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神の右腕 リブート  作者: 伽藍堂
18/20

18話  初クエスト

 アルカのダンジョン、その近くのギルド。


 ルロマのギルドの掲示板にはまだ日も昇らない内に人々がたむろしていた。


 今日の依頼、クエストを探すためである。


 受付嬢の一人が梯子に登り、自身の全長を倍はある掲示板に次々と依頼を貼り付けていく。


 掲示板に張り出される依頼は新しい物で、古いものであれば受け付けに問い合せれば探してもらえる仕組みとなっている。


「俺はこいつをいただこう!」


「こっちはあれだ!他の冒険者に後れを取るな!」


 集まっている冒険者たちの喧騒とは打って変わって、鬼一たちは新入りと言うことで古い依頼をこなす事が決まっており、受け付けにてその手続きをしてもらっているのだ。


「今回ご紹介できる依頼はこれですね」


 彼らが見てみれば、卵の運搬依頼であった。それもただの卵の運搬では無い。


 ディノコッコと呼ばれる、貴族がこぞって品種改良をする、鳥竜と呼ばれるモンスターの卵の運搬だ。


 東の野原に生息する個体の巣から卵を盗み、このアルカのダンジョンの近隣の村に留めてある荷車までの護衛までが依頼内容だった。


「わかりました。早速取りかかります」


 鬼一たちはディノコッコの巣があると思われる場所に向かった。

 

「いやぁ、いねぇなぁ」


「場所はここで合っているはずなんだけどね」


 朝早くから出たと言うのに、野生のディノコッコの巣は全くと言っていいほど見つからなかった。


「あ、あれは」


 鬼一が何かを見つけたらしく、それに近づいて行く。


 野原に一箇所にぐちゃぐちゃになった、ディノコッコの巣と思わしき物があった。 


「なんでこんな事になってるんだ?」


「わからないけど。何か大きな物に踏みつぶされたみたいな感じに見えるよ」


 まじまじと巣の残骸を調べてみると卵のかけらが辺りに散らばっていた。


 なるほど、上から強い衝撃と共に何かが踏んづけたようにも見える。


 暫く鬼一たちは周囲を捜索した。


 草原の草が生えていないぬかるみに、何かの足跡を彼らは見つけた。


「これはディノコッコの足跡か?」


「ディノコッコの足跡にしては、なんというか違うような」


 ディノコッコの足跡は通常であれば三本指の足跡であるが、鬼一たちが見つけた足跡は四本指の足跡だ。


 鬼一たちはディノコッコが野原から姿を消している事、巣が破壊されていること、ディノコッコの物とは違う足跡を発見した事から、ある一つの結論に行き着いた。


 この野原のディノコッコたちは何らかの魔物に襲撃されたことで、どこかへ巣を移動してしまった、という結論である。


「そう考えると、これ以上のここで時間を浪費したらダメなんじゃないか?」


「ここからもう少し行った所に平原があるらしいからそこに目当ての物はあるんじゃねーか?」 


 坂岡が地図を見ながらそう言った。


 その時だった。


 どこからとも無く金切り声が響いてきた。


「なんだ?この声は」


「魔物の類か?」 


 声は空から響いてくるようだ。


 鬼一たちが空を見上げると、そこには三匹のワイバーンが上空を旋回していた。


 全身を覆う刺々しい鱗と幼子くらいは容易に掴んでいきそうながっしりした足と大きな体格。


 一対の広げた翼には皮膜がコウモリのように張っている。


「ワイバーンか。あいつらがここら一帯のディノコッコの巣を荒らし回っていたのか」


 ワイバーンは獰猛な性格をしており、狩場を転々としてはその場の他の生き物を食い尽くし、次の場所へ向かうという厄介な害虫ならぬ、害竜と呼ばれていた。


 突然ワイバーンたちが急降下を始め、鬼一たちへと攻撃を仕掛けてくる。


 ワイバーンは口やら脚やらで攻撃を何度も仕掛けてくる。


 なんとか攻撃を躱す一行だったが、避けてばかりではらちが明かない。


「この際、正当防衛だ!あいつらを駆除してやる!」


 鬼一の声を皮切りに、彼らは降下してくるワイバーンを迎え撃つことにした。


 本来であれば、ギルドからの依頼でワイバーンを駆除する形で依頼を達成するべきなのだが、襲われている以上、正当防衛が成り立つ。


 そのため、ギルドからの依頼を受けてから討伐しないと賞金は発生しないという事になってしまうのだ。

 所謂タダ働きも同然だが、彼らにとってはなんてことも無かった。


 能力を駆使して次々とワイバーンを迎撃する鬼一たち。


 早々に事が済んだのは、裏ダンジョンの魔物に比べれば遥かに弱いかったからだ。


「あんまり大したことは無かったね」


「そうだな。後でギルドには報告しておくべきか」


 ワイバーンの死骸を山積みにし、三人が話し合う。


 魔物、モンスターの屍は鎧などの材料になったりする事もあるということを、ギルドから説明された経緯もあり、裏ダンジョンの時とは異なり燃やす事は無い。


 時間は既に昼前になっていた。


「今からでもすぐ近くの平原を目指すべきだろう」

 と鬼一が言う。



 平原の中で、ディノコッコのメスが卵を卵を温めている。


 元の世界の恐竜と鳥類を掛け合わせた、太った始祖鳥のような身体と地味めな体色をしている。

 

