5話 ダンジョン突入
アルカのダンジョンへと進む鬼一達。
馬のゴーレムに乗り、揺られながら鬼一はこの世界について考えていた。
まずは世界の成り立ちについて、レイバルン帝国。
人間属、亜人属、精霊属などの人型の種族を国民とする武装国家。
昔の西欧のような村や畑があり、帝国に近づくほどに都市が集合している。
人間属、亜人属、精霊属の順に人口に差があり、人間属が最多となっている。
魔術は一定の才能があるものが魔術学院に入り、日夜研究をしているとか。
そして、レイバルン帝国の国教ともいえる宗教、レイバルン教。
永遠と黄金の神の一柱、レイバルンが世界を創造したと言う神話を持ち、その神話体系は地球のキリスト教に近い物を感じた。
そして、レイバルン帝国の最大の敵とも言える存在、魔王。
レイバルン帝国歴で言うところの十年以上前に突然姿を現し、世界の敵となった。
有無を言わさぬ蹂躙と殺戮は帝国の北半分を瓦礫と化し、多くの難民を生み出した。
そして5年前に帝都をより南へ移住させる事となった。そして、神託が降りた事により俺達を召喚するに至ったと。
「こう考えてみると俺達ほぼ巻き添えだったんだな」
「何の話だー?」
「俺たちが今こうなっている現状について考えてたんだよ」
「ああ、こっちの世界に来てそれなりになるんだなぁ」
「ゲームの世界みたいで面白いけど、生活感が離れてしまっててあんまり慣れないよね」
と伊野が言う。
「特に風呂が俺は恋しいかな、後は飯」
「僕はゲームとかかな」
戦闘を行くザイン隊長の馬が止まる。
どうやらアルカのダンジョンを到着したようだ。
「運んでくれてありがとよ」
鬼一がペシペシと馬のゴーレムの首を軽く叩く。
しかし、反応は無い。
「ゴーレム相手に何やってんだか」
「感謝は伝えて損は無いんだぜ?」
「まぁ確かにそうだね」
伊野もよしよしとなでている。
「よし、お前ら集まったな。これよりアルカのダンジョンの演習を開始する」
ザイン隊長が高らかに宣言する。
「午前はダンジョンの演習、午後はまた訓練だ、良わかったな!」
生徒たちがダンジョン突入の準備に入る。
装備を整え、専用武器を手に取り。
ダンジョン入り口へ集合した。
アルカのダンジョンの入り口は石造りで、両脇にはガーゴイルと思わしき石像が並び、それぞれ斧を携えていた。
「思っていたより、地味だね」
「無理もないさ既に攻略されてから目ぼしいものはほぼ持って行かれたんだろうさ」
ダンジョンで発見されたものは発見者のものとなる、法も存在している。最も鬼一達が向かうダンジョンでは新しく発見する可能性は著しく低い。
「許可が降りた。さあ、行くぞ」
ダイン隊長が掛け声を上げて、ダンジョンの中へ突入する。
ほぼ一方通行の道をしばらく進むと大きな広間に出た。
「ザイン隊長曰く、ここが一階か」
「さて、陣形を組むか」
生徒が自主的に円の陣になる。事前的に前衛と後衛に振り分けられていた。
伊野は後衛、鬼一と坂岡は前衛。
「後ろに敵を通さないでよ!」
「あんたら真面目にやりなさいよね!」
鬼一と坂岡の後方の女子がギャーギャーと噛み付く。天王司の取り巻きの女子の一員らしい。
「あぁ、わかったわかったっての」
「テンション下がるわー。しかし前衛の務め、見事果たしてみせるさ」
から元気を出す2人に呼応するかのように広間に灯りがひとりでに灯る。モンスター、魔物が出てくる合図だ。
「お出ましだな」
「やってやろうぜ」
複数の召喚陣が魔物を召喚する。
現れたるはゴブリン、手には手斧やショートソードが握られている。
雄叫びを上げこちらに向かって来るゴブリンの群れ。物量で生徒たちをすり潰す戦法か、そのまま突撃してくる。
それを前衛を努める生徒たちは能力を使って蹴散らしていく。
「特訓の成果、発揮できるんじゃねーの」
「間違いねぇ」
生徒の前衛組が能力を発動する。
「来い!ヴァナルガンド!」
「来たれ!神の右腕!」
坂岡の鋼鉄の如き爪がゴブリンを膾斬りにしてゆき、鬼一の右腕がゴブリンを捻り潰してゆく。
後衛の伊野たちの能力も援護してくれている。ゴブリンが魔力の渦に巻き込まれる。
「援護サンキュー!」
鬼一がゴブリンの攻撃を避けつつ叫ぶ。
「別にアンタのためじゃねーから」
さっきの女子の一人がそう叫んだ。
「おお、ひっでぇー。傷つくわー」
ゴブリンの返り血を浴びながらも軽口を叩く鬼一。
その姿は鬼のようにも味方にも敵にも写った。
「いつもの事じゃねぇか。気にすんなよ」
「言われたら言われたで嫌われていても傷つくんだよなぁ。でも理解し合えないから、仕方ねぇよな」
戦闘で心が高ぶるのせいか、悪態をつく鬼一。
無理も無い、ここ数日の戦闘訓練の成果が出ているのだ。鬼一にとって努力の結実は喜ばしいのだ。
