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No.000とNo.074

 国の闇ともいえる「実験所」に捨てられたのは私が四歳のとき。


 母は父に捨てられ、その不幸を全て私に押し付けた。


 殴って、蹴って、刃物を振り回して、ぶって、絞めて、お風呂の水に沈められて、思い返せば碌な記憶がない。


 それでも、それでも私は馬鹿みたいに信じて…。


 結局スキル暴走で全て壊してしまった。


 その日は母がいつにも増して酔っぱらっていて、息を殺していたのに突然狂ったように首を絞めるから、気付いたら「実験所」にいた。


 包帯でぐるぐる巻きにされていた私を、「No.074」が起こしてくれて記憶をなくした私を甲斐甲斐しくお世話してくれた。


 「No.074」は優しかった。優し過ぎた。


 その優しさは、この地獄には向かなかった。


 実験所で行われる実験という名の戦闘マシン収量所で行われる訓練は、人権を一切無視した非人道的な物であり、それでいて酷く効率的だった。


 部屋の割り振りで私はいつも「No.074」とペアを組んでいたけど、訓練で他のNo.とも会話をする機会があれば情報を収集していた。


 手に入れた情報と言えば、ここに集まった全員が元Fランクスキル保持者であり、五歳未満の子供であること。


 能力のない者は「廃棄」され、「育成」が終わり「出荷」されれば国同士の媒介物として一生を国に縛られるということ。


 ときにはNo.同士での殺し合いを強要され、生き残っても光などない。


 No.074のスキルは実験所の中でも突出していたけど、本人にスキルを扱う素養がなかったのか、元々の性格のせいか、人間を殺すことだけはできなかったから、全て私が受け持った。


 例え命令違反だと独房に丸一週間ぶち込まれようと、死に際まで電流を浴びせられようと…。


 私には「おかえり」と言ってくれる人がいたから、私のために泣いてくれる人がいたから、私はまだ「人間」でいられた。


 訓練でボロボロになった私をNo.074はただ「ごめん」と繰り返し呟いで泣いていた。


 その涙が傷口に流れるたびに顔を顰めたものだ。


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