20話 能力の故 前半
「お前は、マグヌスマルクト!」
「名前を覚えていてもらえたようで何よりだ、勇者諸君」
顔が見えないフードが特徴的なローブに身を包み、魔王の幹部が、ギルドの一室に座っていた。
忘れもしない、鬼一たちを裏ダンジョンへ移動させた張本人なのだ。
「今、ここでおっ始めようってのか?」
鬼一の額に一筋の汗が垂れる。
「いいや。こちらはお前たちと事を起こすつもりは無い、ただ聞いてもらいたい事があってな」
警戒を緩めない三人に対し、悠然とマグヌスマルクトは相席するように勧めてきた。
大人しくそれに従う三人。
「さて何から始めるか。まずはお前たちのその力、能力について話すか」
一触即発な状態の中、マグヌスマルクトがそんな事を口にする。
「敵であるお前らに関係ないはずの情報を、何故お前は知っている?」
坂岡が言い放つ。
「それは愚問だ。それに話は最後まで聞くものだよ、君。今、会話の主権はこちらにある」
「ぐっ···」
「君たちの人ならざるその異能はな。作られたものなんだ」
三人がどよめく。
「そ、そんなはずはないだろ。俺たちが選ばれし勇者だからその力が眠ってて···」
「そ、そうだよ。だからこそ、この世界の人たちは異世界人の僕たちを召喚したんじゃないか!」
「残念ながらそうではないんだよ」
冷めたような声色でそう言い放つマグヌスマルクト。
「君らは能力を測る前になにかやらされたんじゃないか。例えば、棺状の箱に満たされた赤い水に浸されたとか、それを巨大な炉の前で行ったとか」
「········」
ギョッとした顔をする一同。
「その反応か、ならば確定だな。お前たちが受けた儀式の名は、···万物鍛造、いや英雄鍛造だ」
「英雄、鍛造?!」
「ああ、これで魂そのものを加工し、能力へと昇華するのさ」
マグヌスマルクトが説明した、その万物鍛造のいわれは曰く、北方の神話には鍛造によって世界のあらゆる物を創り出したと言う神話がある。
神話におけるそういう技術が実際に北方には存在していたと言う。
帝国は北方に侵攻した際にその技術を発見。
これを利用し、人間に身に余る力を人為的に発現させたというのだ。
「故に人を英雄足らしめる力、能力をお前たちの魂から創り上げたのだ」
「じゃあ、何故、俺たちを召喚したんだ!それができるなら、自分たちの親衛隊からでも、その力を引き出せばいいじゃないか!」
坂岡がマグヌスマルクトに噛み付く。
「この世界の人間の魂ではもう英雄は作り出せなかったのだとしたら?」
「何がいいたい?」
「この世界の人間の魂が使い物にならないからなのだよ。だからこそ、お前たちを召喚したんだ。贄としてな」
「贄、だって?」
「そうだ、贄だとも。英雄鍛造に使用された魂は、生命力を犠牲にその力を得るのだから」
ゾっと悪寒が三人に走る。
以前から思っていた疑惑が一気に明るみに出たからである。
冷や汗を垂らしながら、鬼一はザイン隊長の言葉を思い出していた。
(すっぱりと後悔なく、これでよかったと思える人生を生きるんだ。それだけだ)
ここに来て、その言葉の真意がわかった。そんな気持ちが鬼一には沸き立っていた。
(俺たちを騙して勝手に身体改造して、挙句の果てには人類の為に戦えってか?!流石に虫が良すぎだろうが!)
マグヌスマルクトは鬼一の心を見透かしたかのように続ける。
「生命力とはお前たちの言う所の寿命だ。我が魔王の言う所によると諸君らは後四年の命だろう」
鬼一は最初からマグヌスマルクトの言葉を半分に受け取っていた。
魔王の幹部の言葉など、取るに足らないと侮っていた。
だが、これは限りなく真実に近いのではないか。
鬼一の首筋を脂汗が伝う。
口の中がカサカサに乾き、すぐにでも水を飲み干して潤したい気分に駆られる。
坂岡は落ち着きが無くなり、気分をごまかそうと貧乏揺すりを始めた。
伊野はその眼がどんよりと濁り、開いた口が塞がらないようすだ。
三人の間に、悲壮感があふれだす。
震える言葉で鬼一はマグヌスマルクトに反論する。
「俺達にはそれを信用する理由が無い、そして。俺たちが四年後に命を落とすかも今はわからない。お前が言っていることはまやかしだ。だまされんぞ」
マグヌスマルクトはやれやれと首を振ると話を続けた。
「つくづく理解しがたいな。何故そこまでして私の説明を無為にするんだ。真実を受け入れたくないのかな?だがそこで提案だ。お前たち三人とも、私たちの仲間にならないか?」
「何を、言ってやがる!」
「私たちと同じ幹部として転生させてやる。さすれば寿命の問題も無くなるだろう。お前を贄として差し出してきた連中、そしてこの国の人間にも復讐ができるではないか」
暗く甘い提案が三人に舞い降りた。
裏ダンジョンを攻略するのに必死で復讐など考える暇も無かった。
しかし、地獄の約四日間で、鬼一たちが天王司に対し良からぬ念を抱かなかったかと言われれば嘘になる。
「じっくり考えて答えを出してくれたまえ。一週間後の同時刻、ここでまた会おう」
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