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神の右腕 リブート  作者: 伽藍堂
3/12

3話 鍛錬の日々

 

「ザイン=エルテスだ。お前たちを鍛えてやる、ザイン隊長と呼べ」


 それ以来、鬼一達の鍛錬の日々が始まった。


 基礎がなっていないとのことで、闘技場で体を鍛えるところから始まった。


 高校の外縁以上はありそうな闘技場を一日十周年、各種筋トレなどなどはたまた崖登りと言ったものまでこなすこととなった。


 鍛え始めてから一週間、クラスメイトの皆にもじわじわと鍛錬の効果が出ていた。

 体に筋肉が目立ち始め、体力もそれなりに付き、動けるようになった。


「よし、今日から訓練用のゴーレムを使った、能力を使った戦闘訓練を開始する」


「ようやく、訓練らしいのが来たか」


 うっかり鬼一が口を滑らす。


「おいそこの、物足りないらしいな。お前は人型だけでなく、犬型のもつけてやる」


「ゲーェ!嘘だろ!」


 どっとクラスが笑うが巻き起こる。


 伊野も坂岡も笑いを堪えられずに吹き出してしまっている。


 やらかしちゃったなぁ、と気恥ずかしそうに顔を覆う鬼一。


「その前に手本を見せてやる。見て覚えろ」


 ザインが闘技場の訓練用のゴーレムに向かい合う。


 得物の片手剣を右手で握り、左手で盾を構え訓練用のゴーレムににじり寄る。


 瞬時にゴーレムの胴体を袈裟斬りにする。


 その間、一分にも満たなかった。


「あーその、すまんな。あまり手本にはならなかったかもしれんが」


 袈裟斬りにされたゴーレムが闘技場の土を吸い込み、元通りの形となる。


「俺が伝えたかったのは、訓練用のゴーレムは何度も再利用されるため、コアを潰さない限り完全には壊れない。しかし、人間の弱点となる部位を意図的に似せて作られている。そこに一定のダメージを与えられると行動不能となりこちらの勝利となる感じだ」


 天王司が手を上げる、質問のサインだ。


「天王司アルフ、何か質問か?」


「はい、人間の弱点とは主にどのあたりかと思いまして」


「···ああ、そうだな。基本的には頭、鳩尾、股間と言った所だ。他にも様々あるが、このゴーレムは人間のそれらの部位が弱点となっている。これで良いか?」


「はい、ありがとうございました」


 闘技場にて鬼一は現在、自身の失言の結果に相対にしていた。


  人型のゴーレムは鬼一の一倍はありそうな体格、犬型は狼のような大きさである。


「それじゃあいっちょぶちかましてみますか!」


 鬼一が自身の能力、神の右腕を解放する。


 右腕が白い外骨格に覆われたような形になり、青く光る紋様が浮き上がり腕よりも太く大きくなった。


 先制人型ゴーレムの数発のパンチをガードで受け、連撃してくる犬型ゴーレムの噛みつきをそのまま両手で顎を掴む。


 逃げようと暴れる犬型ゴーレムを顎から無理やり引き裂き行動不能とする。


 そこに人型ゴーレムの右パンチが炸裂、しそうな所で、身を屈めることで避ける。


 力を乗せすぎたのだろうか、避けられたパンチを戻すタイミングのズレを鬼一は見逃さなかった。


 下から上への瞬発力と右腕の膂力を乗せた右ストレートが、人型ゴーレムの顔へ綺麗に入る。


 もんどりをうって壁へ叩きつけられるゴーレム。


 戦闘は鬼一の勝利で終わった。


「へぇ、悪くは無いか」


 ザインが呟く。


「他の奴も今のと同じ調子で倒せるようにしていけ」

「はい」とクラスメイトが言い、それぞれ稽古に打ち込んで行く。


 一方、鬼一は震えていた。


 武者震いか、否。


 自身の勝利に、震えていた。


(相手が練習とは言え、すごく緊張する。ザイン隊長は慣れると言っていたが)


 震える拳に目をやる。また、自問が蘇ってくる。

 何の為に戦うのか、なぜ戦うのか。


(頭でっかちになりすぎるな、ザイン隊長の言っていた通りいち早く慣れるんだ、俺!)


 自問を押しつぶすかのように、自分に言い聞かせる。


 壁から起き上がった訓練用のゴーレムは再生が終わっている。


 鬼一はもう一度、訓練に励んでいく。



 時は過ぎ、夕暮れ頃。


 鬼一は体の汗と汚れを井戸の横で、水で固く絞ったタオルで拭っていた。


 あの後は思うようには行かず、七勝三敗の記録となった。


「一度でも隙をついた攻撃を食らったら、敗北と考えろ」というザインを思い出す。


 相手の動きを読み躱す、訓練の後半はそれだけで頭が一杯になってしまった、と彼は振り返る。


(能力があっても活かせなきゃ何にもならない、それが身にしみて解った気がする)


「アイツは俺と似たりよったりな戦績だったな」


 天王司アルフ、能力は勇者の神剣。なんともまぁおあつらえ向きな能力名だ。


(アイツらしいなぁ、気は合わんがね)

