカナブンで遊ぶのやめぇ~……)

ディアイゼ : そういうわけで日々励んでいるよ。<太陽と蛇の民の里>の一件では、コルネやルグノスたちの心強さもさることながら、ガラティナの知性と高潔さが事件を解決に導いたんだ。

キャトラ : へぇ~。やるじゃん。

ガラティナ : (めぇっへっへぇ~……それほどでもぉ~♪)

ディアイゼ : 体力に乏しかったこの身体も、この通り少しずつたくましく――

ガラティナ : (あ~ちょっとおじさん!?太もものベルトみちみちいってる!ちぎれちゃうから緩めてぇ!)

ディアイゼ : ふむ、どう緩めるんだったか……?確かこう――

ガラティナ : (めぇ~~~!? ちぎれたぁ!!せっかく新しい服なのに~!!おじさんのばかっ! 雑っ!!)

(あ~も~……やっぱ一心同体って不便すぎぃ……)

ディアイゼ : す、すまない……

アイリス : ま、まあまあ……私が直しますから!

キャトラ : 女の子の服は、おじさんにとっては繊細よねぇ……

: ディアイゼ_20113620_2_v2

ガラティナ : え、嘘……

私、本当に――元に戻れるのっ!?

ディアイゼ : (う……)

ここは――

ガラティナ : (あ、ごめんおじさん。起こしちゃった?)

クロード : ……む、人格が交代したのか?なるほど、その肉体の主[動:・]権は、本来の持ち主であるミス・ガラティナではなくディアイゼ氏にあるのだな。ふむ、興味深い――

ガラティナ : (ちょっと聞いて聞いておじさん!クロードさんってすっごく物知りでさ、そんでいろいろ教えてくれたんだ……)

(私ね――元に戻れるんだってっ!!!)

ディアイゼ : ……元に、戻れる……?

それは……本当なのか?

クロード : 大体の話は聞かせてもらった。俺は仕事があるのでもう飛行島を発つから、続きは協力者に頼んでおこう。明日になったら、このメモに書かれた先を訪ねるといい。

魔法も筋肉も、全ては厳然としたロジックにもとづいている。正しい手順さえ踏めば君は必ず元に戻れるはずだ。

ガラティナ : (本当にありがとう、クロードさん!)

(嘘嘘嘘~……ホント?これホント? もう一生このまんまだと思ってたのに!!)

ディアイゼ : …………

ガラティナ : (? おじさん?どしたの、黙っちゃって)

ディアイゼ : ん? ああ、いや……なんでもない……

ガラティナ : (そ? ならいいけど)

(私、一生このままなんて絶対絶対絶~っ対イヤなんだからっ!!)

ディアイゼ : ……っ! そ、そうか……

ガラティナ : (ちょっと大変かもだけどがんばるぞぉ~……!!)

(あ、もちろんおじさんもちゃ~んと手伝ってよねっ♪元はといえば、私がこうなったのおじさんのせいなんだからっ!)

ディアイゼ : ――無論だ。全ての事態は己の未熟が招いたこと。

君が元に戻るためなら、己は――どんな犠牲すらも厭わない。

ガラティナ : (めへへ、よろしいっ♪一緒にがんばろー!!)

ディアイゼ : ――ああ。牢獄に囚われた君の運命、必ず解き放ってみせる。

アイリス : ディアイゼさん……なんだか真剣な顔してるね。どうしたんだろう?

キャトラ : どうせいつものシリアスでしょ。

アイリス : そんな文法ないよ……

: ディアイゼ_20113620_3_v2

ディアイゼ : 一人目の協力者の部屋はここだな。

ガラティナ : (ごめんくださーい!クロードさんの紹介で来ました!)

エディ : ハッハー! クロードから話は聞いてるぜブラザー&シスター!!

オレはエディ!オレなんかを頼ってくれてサイコーご機嫌ハッピーだぜ!

ガラティナ : (こちらこそ! 今日はよろしくお願いしまーすっ!!)

エディ : 言っておくけど、オレの試練は焼き立てのホットチリチキンよりも熱くて厳しいぜ……?

ディアイゼ : 構わない。どんな過酷な試練だろうと、己は乗り越えてみせる。

いざ――全力で臨ませてもらおう!

エディ : OKブラザー!!んじゃ――ミュージックスタート!

ディアイゼ : ……? みゅーじっく……?

エディ : YEAH! YEAHWOH! WOH!

ディアイゼ : い、いえいいえい……!!ふわ、ふわ……!!

エディ : よーしスマイルは保ったまま今度はガルーダのポーズだぜ!足を大きく開いて~!!

ディアイゼ : く、くぅぅ……!!こ、股関節がぁ……!!

ガラティナ : (ちょっとおじさぁん……まじめにやってよー)

ディアイゼ : そ、そうは言うが……君の身体は柔軟性に欠ける……これは……かなり辛いぞ……!

ガラティナ : (仕方ないじゃぁん。私、身体固いし?)

