『スキル』と『カースト』
丁度チャイムが鳴る前に席に着くと隣の女子に話しかけられる。
「おはよう。纏」
「おはよう、波留」
已上 波留。
入学式で話しかけられてから「友達」になった最初の人間。
「今日も遅刻ギリギリだったね」
「うん、ギリッギリ!」
というのは実は嘘であり、バスから降りた後間に合わないと踏んだ私は少し「走った」。
別にスキルは使っていないが特殊訓練で鍛えられた跳躍は一般人とは比較にならず、余裕で学校の敷地を跨ぐことができた。
「そいや今日3、4限「スキル訓練」でしょ。うぅ~、嫌だー!」
スキル訓練はその名の通りスキルを鍛えるための特別授業。
この授業の後は皆疲労するから好き嫌いがハッキリと分かれる。
Cランク以上の人間は得意げになるがそれ以下のランクの人間は卑屈となりあまり好まない。
波留はCランクで応用性のあるスキル持だがその分繊細さと集中力が必要になるため本人は余り好んでいない。
私は適当にCランクの「変形」と偽っているが実際は複数のスキル持ちだ。
この「変形」はSランクスキル「千変万華」の派生であり能力は千分の一にも満たない。
「纏のスキルが良いよ~」
「別にこのぐらい大したことないよ」
その言葉に一部のクラスメイトが不躾な視線を向ける。
Cランク以下のスキル保持者が集まるグループだ。
彼らはクラスでよく迫害を受けている。
Cランクは社会的に良い評価が与えられ、当たりの部類と言える。
Ⅾランクは平凡。
Eランクは下。
Fランクに至っては人権が無い。
これは実体験だから十分に分かる。
それでも、私はSランクスキルを発現させて良いことなど一つもなかった。
唯一あったといえるのは繊晦との出会いだけ。
自分がいかにぬるま湯に浸っているのかも知らないで、他人を恨む暇があるのだろうか。
視線を向けるとどうせ何も言えず逸らすか、それでもなお睨みつけるしかできない弱者に割く思考など勿体ない。
パッと波留の方へ向き直り今日の課題についての話を進める。
先生が教室に入ると朝礼が始まり、読書の時間だ。
最近は「本」というものにも興味を示し始め、「小説」という文学は未知の世界である。