 鬼一はどこか、天王司とは気が合わないのを肌で感じていた。

 陽キャや陰キャと言った区別などよりもよほど深い相容れなさを。


「やぁ、鬼一君、で合ってたよね?」


(噂をすればなんとやらか)

 タオルを絞っていた鬼一に天王司アルフが話しかけてきたのだ。


「ああ、合ってるが何かようか?」


「いやぁ、ザイン隊長に追加で犬型ゴーレムを入れられていたけど、大丈夫かなって」


 天王司の視線の先には鬼一の横腹に引っかかれた生傷が。


(何か突っかかってくるかと思ったがそうでもなさそうだな)


「嫌、特に気にしてねーよ。余計な事を言った俺も悪いし」


「あのさ、突然だけど」


「天王司くーん、なーにしてるのー」


 その会話に唐突にどこから現れたのか安藤が割り込んでくる。


「遅いじゃん!青木くんも待ってたよ!」


「いやーごめん!待たせちゃって、とと」


「と言うわけで、天王司君はあんたに用は無いってさ。じゃーねー」


 あかんべっと安藤がこちらに挑発してそのまま逃げていく。


(結局、何がしたかったんだアイツ?)


 後にはぽつんと鬼一が取り残された。


 反りが合わないと言えば、安藤千夏もである。天王司がこちらに接触を図ろうとすればいつも妨害してくるのだ。


 その意図は一体何であろうか。 


(アイツは天王司に惚れてるって事で間違いは無さそうな気がするぞ。それにしてはどこかやり方が強引なんだよなぁ)


 体も拭き終わっていたので、一度着替えて夕食に向かうことにした。


 夕食は大食堂で行われていた。


 既に人が集まっており、長机に座って談笑して、夕食を楽しんでいる。


「今日はシチューと黒パンか」


 シチュー、正確には似たような者が木製の器に盛られ、湯気を立たせていた。黒パンは甘みは無いが、シチューとセットで食べると一段とうまいのだ。


 配膳された皿を持ち、席を見やる。


 と、伊野と坂岡を発見した。


「おお、先にやってるぞ」


「お先にー」


 向かいに食器を置き、椅子に座る。


「なぁ、ぶっちゃけ思ってる事、言っていいか?」


「何だ?急に」


「俺たちの能力ってきちんと役に立つんだろうか?今は人型一体にでも苦戦してるし、正直不安なんだ」


「あーわかるよ、その気持ち。でも仕方ないんじゃない?僕ら基礎を身につけてる途中で、何もかも初心者なんだよ」


「段々と能力を使った戦闘ができるようになると?」


「そうだとも思ってる」


「そうかな。なんか釈然としないんだよ。ザイン隊長の鍛え方を信じてないわけじゃないんだぜ?」


「俺は結構戦えるようになったと思うぜ?」


「僕は惨敗だったかな。拒絶の聖壁で攻撃を防ぐ事しかできなかったし」 


「能力によって差があるんだろうか?」


 暖炉の前での語らいはまだまだ終わらない。


「そう言えば、聞いたか?」


「えっなにを?」


「近いうちにダンジョンに潜ると言う噂が出てるんだよ」


 坂岡が得意げに語る。


 それに対して怪訝そうに伊野が声をかける。


「まだ基礎訓練も終わってないのに?」


「そこなんだよなぁ。それだけ帝国が追い詰められているってことにもなるからあんまし口外しちゃいけないんだけどな」


「逆に言うとそれだけ期待されてるのかもよ」


「いや、違うね。期待しているのは俺たちじゃない。能力の方だろ」


「どういうこと?」


「いや、さ。何で自分たちの国ではそう言った能力を持つ人間が少ないんだと思ってね」


「確かにそれなら、俺たちを呼ぼうとはしないよな」


「能力が発現する可能性は若いほど多いって言ってたし。僕たちと同年代の人間はいたよ」


「国中調べて全然いませんでしたって話なんだろうか」


 あれこれ談笑する鬼一達の席にザイン隊長が来る。


「よう邪魔するぜ」


「ザイン隊長!」


 うぃーひっくとザインがしゃっくりをする。相当飲んでいそうだ。


「オメーら若人はなぁ、ひっく。なんでここにいるんだよ!ここにいちゃいけないんだよ!」


 ザイン隊長の突然の暴言にぎょっとする一同。


 他のクラスメイトもびっくりしている。


「····申し訳ありませぬ。ザイン殿は酒癖が悪いお方でして」


 声のする方を見やれば、ゴーゴリ司教がやってきていた。


「ほら、帰りますぞザイン殿」


「まで、ゴーゴリ!まだ話が····」


 ひょいとザインを担ぎ、ゴーゴリが退席する。


「申し訳ありませんでしたな。それでは···」


「一体、何だったんだろうね」


「····さぁ?ゴーゴリ司教の言う通り酒癖が悪かったんじゃないか?」


 その日の消灯時まで、鬼一はザインの言葉に悩ませられていた。


(なんでザイン隊長はあんな事を言っていたんだろうか。なんでだろう、なぜあの言葉になぜ心に引っかかる)


 分からない、それしか分からない。


 そして、いつしか鬼一は意識を手放していた。


 面白いと思った

  

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