(私は痛いのヤだから、おじさんが代わりになってくれてめっちゃ助かる~♪)

ディアイゼ : と言うか、これは一体……?己は何をやらされている……!?

ガラティナ : (ヨガだって)

ディアイゼ : 世が……? よくわからないが、こ、これで本当に……君は元に戻れるのか……!?

ガラティナ : (クロードさんも言ってたでしょ?魔法も筋肉もすべてはロジック!一見、無関係なようでも、あらゆる要素は相関してるのっ!)

エディ : なめたら駄目だぜブラザー?ヨガは言うなればボディとハートを調和させるスペシャルハッピーな魔法さ!!

極めれば火を吹いたり瞬間移動だってできちまうぜ!

ディアイゼ : そうなのか!? ならば君の身体を元に戻せるというのもたしかに頷けるな……!!

エディ : さあ、次は大きくのけぞって両手を床につけるぜ!?カモーン!!

ディアイゼ : ぬ、ぬにゅうううう……!!こ、この姿勢……殺人的だ……!!

ガラティナ : (が~んばれ、が~んばれ、お~じ~さ~ん♡あと十秒~♪)

ディアイゼ : この程度の責め苦など――君の未来を思えばぬるま湯も同然!うぉぉおおお……!!

キャトラ : おじさんがシリアスヨガしてるわ。

アイリス : そんなヨガないよ……

: ディアイゼ_20113620_4_v2

ディアイゼ : はぁ、はぁ……次の協力者はここか……

ガラティナ : (ごめんくださぁ~い!)

クルーシャ : ててててーい。いらっしゃいませ!

塩エステの店――<エクソビューティーサロン>飛行島出張店オーナー兼エクソシストのクルーシャです!

ガラティナ : (いやエステとエクソシストの肩書きが並ぶことある!?)

ディアイゼ : かつて旅の中で出会ったエクソシストは、人に憑いた<魔>を祓う力を持っていた。

……納得だ。君にとってみれば、こんな身体になってしまった原因は己だからな……

ガラティナ : (そうだよ?だからちょっとぐらいガマンしてよね!)

クルーシャ : クロードさんの紹介ですよね?それではサービス価格で提供させていただきます~。

さっそく施術を始めるので、こちらに横になってくださいね!

ディアイゼ : ああ、覚悟はできている。

己はどうなっても構わない――どうか彼女を元に戻してやってほしい。

クルーシャ : おまかせくださ~い♪

ディアイゼ : お、おぅ……ぬふぅ~ん……

ガラティナ : (ちょっとおじさん!?変な声出さないでよ~!!)

ディアイゼ : そ、そうは言っても……くっ!こ、これはぁぁ……おほぅ……

クルーシャ : あら太ももカッチカチですね~。

ディアイゼ : あっ!? ちょっ……おっ……ふぉ……おおお~……

ガラティナ : (普通エステでこんなんならなくないっ!?ってかそんなキツイなら私と代わってよぉ!!)

ディアイゼ : それはできない……これは己が受けるべき試練だ……!

ガラティナ : (ただの塩エステじゃん!!)

クルーシャ : 次は内側いきますね~。頑固な老廃物に聖なる光を!ててててーい!!

ディアイゼ : へっ? あっ、ちょ……そ、そこは駄目だ……!!まだ心の準備が――

ふっ、ふぉおおおお~!?や、やめっ……!!ぬふぅうううう~~~……!!

ガラティナ : (人集まってきてるから変な声出すのやめぇぇ~~!!)

キャトラ : おじさんがシリアスエステしてるわ。

アイリス : 言うほどシリアスじゃないよ……

: ディアイゼ_20113620_5_v2

ディアイゼ : …………

キャトラ : おじさん~? もうご飯の時間よ。

ディアイゼ : ……ああ、すまない。ガラティナが疲れて寝てしまったから、起こしたくなくてな。

キャトラ : そういえばここ数日、アンタたち二人ともなんかワチャワチャしてるわよね?

なんかあったの?

ディアイゼ : ……実はな、ガラティナが元に戻れるかもしれないんだ。

アイリス : 元に、っていうのはもしかして……

キャトラ : おじさんと一心同体になっちゃう前の状態に、ってこと?

ディアイゼ : ああ。こうしてこの身体に己の魂が入り込んでしまったせいで、彼女には長らく不便を強いてきた。

だから、『元に戻れる』と心から喜んでいるガラティナを見るのが……嬉しくてな。

アイリス : でも最近のディアイゼさん、元気がないように見えますよ……

ディアイゼ : ……! そんなことは……

キャトラ : あるわよ。

ホントはさびしいんでしょ?

ディアイゼ : ……君たちのような聡い子たちに、隠し事はできないな。

この身体をちゃんと彼女に返してやりたいという気持ちに、一点の偽りも曇りもない。

だが、その一方で……名残惜しいと感じている自分もいるんだ。情けない。

アイリス : そんなことありませんよ……あんなに仲良しだったじゃないですか。

キャトラ : ……おじさんはたしか、ガラティナと出会うまでずっと独りで生きてきたのよね?