ゴブリン達の体は挽肉と化して、前衛たちの戦場に残されつつある。
最後のゴブリンが血飛沫を上げて斃れたのを確認した生徒たちから歓喜の声が上がった。
「まだ、終わっていないぞ。前衛目の前の敵がいなく無くなったからといって油断するな」
そこに差し込まれたるはザイン隊長の叱咤の声。
油断を許さぬその声は確かに前衛達の心の尻を叩いた。
「第二波、来ます!」
後衛の誰かがそう叫んだ。
血風の中の、召喚陣がまたも別の物を召喚し始めた。
大きくゴブリンよりも肥えたモノ、オークと呼ばれる人型の豚と人間を足したような種族である。
「ブオォォォ!!」
言の葉を紡げぬ口は野蛮な咆哮を上げてこちらへのしのしとやってくる。手にはこれまた大きな戦斧がこびり付いた血の欠片を零し、振り上げられた。
「新手だな、かなり手強そうじゃないか」
鬼一が笑うゴブリンとは違う体格を相手にして嗤っている。己の血が猛るのか、それとも新たに首級を上げる予感に対する喜びか。
以前まで学生をやっていた人間とは言えない考えられないような、血なまぐさい考えが彼らにはいつの間にか宿っていた。
「坂岡!競争しよう!どっちがあのオーク共を多く血祭りに上げたかを!」
「良いねぇそれ。俺もそう考えていたんだわ!」
振り下ろされた蛮刃を神の右腕で受け止める鬼一。
びくともしない人間を相手に一瞬怯むオーク。それを鬼一が見逃すはずがなく、オークの首は明後日の方向へ、へし折られ、舌をだらりと垂らしドサリと倒れ込む。
次の獲物へ急接近した鬼一の脳には闘争という名の熱病にうなされていた。
敵へ飛びかかり一撃で仕留めていくその様は、蛮族と言って過言は無いほどに。
それに気づかないザインではなかった。
「鬼一、鬼一顕二!冷静になれ!」
血に飢えた獣の如く、全身に蛮勇の力を乗せていた鬼一が名前を呼ばれた瞬間にビクリと体を動かす。
そこを狙い胴体に入りかけていた戦斧の刃をかわし、後方にひらりと爆天する鬼一。
着地し、一つ息を整える。
そこにいたのは先程の彼ではなかった。
(何だったんださっきのは)
焦りを見透かされたかのように打ちこまれる攻撃に冷静に対処し仕留める。
気づけばオークの数もかなり減っていた。それでも攻撃をやめない。
ダンジョンで召喚された生物はなにかに命令されたかのように攻撃をやめない性質を持つ、ダンジョンへ入る前に学習した事を鬼一は思い出した。
オークが最期の少数になった時、天王司の専用武器、ケラウノスの刃が全てのオークを斃しきった。
体に残る戦いの余韻、鬼一はゼイゼイと息を着いた。坂岡も同じであった。
付近はしんと静まり返っている。
「ダンジョンの一階層の演習を終了とする。各自補給と怪我の手当をしておけ」
その静寂に響き渡るザイン隊長の声が、生徒にようやく安堵をもたらす。
「すまんな、坂岡。なんか途中で冷静さを欠いたわ」
申し訳なさげに言葉を紡ぐ鬼一。
「いや、俺も気付けないのが悪かった」
次からは冷静に行こうと話し合う彼らに後衛にいた伊野が駆け寄ってきた。
二人を心配しての事らしい。彼も出番はそこそこはあったのか、疲労が顔に出ている。
「二人とも怪我は無い?」
鬼一と坂岡は自身の体を見る。
細かなかすれ傷さえあるものの大した怪我は無いようである。
「待ってて、今直すから。天命に変わり僕が命じるヒーリング」
伊野が呪文を唱えると共に、傷を負った彼らの身体を深緑の光が包む。
どうやら治癒の魔術で治してくれたらしい。返り血も浄化され消えている。
「ありがとうな、伊野」
鬼一が僅かに微笑み、伊野に感謝を述べる。
「どういたしまして」
坂岡も礼を言う。
その最中、鬼一がじっと手を見ているのに気がついた。
「どうかしたの?」
鬼一は少し震える手から視線をそらし言った。
「いや、大丈夫だ」
(力に飲まれていたんだろうな、きっと)
ザイン隊長の呼声を思い出す鬼一。
あのまま突っ込んでいたらきっと手痛いダメージを受けていただろう。
生来頭に血が上りやすい性格だが、こちらの世界に来てからそれも甚だ頻発している気がする。
(あの石に触れてたから、この世界について知ることが出来た。それ以来の練習から頭に血が上りやすくなっている気がする。あの石のせいだろうか)
ゴーゴリ司教の話にはなかったはずだが、と思い出そうとする鬼一。
「少し早いが休憩を挟むぞ!」
ザイン隊長が号令を発する。
他の生徒の面々も治療を受けつつ、陣形を維持している。
ダンジョンの地面に配置された円型の部分がそれぞれが螺旋階段のように沈み込んだ、こうして次の階層への階段が開かれた。
こうして、ダンジョンの演習は続くかと思われた。
影が、忍び寄っている事に誰も気づく事は無かった。
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