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三度の飯より妹が好き!  作者: フォース
第1章
3/128

3話 物語の始まりは

 夢を見た。

 

 それはまるで悪夢であった。真っ黒な服を着たおおよそ人間とは思えない”物体”に”人間”が襲われている。

 これは戦争なのだろうか?いや、そんな生易しいものではない。一方的な蹂躙だ。この”物体”は、何が目的で戦っているのだろうか?それとも目的を持たずに単に暴れているだけなのか。この時の俺には知る術がなかった。

 

 

 目が覚める。まるで何十年も寝ていたかのような深い眠りから目が覚める。

 

「うぅ……ここは?」

 

 重い瞼を開ける。眩しい。太陽の光が体の芯までしみこむ。重力に逆らって体を起こす。するとそこには見覚えのある景色が広がっていた。

 

「ここは……中庭か?」

 

 そう、ここは紛れもなく俺がいつも寝ている場所、中庭であった。俺は腕時計を見る。すると時刻は7時50分。

 

「やばい、授業が始まる」

 

 俺は反射的にそう思い、教室目掛けて走っていった。しかし、その途中で俺は一つの疑問が頭をよぎった。

 

「俺は確か、車にはねられたはずでは……」

 

 そう、9月3日の学校の帰り道、俺は明らかに車に轢かれた。あの時の痛みは忘れられないほどのものであった。しかし現在、俺の体はどうみても車に轢かれた後の体ではない。四肢と頭がちゃんと胴体に引っ付いている。

 

 何故?

 

 だが、なにも体に異常がなければそれに越したことはない。もしかしたら夢だったのかもしれない。とりあえず教室へ向かう。階段を上り切った後、俺は教室の扉の前に立つ。中からは話し声が聞こえてくる。気のせいかもしれないがいつもより少し落ち着いた雰囲気な気がする。

 

 扉を開ける。

 

 すると今日は珍しく視線がこちらに向かない。よく見ると、皆友達と真剣そうな顔をして話している。

 

 なんだ? 何かあったのか? と思い、千歳に声をかけようと思ったが他のクラスメイトと話している。しかもかなり暗い表情をしている。他のやつに話を聞こうと思ったが、残念なことに俺には千歳以外友達がいなかった。まさかこんな時にこれが痛手になるとは。仕方なく俺は自分の席に着く。こうして何も変わったことはなく、授業を受けるのであった。

 

 そして何事もなく午前中の授業が終わり、昼休みに。いつものごとく千歳を誘おうと思った矢先、千歳はいきなり走って教室から出ていってしまった。

 

「どうしたんだあいつ。今日なんかおかしいぞ」

 

 千歳が帰ってきたら今度こそ何があったのかを聞いてみよう。

 

 俺はいつものように売店に弁当を買いに行く。だが、売店の前まで来て俺は愕然とした。そう、弁当がすべて売り切れだったのだ。普段売り切れることなんて絶対にない。どうしちまったんだ今日は……。仕方なく俺は教室に戻ることにした。

 

 

 階段を上り、教室に向かっている途中、踊り場で女の子が向こうから全力で走ってくるのが見えた。このままでは確実に俺にぶつかる。そんな時、俺の頭の中では選択肢が浮かんでいた。

 

 ①女の子をガシッと胸で受け止める。

 

 ②華麗なサイドステップで女の子をよける。

 

 ③自分から女の子にぶつかりに行く。

 

 う~ん、①はイケメンにしか許されない行為だよな。②を選んだ場合俺の横をすり抜けた女の子は階段から落ちて、あの勢いではどうあがいても死んでしまう。③は変態行為かもしれないが消去法でここは③だな! 俺はそう確信した。

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお‼‼」

 

 俺は全力で女の子にぶつかりに行った!

 

 

 結果は自明だった。俺は体重が重いわけではないので、女の子を押し倒す形にはならず、逆に衝撃で吹っ飛んでしまった。女の子の方はというと、そこまで吹っ飛ばされたという様子はなく、ひたすら地面にうずくまって悶絶していた。痛みに悶えながら何でこんなことしてしまったのだろうと、俺はこの時深く後悔した。おかしかったのは千歳ではなく俺の方かもしれない。

 

 体を起こしてみると女の子が倒れているだけではなく、横に弁当が3つ散乱していた。

 

「すまん、大丈夫か?」

 

 俺も一応は男だ、女の子を傷つけたのだから謝っておく。じゃあ最初からぶつかりに行くなという話だが。俺は女の子に近づいていく。身長は155センチくらいか。美結より少し大きいくらいだ。

 

「すまない、急いでいた。怪我はないか?」

 

 急いでいたというのは全くの嘘であるが、場の雰囲気に合わせてつい口走ってしまった。すると女の子は不思議そうな顔をしてこう言った。

 

 

 

「え? あなたには私のことが見えているの?」

 

 

 

 俺には彼女が何を言っているのかわからなかった。



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