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神の右腕 リブート  作者: 伽藍堂
16/21

16話 朝焼け

「ちょっと失礼するぜ。ヴィーテ628」


「どうかしましたか、鬼一」


 一室の机に突っ伏したままの姿勢で彼女はぶっきらぼうに返事を返す。


 今まで見られたホムンクルス特有の無機質な返事とは異なる反応だ。


 その様はまるで感情にとらわれているようだ。


「何か、怯えているようでさ。一体、何を恐れてるのか聞きたくてな」


 そのままの状態でヴィーテ628が震えた声で話し始める。


「実は、先生が亡くなってから、自分の今後について考えてみたんです。私の任務はあなたの経過観察をすること。ですが、私のマスターが完全にいなくなってし待った事、それが不安なんです」


 ホムンクルスとマスターの関係性、それはホムンクルスの存在意義に関わってくる問題なのだ。


 ホムンクルス、人造人間とは基本的に人の形でありながら人ではないの定義されている。


 マスターと呼ばれる仕える主を定める事によって始めて、人造人間と言うモノとして存在が許さ入れるのだ。


 それほど、マスターと呼ばれる存在はホムンクルスにとって重大な物である。


 鬼一もまたこの世界に来てからホムンクルスの権利などについて学ぶ機会があった為、ヴィーテ628の不安について把握する事ができた。


 先生と呼ばれる、アルカ=ディフカの死亡を確認してから数日、彼女はその事を言えずにここまで来てしまったのだ。


(ダンジョン攻略と坂岡たちとの行動にかまけて、ヴィーテ628のメンタル管理について考えていなかったな。最初こそ強制観察っていうことで反発はあったが、こいつなりに仕事を全うしたいだけというのもここ数日でわかった) 


「そうか、マスターがいれば。お前の不安は晴れるんだな?」


「は、はい。そうです」


 いつになく弱気な彼女を見やり、鬼一は意を決したかのように言う。


「じゃあ、俺がマスターでも構わないな?」


「え、それはどういうことですか?」


「俺がお前のマスターになるってことさ」


 さらりとそう言ってのける鬼一に対して困惑したようにヴィーテ628が言う。


「観察対象が私のマスターに?現代未聞です、あり得ないことです!この際贅沢は言えませんが·····」


「まぁ前例が無いだけでそう言う事もありなんじゃないか?」


「·····暫く、考えさせて下さい」


「ああ、明日になる前に決めておいてくれ。俺はいつでも待っているからな」


 そう告げて、ヴィーテ628の部屋から退出する鬼一。


「先生、私はどうしたら、いいんでしょうか?」


 その問いかけは、誰にも聞かれることなく、空気に消えていった。



 ダンジョンから地上へ帰還する、その日が来た。


 坂岡や伊野は既に準備万端と言った感じで研究所前で待っている。


 鬼一は無くした装備などは、人体実験の被害者たちの物をリサイクルして革のリュックなどの装備一式を整えていた。


「ヴィーテ628、決断はできたか?」


 彼女の自室の前で準備を整えた鬼一が語りかける。


 扉が、開かれた。


「ええ、鬼一顕二、決断しました。あなたをマスターと認めましょう」


 いつもの固い面持ちで、ヴィーテ628は言った。


「それでは早速、マスター。契約をしましょう」


 ホムンクルスは自身のマスターを自身に認知する際に、契約をすることで自身に登録をするのだ。


「あぁ、確か血が必要だったな」


 用意されたナイフで軽く左手の甲を切り、血の雫を皿に滴らせる。


「我が魔力を以て、汝。鬼一顕二をマスターと認め、

その権限を譲渡するものとします」


 紫の魔法陣がヴィーテ628の頭上に浮かび上がる。 

 

 魔法陣の色はマスターの魔力濃度に合わせて変化する。


 そして、ヴィーテ628が鬼一の血を飲む。


「では鬼一顕二改めマスター。今後ともよろしくお願いいたします」


「あぁ、よろしくな!」 


 かくして、ヴィーテ628が仲間に加わった。


「重ね重ねで申し訳ないですがマスター。名前の変更を求めます」


 最期にホムンクルスのマスター任命の儀式は、既に決められている名前を変更する必要があった。


「名前、か。実は既に決めていたんだ。ロニパと言う名前で。628から名前をとってな」


「そうですか。ではこれより、ヴィーテ628改めて、ロニパと言う名前にさせていただきます」


「じゃあ、このダンジョンから出ようか」


「わかりました。マスター」

  


