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神の右腕 リブート  作者: 伽藍堂
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2話 能力判明

小鳥が森で囀る、朝を告げる声で鬼一は目が覚めた。


「ここは?そうだなんか変な液体の入った箱に入っ····て····」  


 覚えているのはそこまでだった。


「お目覚めですか?」


「?!」


 びっくりして飛び起きるとちょうど召使いと思わしき女性が寝室に入ってきていた。


「おはようございます。勇者様、午前から神殿へと向かってほしいとの言伝をいただいております」


「りょーかいです。すぐ向かいますね」


 (そう言えば、風呂入ってないな)


「すみません、お手数ですが。お風呂とかってありますか?」


 召使いは少し考えてから提案した。


「水浴びならすぐできます」


「ああ、ならそれでお願いします」


 部屋の中で召使に用意してもらった水の入ったたらいと布で体を拭いていく鬼一。年頃故に気になるのだ。


(温かい風呂ではないが仕方ないか)


 日本人心に温かい風呂に入ってゆっくりしたいと思う鬼一。


 体を拭いている鬼一の耳に、風の吹き抜けるような音が聞こえてきた。


 その音は徐々に何が接近するような音へ変わっていった。


「なんだろ」


 次の瞬間部屋の窓を突き破って、何者かが吹っ飛んできた。


「どわっ!なんだ!」


「いってててぇ」


 箒に跨った人物が壁に激突し、部屋に侵入してきたのだ。 


 見ると金色の髪の長い人、おそらく女性だ。黒いローブと魔女のような帽子、顔立ちは幼いながらも美人であることがわかる。


 その女性がこちらを認識した。


 自分の置かれた状況を察した鬼一、自分は半裸そして突っ込んできたのは女性。


「あ、あわわわわ····」


「待ってくれ、俺は水浴びをしてるだけだ。決して変態な訳では無い!」


 女性の顔がみるみる真っ赤に染まっていく。


(マズイ!)


