4話:町
イーサと別れてからミスティの様子がおかしい。
ギラギラした目で次々と私に服を着せたり、脱がせたりしてくる。
「かわいい!!イイっ!!これもっ」あとはなにかブツブツ言っていて、よく聞き取れない……。謎に高揚しているミスティの気を浴びると少しぐったりした。ナニコレ。
「さて、そろそろ兄さんと合流しましょう。リンが可愛いくて驚くわよ」
言いながら手をつないで歩き、薬屋が見えてきたところでミスティは私の手をほどいて叫びながら駆け出していった。
「兄さんっ!」
様子がおかしい。
「やめて!兄さんを離して!!」ミスティが二人の間に割って入ると、男の人が「ミスティ!」と言って今度はミスティの方に覆いかぶさってきた。
遅れて追いついた私は男の人の足にしがみついた「ミスティを放して!放して!!」
男の人は動きを止めて私を見てミスティを見る。
「結婚して子供が? 可愛い…… かわいいなぁ……」
突然泣きながら私を高く掲げてくるくる回った。その後は少し記憶が無い。
気づいたら良い匂いで、食事が目の前に並んでいた。
「気が付いたか?ごめんな」と言って男の人に頭をワシワシされた。
改めて感じる気は悪いものでは無かった。とりあえず落ち着こうとして目の前にあるお水を飲んだ。
男の人はサニーというらしい、二人の知り合いみたいだ。
三人でなにか話しをしているが、そんなことよりこのお水だ!シュワシュワしてる!冷たい!甘くて美味しいナニコレ!!
「二人とも元気そうで良かった二年位前に俺も町を出たんだ。二人を探していたんだけど、思ったより早く会えて良かった。こ・・・子供まで」
とまた泣き出した。
「可愛いでしょ~」
ミスティは先ほど行った洋服屋の興奮した様子に戻り、あれこれ語りだしたが、イーサが途中で遮った。
「この子はミスティの子供じゃないが、訳あって家族だ」
「当たり前じゃない。町を出て3年でこの子の大きさだとおかしいじゃない」
「そうなのか!でもとても可愛い子だ」
サニーは急にぱぁぁっと笑って、みんなも笑いながらご飯を食べた。
スープも美味しかったけど、シュワシュワしたお水をもう一杯頼んでもらった。
美味しい……。
「俺、しばらくこの町にいるから困ったことがあったら訪ねてくれ。また一緒にご飯を食べよう」
サニーはそう言ってその日は分かれた。
「良かったのか?もっと話さなくて……」
「大丈夫よ兄さん。私とサニーはそんな関係ではないもの、面倒ごとに巻き込まなくて良かったのよ」
「そうか……」
少し暗くなった帰り道3人で静かに歩いた。
服も靴も窮屈で、フワフワしたりゴツゴツして纏わりつく変な感じがするので、帰ったらすぐ服を脱ぎたかったけど、ミスティとイーサが可愛いと言ってくれるとなんだか良いもののような気がしてきた。
人間の姿の時は服を着るように言われたので、その日から寝る時以外は服を着る生活を始めた。
以降は毎日AM6:00更新予定です。
カクヨム版は完結済みです。
https://kakuyomu.jp/works/16816700426590445828/episodes/16816700426593646063