 荷物を持った四人組が階段を下りて百階へ到達する。


 まだそこにはバシュムの巨大な遺骸が湿地に横たわっていた。


 状態から見て腐敗が始まっているようだが、僅かに腐臭が漂っている。


 鼻を押さえながら坂岡が鬼一に聞く。


「このままにしておくのは流石にダメだよな」


 一瞬考えた後に鬼一が言う。


「そう言えば伝承でも倒されたバシュムは燃やされていたな。伝承通りにして燃やして問題はないだろう。悪いが伊野、バシュムの身体を燃やしてくれるか?」


「任せて、鬼一君。天命に代わりて我が命ずる、彼の亡骸を燃やし、邪気を浄化したまえ。アグニバーン」


 伊野が魔術を唱え終わるとバシュムの亡骸から物凄い勢いで火の手が上がる。


 この勢いならすぐにでも骨になるだろう。


「なんだあれは」


 猛火に包まれたバシュムの骸の尻尾に当たる部分にキラリと光る物があった。


 それは剣だ。


 一振りの西洋風の直剣が骨の中から出ている。


「ヤマタノオロチじゃあるまいし、なんで尻尾から剣が出てくるんだよ」


「神話に出てくる怪物なんだから、そう言う事もあるんじゃないの?」


 伊野が呑気にそんな事を言う。


「まぁ、言われてみればそうか。って納得はできないんですけどね。取り敢えず倒した俺が所有権を持つってことでいいか?」


「敵が落としたアイテムは基本的に倒した人間が所有者になる、っていう法律も定められているし。俺は特に意見はないぜ」


「僕も坂岡くんと同意見かな」


 鬼一は湿地に生えている木の枝を拾い、炎の中からその剣を拾い上げる。


 剣をよく見てみると柄にはバシュムの顔の装飾が施されている。


 全体的に薄緑色がかった貴金属と思わしきそれには、鱗を模した鞘が付属していた。


 刀身を見ようと鞘から少し抜いてみると薄紫の刀身が顔を出した。


「後で鍛冶師に鑑定してもらおうかな」


 カシャンと軽い音を立てて刀剣を戻すと、紐をくくりつけ、背中に背負う。


 名前のわからない剣だが、特別な曰くでもありそうな剣だな、そう鬼一は思っていた。


 バシュムの亡骸を燃やした後、湿地の霧が少し晴れた場所に、裏ダンジョンから出るためのゲートと思わしき場所についた。


 門は少し石の階段を登った所に、アーチ状の石柱がかかっており、その間にシャボン玉の膜ような物が揺らいでいる。


 これは転送魔術が常時張られているため、そう見えるのだ。


 これをくぐれば晴れて裏ダンジョンから帰還を果たせる。


 しかし、ここに来て最期に問題がでてきた。


「ここまで強制的に下へ転移させられた事もある。もしかしてしてこの転送門も、もう一癖あるんじゃないか?」


 と鬼一が考える。


「まぁそのまさかだよな俺は有り得るんじゃないかと思っている、伊野はどうだ?」


「いや、ここまで来て最期にトラップが仕掛けられているってものおかしい気もする」


 反対の意見を伊野が言う。


 するとヴィーテ628改めロニパが提言する。


「マスター、私には魔術を解析する力があります。お時間さえいただければ確認できますが、よろしいでしょうか」


「ああ、それじゃあ、頼むよ」


 少ししてから解析が終わったのかロニパが報告してくる。


「魔術の解析が終わりました。いきなり変なところへ飛ばされると言うこともなさそうです」


「本当か。他に何か怪しい点はあったか?」


「いいえありませんでした。罠の痕跡も無さそうです」


「わかった。ありがとうロニパ。じゃあ行くか」


 鬼一の一声で一行は門をくぐっていく。


 通り始めると転送魔術が鬼一たちを目的地へと送り始めた。

 

「ここは」


 気がつくと送り鬼一たちはアルカのダンジョン、その入口に立っていた。


「いきなり人が現れたぞ!!」


「どうなっているんだ?今回朝早くに帰ってくる冒険者はいなかったはずだぞ!」


 鬼一たちがいきなり現れたことに衛兵が気づき口々に話し合いながら取り囲んできた。


「すみません、自分たちは国に所属しているものでして」


 鬼一は首からぶら下げていた証を衛兵たちに差し出す。


 金色の剣と盾があしらわれたそのペンダントは、王国直属のものであることを示す証しだ。


「帝国直属の者がなぜ。勇者様御一行は今は25階層で演習中のはずですが」


「お話は聞かせていただきました。衛兵長殿、この者たちの処遇、私が預かります」


 衛兵長と呼ばれた男が声の方を振り向く。


「こっこれは」


 その人物の手にも鬼一たちと同じ立場を示す金色のペンダントがあった。


「今の私は隠密の身、これ以上の会話は御無用です」


 ローブにフードを被った仮面で顔を隠した人物が朝焼けの空を背景に歩いてきていた。


「訳あって今のあなた方と行動を共にする者です。平にご容赦下さい」


 深々とお辞儀をされたので、おずおずとお辞儀を返す四人。


「それでは、ご案内いたしますのでこちらへどうぞ」


 鬼一たちについてくるようにと告げ、やって来たるはこのアルカのダンジョン近くのギルドだった。


 この世界には冒険者と呼ばれるモンスターを討伐からなんでも引き受ける働き手がいる。


 その仕事を斡旋したり、手続きを行うのがギルドだ。


 仮面の人物はギルドの空いている一部屋へ鬼一たちを案内するとこう言った。


「まずはご帰還、おめでとうございます。あの状態から生還されました事、心よりご称賛を送らせていただきます」


「········」


 仮面の者に賛辞を送られていた鬼一たちは気が気ではなかった。


 半分生贄に近い形で敵に差し出され、ほぼ見殺しに近い形で見捨てられて、なお生還した。


 結果としてそうなっただけだ。


 だが、心象としては決して良いとは言えなかった。


 頭で理解はしているが心では解せない、そんな心のわだかまりが彼らの心中に渦巻いていた。


 そんな中、想像だにしない言葉が仮面の者から発せられた。 


「あなた方、三名の勇者様におきましては、我らの国より死亡した扱いをさせていただきます」

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 ブックマークなどいただけると本当に嬉しいです。 


 何卒よろしくお願いいたします。

 

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