ディアイゼ : そうだよ。己には――故郷も、仲間も、家族もなかった。だからせめてそれを大切にしている人々を守ろうと勇者になった。

そんな己にとって……文字通りの<一心同体>の日々は悩みと、苦労と、罪悪感の連続だったが――

それ以上に――満ち足りていたよ。

キャトラ : じゃあ、素直に『寂しい』って伝えればいいじゃない?

ディアイゼ : ……そういうわけには……

アイリス : ディアイゼさん……

: ディアイゼ_20113620_6_v2

ディアイゼ : ……ありがとう。君の放つ光は木漏れ日のように温かいな。

キャトラ : ねぇディアイゼ?大切なひとの気持ちを尊重するのはとっても大事だけれど――

大切なひとに自分の気持ちをぶつけるのも、おんなじくらい大事だと思うの。

ディアイゼ : 己の気持ち――

キャトラ : ディアイゼにとって、ガラティナはなんなの?

ディアイゼ : ……それは……終焉の大魔王を討つという宿命に囚われた哀れな少女で……己が残りの人生を賭して救わねばならない存在で……

……いや、違う。彼女は――

彼女は――己の大切な、相棒だ。

キャトラ : なら、どんなに言いにくいことでもまずはちゃんと伝えなくっちゃ。

なんでも言い合えるからこその<相棒>でしょ!

アイリス : 結果がどうなるにせよ……一度、本心をガラティナさんに伝えてみませんか?

ディアイゼさんが後悔を抱えたまま元に戻ってしまったら……彼女はきっと傷つくと思います……

ディアイゼ : ……ああ。ありがとう、皆。

けれど、伝えないよ。

キャトラ : なんで?

ディアイゼ : おじさんが若者の足を引っ張り、生き方を縛ってはいけない。それは世の理だろう?

キャトラ : でも、お別れは寂しくない……?

ディアイゼ : ああ。再び元の二人に戻れたのち、彼女がどんな決断をするかはわからないが、今日まで紡いできた奇妙で、不便で、そして――賑やかな日々を失うのは、確かに名残惜しいさ。

アイリス : それなら……

ディアイゼ : だが、今になって思うんだ。勇者としてひたすら戦い続けてきた己の歩みの中で、無意味な別れなど一つとしてなかった。

哀しみも、怒りも、嘆きも、憎しみも、後悔も、確かにあった。

それでも、<無>はなかったんだ。

キャトラ : ……うん。

ディアイゼ : こんな己が<赫鉄の勇者>として正義と誇りの灯を絶やさぬまま、これからもこの剣を振るい続けていけるのなら――

そんな己を形作ったのは、あの日の数々の別れなんだよ。

別れとは、喪失ではなく<糧>なんだと、己は思う。

アイリス : ディアイゼさん……

ガラティナ : (う~ん、むにゃむにゃ……ごめぇんおじさん、変な時間に寝ちゃったぁ)

キャトラ : あ、起きちゃった……!

ディアイゼ : ……ガラティナ。大人の役目とは、次代の子どもたちに何かしらの<糧>を残すことだと、己は思う。

ガラティナ : (起き抜けにする話じゃなくない?え、なにいきなり?)

ディアイゼ : いつか君が、誰かに[糧:なにか]を残せる素敵な大人になれるよう、己は毅然と道を示したい。

近く訪れる別れが喜びと希望に満ちたものになるよう、全霊をもって協力を――

ガラティナ : (……いやだから、何の話?別れ? 喜び? なに?)

ディアイゼ : ……? 君が元の身体に戻ったあとの話だが。

ガラティナ : (元の身体に戻れたら?そんなんまず昔買ったお気に入りのパンツはくに決まってんじゃんっ!)

キャトラ : ん?

ガラティナ : (他にも太ももんトコとかみっちみちで、入らなくなった服たくさんあんだからね!?絶対元に戻って片っ端から着まくるんだからー!!)

ディアイゼ : ……???????

アイリス : あの、ガラティナさん?元の身体に戻るって、もしかして――

ガラティナ : (ん?つきすぎた筋肉細くする方法クロードさんに教わったんだ~♪)

(ってか私が寝てる間におじさんが筋トレばっかするからだからね!?戦うためには筋肉も大事だけど、私だって女の子なんだからその辺のバランスもちゃんと考えてってば! ったくも~!)

ディアイゼ : …………

キャトラ : ……だいたい話は見えたわね。

ガラティナ : (……え? なにこの感じ?おじさんも何笑ってるの~!?)

ディアイゼ : いや……

己の子離れはもう少々、先の話になりそうだ――そう思っただけだよ。

ガラティナ : (なにそれ意味わかんない!ちゃんと説明してよ~!!みんなもなんでニヤニヤしてんのぉ!?)


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