邂逅編 その3
一方、プロデンオによれば、自身の明るい未来の糧になるためにやってきたことになっている魔族であるが、その目的は人間世界の侵略などではなかった。
では、彼らは何しに来たのかといえば、ズバリ婿探し。
もう少し説明をすれば、魔族の九十八代目の長である魔王オリアンヌ(実年齢不詳。それを口外したら死刑になるので誰も言わないだけという噂あり。一応、某世界の用語を使用すれば見た目上アラサー美女)の婿を探しに人間界にやってきたのである。
だが、すでに二十日以上探しているがオリアンヌが気に入った男は見つからない。
もちろん物珍しさもあり当初は同行者たちも長く滞在できると喜んでいたのだが、さすがに飽きてきた。
「お嬢。お嬢の理想の男が人間界にいるとは思えぬ。さっさと戻って魔族界で改めて探すことにしようではないか」
「そうそう。今度は自薦させればいい。そうすればすぐに見つかる」
「いるわけがないでしょうが。魔族の国には力自慢は山ほどいます。もちろん若い男もいます。ですが、それだけではありませんか」
同行する男たちの提案にきっぱりと拒絶する女性。
彼女こそオリアンヌである。
シャルロットと違い魅力的な曲線を描くフォルムを誇る美人である。
そのオリアンヌは男たちを蔑むような眼で見ながら言葉を続ける。
「その代表がおまえたちです。引き算もまともにできないでよく魔族軍の幹部などやっていられますね」
「いやいや。計算は文官の仕事。我らは剣を振るう武官。計算ができる武官など恥にはなっても誇りにはなりません」
「そのとおり。そこまで引き算が出来る者がいいのなら、いっそのこと、文官から婿を探すというはどうですか?将来の宰相間違いなしという若手有望株のアルフガノスなんてどうですか?女どもは奴が通るたびにキャアキャアやっていますよ」
最年長で魔族軍総司令官のガスパリスに続き、同行者で一番の若手デモクリトスがそう提案すると、オリアンヌはすぐさま首を振る。
「文官はペンより重い物を持ったことがないなどと自慢する輩。剣を使えないどころか剣もまともに持てない。つまり、私の遊び相手にならないということです。それに、魔族を統べる者があのような顔だけが取り柄のようなひ弱な者の子を成したら祖霊たちに申しわけが立ちません。頭がいいだけではなく、力を強くなければならないのです。わかりましたか」
誇らしげに自身の選定基準を語るオリアンヌに男たちは大きく頷く。
いや。
大きくため息をつく。
「ですが、お嬢。それは人間界も同じではないだろうか?これだけ回ってもいないのだからもういないと思ったほうがいいのでは?」
「いいえ」
「人間界には勇者という者がいるらしい」
「強く、頭がよく清く正しくて優しい。そして、顔がよく、そして、なにより若い。勇者になれば常に十五歳から十九歳の間を循環し、絶対に二十歳は超えない理が人間世界にはあるとのこと」
「常に若い。ここが重要。おまえたちのような昔は若かったが今はおじさんになった者たちとは雲泥の差」
「……おじさん?我々より年上のお嬢にだけは言われたくは……」
「無礼なことを言ったお仕置き」
「ですが、少しだけやりすぎました」
以前聞いた人間界の冒険譚の主人公が同一人物で、しかも常に二十歳以下でいられる魔法を使っていると微妙に誤解しているオリアンヌの言葉につい口を滑らし本当のことを口にしてしまった同行者のひとりアベンエズラは言い終わらぬ前にオリアンヌからお仕置きの電撃を食らい口から泡を吹く。
ただし、オリアンヌはすぐに反省の言葉を口にし、治癒魔法で回復させる。
仕切り直しをするようにわざとらしい咳払いをしたオリアンヌはあらぬ方向を指さす。
「と、とにかくその勇者とやらを見つけるまでは絶対に帰りません」




