邂逅編 その1
ここはいわゆる異世界。
もちろんその世界に住む者にとっては異世界などではなく、この世界となるのだが。
そして、異世界の約束であるその舞台は別の世界の中世ヨーロッパに近い。
さらに、これもお約束であるが、この世界は魔法が使える。
それからもうひとつ。
この世界には言語を扱う生き物として人間以外に魔族という種族がいる。
ただし、この世界の魔族は、角が生えて肌が緑、腕が四本、身体のサイズは人間の三倍ある、などということはなく、外見上は人間とほぼ同じである。
外見上の唯一の違いは魔族の目は赤いことくらいだろうか。
それからこれは外見に多少影響するのだが、成長が遅いという枷はあるものの、その分魔族の寿命は人間の五倍以上ある。
つまり、見た目が二十歳前くらいに見える魔族が実は百歳を超えているということが普通にあるのである。
そして、この世界の魔族と人間の最大の違い。
それはすべての魔族が魔法を使えるのに対し、人間はある条件をクリアし、さらに偶然という当たりくじを引いた者だけがそれを使えるというものである。
さて、そのような人間と魔族が住むこの世界であるが、両者は接触することは殆どない。
なにしろ、人間は西の大陸、魔族は東の大陸に住み、その大陸内ですべてが過不足なく完結しているうえ、両大陸の間にはタジアートとテンペスタという名の大きな荒海があって両者の交流を遮断しているのだから。
当然稀に起きる人間と魔族の接触は魔族が魔法を使って人間側の大陸にやってきたことによるものとなる。
そして、この物語も前例どおり、ある目的のために魔族が人間の世界に姿を現したところから始まる。