「アレがお目当ての物か」


 背長程のの高さもある草むらの中で三人は相談をしていた。


「どうする?卵だけを持ってこいとの話だったけど」


「俺がディノコッコの気を引こう。その間に坂岡と伊野は卵の確保をしてくれ」


「わかったよ」


 鬼一が草むらから早速飛び出し、ディノコッコに近づいて行く。 


 突然現れた外敵に反応し、立ち上がる。


「コッコケーッ」


 翼を広げ威嚇をするディノコッコ、卵を守るためという為か気性が普段よりも荒くなっている。 


(さて、どうやって卵から引き離すか)


 鬼一は手を横へ広げ、目をディノコッコに合わせ、叫ぶ。


「キェェェエェェェ!」


(しかし、これで、本当に気を引けるのか?)


 傍から見れば情けない格好だが、本人としては真面目にやっている。


 この方法は依頼書にも記されていた正式なやり方らしいが。


(なりふり構ってなれん!やってやるぜ!)


 鬼一が思い切って前進するとそれに反応するかのように、ディノコッコも巣から立ち上がり、鬼一とにらみ合う。


 両者の間に緊張が立ち込める。


「コケーッ」


 しびれを切らしたのかディノコッコが運良く鬼一に踏み込み、蹴りを繰り出してくる。


「おおっと」


 的確に腹を狙ってくる脚を避ける鬼一、卵との距離を離し、相手を挑発し自分にだけ襲ってくるようにする。


「鬼一君の犠牲、無駄にしないからね」


「卵はきっちり届けるんで、よろしく」


 坂岡が新生児程の大きさの卵を抱え、伊野がサポートする形で卵は持ち去られていった。


 その間、鬼一はディノコッコからの猛攻に対処し続けるハメになったのは言うまでもない。


「ディノコッコの、あの依頼、二度とやるもんか·····」


 鬼一が帰路についたのは午後の夕暮れ。


 小麦畑の横を歩いてゆく、それにすれ違うように子どもが三人かけていった。


 呑気なもんだなぁと鬼一が思っているとふいに声をかけられた。


「息災のようだな」 


 彼にはその声に聞き覚えがあった。


「ザイン隊長?!」


 水車小屋のイスに腰をかけこちらを見ている人影が。


 鬼一もかつて世話になっていた人物、ザインだ。


「まだその名で呼んでくれるか」


「·······」


 マグヌスマルクトに転移魔術で飛ばされる寸前、止まった時の中でザイン隊長の顔を覚えていた。


 緊張にこわばったその顔を。


 鬼一にも状況の判断はついていた。


 魔王の幹部が直々に殺しに来たのだ、ザイン隊長も気が気ではなかったのだろう。


「他の二人は生きているか?」


「ええ、丁度ギルドの方で依頼をこなした金を受け取りに行っていますよ」


「それなによりだ」


 鬼一がザインの隣に座る。


「ゴーゴリから話は聞いている。その後の状況もな。冒険者と言っても金も命も大事だ」


「隊長は天王司の連中を引いていていなくても良いんですか?」


「ああ、あいつらももう俺の助けなしにダンジョンのクエストをできるだろう。俺はおはらい箱と言う訳さ」 


 皮肉気味にザインが笑う。


「今後はどうしていくんですか?」


「今後か?ああ、そうだな、休暇でも取って娘にでも会いに行きたいな」


「娘さん、いらっしゃったんですね」


「丁度難しい時期でな。お前らと同じ年頃のな」


 ザインがその髭を擦りながら言う。


「やれ臭いだの、部屋に入ってくるなだの。言葉がキツイったらありゃしねぇぜ」


 片手に持っていた、安っぽい葡萄酒を煽るザイン。


 そう言えばお酒が好きなのかな、と思う鬼一。

  

「····ともかく元気なら何よりだ。ダンジョンで守りきれなくて済まなかったな」


 鬼一としても生贄にされた、あの光景は、絶望感は今でも時々夢に見る。  


 ショックではなかったと言えば嘘になるが。


 クラスでの軋轢を利用された事はどこかもどかしさを感じていた。


「自分らとしてもキツイ思いはしましたよ。今ごろ能力が無かったらとっくに死体でしたよ」


 少しの苛立ちを抑えつつ、そう返す。


「最期に一つ、言い残したい事がある」


「なんでしょうか?」


「あまりくよくよ生きるな、すっぱりと後悔なく、これでよかったと思える人生を生きるんだ。それだけだ」


「なかなか難しいですね。簡単なようで」


「それじゃあ、これで本当にお別れだ。後の二人にもよろしくな」


「隊長······」


 裏ダンジョンで鬼一たちが生き残れたのは一重にザインから課された鍛錬や知識によるものだ。


 そうでなかったら今頃は日の光すら浴びれなかったかもしれないという確信が鬼一にはあった。


 去っていくザインの背中に、ありったけの声で鬼一は叫ぶ。 


「ザイン隊長!今まで本当にありがとうございました!隊長のお陰で今の自分たちがいます!」


 それが聞こえたのか、ザインは鬼一の方へ振り返らずに葡萄酒の入った酒瓶を左右に降る。


 夕暮れの中、鬼一はギルドへの道を急いで行った。

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