 叫び声が!と思いきや顔を真っ赤にしながらまじまじと体を見られていることに気づく鬼一。


「えっえっえ?」


 想定していた事態とは異なる事態に困惑する鬼一。


「ご、ごちそうさまでしたっ!!」


 そう叫ぶと女性は割って入ってきた窓から箒を唸らせて出ていった。


「何事ですか!」 


 窓が割れた音を聞きつけて、召使いが血相を変えて部屋に入ってきた。


 その後、鬼一は身なりを整え召使いに事のあらましを説明した。


「なるほど、その娘にはあとできっちり言いつけておきますので。このことはご内密にお願いします」


「は、はい。わかりました」


 困惑した表情のまま、鬼一は神殿へ赴くことにした。


 神殿と一言に言っても、そこはレイバルン帝国の国教であるレイバルン教の神殿である。


 神殿では集められたクラスメイトがゴーゴリの説明を受けていた。


「昨日の儀式であなた方の能力が解放された為、その能力を知るための儀式を行います。まずはこの羊皮紙をご覧ください」


 ぱさりと一枚の羊皮紙がゴーゴリ司教の手に持ち、掲げる。


「ここに皆様の血を一滴垂らしていただき、汝代価により知らせ給え、と唱えて頂くと個人の能力について知ることができます。使用した羊皮紙はこちらにお渡しください」


 鬼一が渡されたナイフで少し手を切り羊皮紙に垂らし、先ほど言われた言葉を放つ。


「汝、代価により知らせ給え」 


 みるみる羊皮紙上の血が文字へと変わっていく。

 そこにはこう記されていた。


 神の右腕 Sランク

  神の如き膂力を誇る。

  人が見いだした原初の神話の一つ。


 他にも文字が書かれているようだがよくわからない。とりあえず、ゴーゴリ司教に羊皮紙を渡す。


「なるほど、Sランクですか。かなり高いランクですね」


「あの、ちなみにここの文字が書かれているような部分、わかりますか?」 


「うーん、わかりません。こういうのは滅多に無いはずなんですが····後々わかってくることもありますしあまり気を落とさないでください」


「そうですか、わかりました」


 坂岡と伊野が話し合っているのを見つけた鬼一は彼らに駆け寄り、話の輪に加わる。


「おはようさん、能力の判定はどうだった?」


「ああ、俺はSランクだった」


「僕はBランクだったよ」


 ゴーゴリ司教の話ではランクは強さ、または能力の現在の成長値を表すものだという。


 一応Sランクが走り出しの中でほぼ完成形のものだ。


 ランクD→C→B→A→S、が能力の成長順を表すものだという。伊野はまだ成長途中と言う事らしい。


「そう言えば、能力の方はどうだった?俺は神の右腕とか言う能力で力が強くなるみたいなんだわ」 


「俺はなんか狼男みたくなる奴だった。何でも北欧神話に出てくるフェンリルを身体に降ろすとか」


「異世界で北欧神話?なぜ?」


「知るかよ」


「僕は拒絶の聖壁だったよ。なんかよく分からないけど、バリアを張れるみたい」


「伊野はまぁ伊野らしいなぁ。あればいじめてくるやつから自己防衛できるじゃん」 


「なんか僕だけフツーな感じ?!」


「お前はお前で地味だな。神の右腕とかシオマネキかよってくらいの力の偏りを感じるぜ」


「一時期左腕の骨折って、右腕だけ筋トレしてたからその影響、だったりしないかな?」


「散々な言われよーだな、おう」


 各々の能力について色々意見を言い合う。なるほど確かに並大抵の人間ではあり得ない力である。


「皆様の能力の確認が出来ました。お次はこの国の知識を皆様には学んで頂きたいと思います」


 ゴーゴリ司教の言葉にクラスの雰囲気が下がる。


 皆、勉強が苦手に思っている点があるのだ。いかにも高校生らしいが、今後度肝を彼らは抜かれる。


「それではこちらに用意したミネルヴァにお触りください」


 ゴーゴリ司教の側にいつの間にか、巨大な鉱石のような者が浮いていた。


 ミネルヴァと呼ばれたその石は不気味に光を反射している。半透明ながらも光沢を放つこの石は得体の知れなさを醸し出している。


「学ぶって言ってましたけど、この石にさわれば良いんですか?」


「左様です」


 鬼一が恐る恐る手を伸ばし、石に触れる。旅先に石の冷たさが伝わってくる。  


 と同時に脳に情報が直接書き込まれていく感覚を鬼一は感じた。そして、手を離すころには知識が備わっていた。


「これは、一体?」


 驚く鬼一に、ゴーゴリが語りかける。


「驚かれるのも無理はございません。このミネルヴァは触れたものに知識を授ける石なのでございます。帝国の国民は皆、この石に触れるのが習わしでございます」


「なるほどです」


 ふと考えると、帝王の成り立ちから現在までが教科書のページを見るように理解できた。


「お次は魔力ついて調べます。ミネルヴァに触れた方はこちらへ」


 ゴーゴリが鬼一の手を取り、目を瞑る。


「ううむ、鬼一殿。そなたの魔力は紫ですな。魔力の濃度は相当なものですな」


 魔力には濃度があり、濃い順から紫→青→赤→黄→白と言った色の段階で分けられている。通常の人間でも黄がせいぜいと言った所だ。


「それなら魔法は使いたい放題ってわけですか?!」


 よほど嬉しかったのか笑顔で鬼一が聞く。


「いえ、そうとは行かなさそうです。濃度はありますが、量は少なめなようですな。魔術は使えて一か二度くらいかと」 


「そうなんですか」


 しょげる鬼一。


「濃度は最高値ですので、あまり気を落とさないでくだされ。戦法的に魔力をあまり使わないやり方で納得いただければと思います」


 その時、鬼一の腹が鳴った、気恥ずかしそうに苦笑いをする。 


「そう言えば、朝食がまだでしたな。儀式の後、手配させましょう」

 その後も魔力検査が続いていく。


 

 そして少し時が過ぎ、帝王との謁見の間にクラスメイトらはいた。 

 皆片膝を付き、頭をたれている。これは帝国の礼というべきものだろう。 


 ようやく帝王に拝謁する時が来たのだ。


「帝王ダインミュンダース二世様のお見えです」


 静謐とした場に、足音が響く。


 王笏をつき、現れたるはダインミュンダース二世。


 厳しい顔つきと白いひげが、威厳をさらに引き立てている。


 現レイバルン帝国の帝王である。


「皆のもの、頭を上げよ」


 帝王の命に皆が従う。


「まずは異世界よりの転移を労いと我らの幕下に加わることの御礼を申す」


「は!ありがとうございます」


 クラスメイトの代表として天王司が答える。


「是非ともこの国、ひいては国民を守る務めを果たしてほしい。以上だ」


「殿下のご期待に添えるよう努力いたします」 


「うむ、期待しているぞ。下がってよい」


 そそくさと謁見の間から一人一人列になって去っていく。


 間から出て用意された部屋でクラスメイトはどっと疲れた雰囲気に包まれていた。


「いきなり謁見とかキンチョーヤバすぎなんですけど!」


「仕方ないよ。帝王様だって忙しいし、急遽時間が空いたからようやく謁見になったんだし」


 そんな話でクラスメイト達は話に花を咲かせていた。


「いやー謁見、緊張したねぇ」


「相手は帝王様、緊張しないほうが無理がある気がするんだわ」


「そりゃそーでしょ。話変わるけど、午後は早速能力を活かしての模擬訓練なんだっけ」


「僕自信ないなぁ。坂岡くんと鬼一君は自信ありそうだけど」


「いやー言うて無いぞ、自信は。何せ命懸けなんだぜ?日本で命がけだったことなんてそんなに無いぞ」


「そうだな、日本で暮らしている時は考えたことすらなかったなぁ」


 ふと思い出す、故郷の星、地球の日本。


 親に恵まれ、友に恵まれ、自分の命を守るという心配を指折る回数しかしてこなかった。


 今を生きる事を、学問や部活を必死に努力して足掻いてきた。


 そして異世界に飛ばされて、突然力を与えられて、命がけで戦えと言われる。


 何の為に?何で戦う?


 鬼一の頭にそんな疑問が浮かんできては消える。


「········」


「隙だらけだぞ」


「っ?!」


 鬼一の背後で声がしたかと思うと、首根っこを捕まれていた。


「だっ誰だ!」


「これが俺等の未来の英雄様か?」


 言葉を発した男の片目には傷跡があり、革と金属を合わせた軽装をした、全体的にどこかやつれた雰囲気を感じてとれる。髪は赤毛でどこか煤けている。


 慌てた様子でゴーゴリがその男に声をかける。


「控えなさいザイン!勇者様が驚いているでしょう!」


 ザインと呼ばれた男は肩をすくめて言った。


「基礎が成って無くて何が勇者だ。能力があるだけの素人じゃねぇか」


 首根っこを離された鬼一がドサリと床に尻もちを打つ。


「お前たちを一から鍛えてやる、ザイン=エルテスだ。お前らはザイン隊長と呼べ」

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