『執着』と『同情』の履き違い
実験所内の娯楽は極めて少なく、決まった時間に起床と消灯、点呼が行われ私達は徹底的に管理された。
結局何期生もずっと「廃棄」と「入荷」を繰り返し、一期生である私達が十二歳の誕生日を迎える時、残っていたのはたったの十七人。
一期生十二名。
二期生三名。
三期生一名。
四期生0名。
五期生一名。
四期生と五期生に至っては私達と同じ水準の選抜なのでまだ「廃棄」されたわけではないが生き残ったとしても使い道は捨て駒だろう。
この十七名は一つの棟で共同生活を強制されている。
中には頭のネジがイカれた奴もいるのだから私的な交流は極めて少ない。
私達にはランキングがあり、最下位は当然の事、罰を受ける。
No.074は私がペアで守っていたのだから個人となると誰よりも評価は低い。
でも「仕置き」はあまりに厳しいものでとてもNo.074が耐えられるものではないから、二期生の内の一人を人為的に最下位に落とし続けた。
もちろん他の№はそれに勘づいているが特に手出しは無い。
そんなことでランキング一位の私と敵対するのは愚行だと弁えているからだ。
その最下位にし続けたNo.552は誰よりも心が弱そうだったから、すぐに壊れるかと思ったけど思いの他しぶとかった。
日に日に私への憎悪が増して、その対象がNo.074に向かっていることは分かったしこれ以上野放しにしておくわけにもいかなかったから、半年も経たない内に演習中の不慮の事故ということで殺した。
此処での同情は死を表す。
甘さは殺意となって返ってくる。
下手な友情は裏切りとなる。
私がNo.074を守れたのは私の能力が異次元だったことと、私がNo.074に抱いている感情を『友情』でも『同情』でもはき違えることなく、【執着】と認識できていたからだ。
それでなければNo.074はとっくの内に死んでいた。
私のお気に入りというだけで生き残っているNo.074を他のNo.は気に入っていない。
今はまだ私の保護下にいるが、いつか必ず牙を持つNo.が現れるだろう。
流石の私もNo.全員が手を組み襲い掛かられたら無傷で守り切ることは難しい。
だがお互いの相性もあるのか手を組むという発想すらない奴の集団なため万が一をとってもあり得ないだろう。