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始まりの知らせ

 幼い頃、僕たちは戦争について様々な教育を受けて育ってきた。「戦争は絶対にいけないこと、繰り返してはいけないこと。」そうやって僕に教える大人達。僕らもそれが正しいと思い、大人になっても戦争なんて絶対にしないと心に誓って生きて来た。そして、全国民がそうだと思い込んでいた。けれども、教えたのも壊したのも、大人であり国であった。

 終戦から100年が経過しそうなとある日、突然国からの知らせが入った。その内容は、「ベルドランドとの戦争を始める。」という内容だった。ベルドランドはシーフリックから見るとかなり遠く、大きな国だ。国際情勢に与える影響も大きく、物資も多い。僕らのような国が勝てるとは、到底思えなかった。何よりも、戦争が始まったという事実が受け止められなかった。戦争は絶対にしてはいけないものではなかったのか。その言葉を他の人に伝えることも、インターネットに書き込むことも出来なかった。そんな言葉を口にするだけで、自分の命が消えることなんてわかっていたからだ。

 国は戦争を進める動きへと変わった。新聞やテレビで報じられるのは全て自国が勝っているという内容のみ。ベルドランドの戦闘機を墜落させる映像や、ベルドランドの街並みを火の海にしているような映像だけが、毎日テレビで流れ続けた。街に出れば戦争にかんするのぼりがそこら中に立てられ、この国は戦争中心に回るようになったんだ、そう実感した。そんな毎日でも、僕たちはまだ、今までと変わらない平和な生活を送ることが出来た。毎日学校に行って、友達と遊んで、そんな毎日。この毎日が崩れない間に、戦争が終わればいいな。そんなことを思って毎日ニュースを眺めた。ただ1ついつもと違うことを挙げるのであれば、父親が居ない事。国軍に所属する父は、戦争が始まると同時に戦に向かった。寂しいなんて、そんなことは言えなかった。シーフリック国民である以上、戦争に向かうということは祝うべきことであったからだ。

「いってらっしゃい、元気でね。」

不安そうな声色でそう告げる母の後ろで、僕はただ立ち尽くすことしかできなかった。そんな僕に父さんは、「そんなに心配することないさ。すぐに終わるからな。」と告げ、優しく頭を撫でた。何故父さんにとって戦争に向かうということがそんなに前向きなのか、僕には到底理解できなかった。なぜ殺し合いに行きたがるのだ?誰も幸せにならないというのに。それでも、「戦争万歳」と言い続けるこの世の中に、僕は不信感を抱いていくのみだった。

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